[第22回]一人ひとりの成長や可能性を信じた人材育成


2019.4.22

イチロー選手の現役引退会見は珠玉の言葉が散りばめられていた。50歳まで現役と言っていたが、有言不実行になってしまったとの件では、「その表現をしてこなかったら、ここまでできなかったかもしれない」と言い切る。自分の思いを言葉に表すところから扉が開かれ、日々努力することもできる。新年度を迎え、1日変わるだけで新鮮な思いに立てる。小生も、自分の思いを言葉に載せて、心新たに出発したい。

前回で小生の拙い講演の件を終え、今回は、お客様企業を訪問しての人材育成の語らいなどを通して、人の育成について少し考えてみたい。

人の育成に熱い人とは

弊社で全社員を対象に、CS(お客様満足度)向上をテーマにした「真実の瞬間」という教育講座を行った時、その教育を推進するため、各部門からファシリテーター(先導役)を推薦してもらったことがある。そのメンバーが一堂に会しての事前研修や実施後のふり返りの場は、とても活発に意見が飛び交い熱い時間となった。現場にも、人の育成に対して熱意を持った人がいることを教えてもらった。

果たして、自らのキャリアや成長も含めて、人の育成に熱い人とそうでない人との違いはどこから来るのだろうか?

「一人ひとりの成長や可能性を信じられるから」
「人はいくつになっても、成長できるということを信じられるから」
「自分が、先輩の影響を受けて、一皮むけた経験を実感できているから」
「研修の場で出会った講師に刺激を受け、そのことを心に留めているから」

人は、自身の経験値に照らし、物事を捉える傾向があるのではないだろうか。そう考えると、人間力講座も人材育成に熱い人を作る、良い刺激や出会いの場なのかも知れない。人間力講座の参加者に、課題図書として講師の著書を事前に読んで予習しておくよう呼びかけたことがある。一流の人に会うのに、初めましてでは申し訳ないし、もったいない。事前に著書を読んでいれば、お会いする前から関心も深まり、モチベーションもあがるし、お話も身近に感じることができ、刺激も大きい。

お客様企業の人事研修担当者を訪問したとき、話題は「人材育成意識の高い人やお互いから学べる集団や組織をどうすれば作れるのだろうか?」へ及んだ。

その時、人材育成とマネジメントに関する先輩の言葉がよみがえってきた。「組織長がプレイングマネージャーの場合、プレイング(専門力発揮)に軸足を置いていると部下の育成が疎かになってしまう傾向がある。特にプレイングで成果を出していた場合にはその傾向が顕著となる。本来であれば、立場が変わったので、その立場を弁えて、自身を変えていかねばならないはずだが、それができていないことになる。人は立場を弁えて、自身を変化させていかねばならない。それができないようでは失格だ」と先輩は手厳しかった。

人の育成に熱い人と話していて気づくことは、その視点の深さだ。
「より効果的で効率的な教育へ進化させたい」
「一人ひとりの理解度やスキルに合わせた学びを追求したい」
「受講者同士のコミュニケーションで学びを深めたい」
「学んだことを実践に結び付け、定着させたい」
「教育効果の測定結果を人材活用へ活かしたい」
などの悩みをお聞きするたびに、小生も熱くなってくる。

考える先に楽しさがある

これらの課題解決のためには一律一斉の教育ではなく、一人ひとりに必要な時に必要な教育をとの考え方が必要と考える。自分に必要な学びを自ら気づく、周りの人との話し合いの中から気づく、リーダーや先輩の生き方から学ぶなどの機会が必要だ。また、一人ひとりの持っている知識やスキルは違って当たり前だ。知らないことを知る、できないことができるようになるための教育機会こそ大切と考える。これまでの一方通行の教育では、その内容の10%しか身につかないとも言われている。学びにおけるコミュニケーションの大切さや「間違えたところを学ぶ」「間違えた原因がわかる」「知らなかったことに気づく」「知らなかったことを知る」などは学ぶことのわくわく感や喜びに通じる。

「知っていることを学ぶ」ことほど、退屈なことは無い。繰り返す良さももちろん否定するものではないが、学ぶ喜びからは程遠い。間違えた答えから、どう学びを広げ、深めるか、そこに学びの原点がありそうだ。考える先に“楽しさ”がある。

東芝デジタルソリューションズ株式会社
ICTソリューション事業部 HRMソリューション部
真野 広

※記事に掲載の、社名、部署名、役職名などは、2019年4月時点のものです。


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