[第5回]教育効果を高めるために
2017.11.20
最近、訪問した企業の人事部の方から「皆を集めて知識教育をやると、受講者から“わざわざ集めなくてもできるのでは”と不満の声が出てくるんです」と相談を受けた。知らないことがあると、いつでもどこでも調べられることに慣れている世代には、わざわざ教室に集められて知識やノウハウを教えてもらうことは退屈に感じるのかも知れない。ICTを活用すれば、いつでもどこでもを解決することはできそうだが、受講者が“意識”して受講できるかどうかが鍵である。
集合教育の良さとは?
受講者が一堂に会して教育を受ける良さはもちろんある。一つは受講者同士の刺激ではないだろうか。グループでのディスカッションやロールプレイを通して「ああ、そういう考え方もあるのか」「そういうやり方があるのか」と、常日頃の自分自身をふり返ることができる。
次に、講師からの刺激である。生の講師から受ける体験談は迫力があり、多くの気づきがある。
しかし、ここでも、受講者の“意識”の問題がでてくる。
私が研修講師を担当したときには、最初に必ず受講者へ問いかけることがある。「皆さんは今日の研修に参加するにあたって、上司と何か話をしましたか?上司から何か声をかけられましたか?」と。受講者からは「上司からしっかり勉強して来いと言われました」「帰ってから、どんなことを学んだのか課内会議等で報告して欲しい」「自分もこの研修を受けたことがある。きっと、気づくことがあるはずだ」等々、声をかけてもらって参加した人は居眠りできない状況であることが分かる。それは研修が終わった後のことを“意識”しているからだ。帰ってから、上司や課のメンバーへの報告が待っている。つまり、研修効果は研修参加前に決まる、ということだ。本人が意欲をもって参加しているのか、狙いを理解した上で、参加しているのかが重要なのだ。
その上で重要なこととは
その上で、研修受講後に迎える上司の関わりも大切だ。研修で新しいメソッドを聞いてきても、上司がそのメソッドを知らなければ会話もできない。「へー、そうか」で終わってしまう。その結果、受講してきた部下の熱き思いや新しいメソッドはお蔵入りとなる。私は、この点に着目し、部下が研修を受ける前に上司にはその研修の要旨やポイントを短時間で伝えることに取り組んだ。忙しい上司をそのために集めるわけにはいかないので、ここでもICTが有効だった。
教育効果を高めるためには「知識教育」と「集合教育」の良さの組合せ、そして受講者及び上司の“意識”をうまくかみ合わせることから始めなければならない。その辿り着いた姿が「ブレンディング教育」というわけだ。
先にご紹介した人間力講座は、ノウハウ等の知識の吸収ではなく、受講者一人ひとりに“意識”をもってもらうことを目的としていた。講師の生き方や志を通して、人格的な触発を受け、共感することによって行動するという人間観を根底にしていた。人間力講座は自ら受けたいと思う人が誰でも受けられる講座と位置づけたのも“意識”を大切にしたからだ。
東芝デジタルソリューションズ株式会社
商品統括部 HRMソリューション技術部
真野 広
※記事に掲載の、社名、部署名、役職名などは、2017年11月時点のものです。
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