Generalist × SmartHRで実現する人事・労務の業務効率化と人材戦略の未来 〜2025年法改正&トレンド ピックアップ解説〜


SmartHR社共催セミナーの当社の講演レポートです。

2025年以降、日本の人事・労務領域は大きな転換期を迎えます。政府が掲げる「こども未来戦略」や「人的資本経営」の推進に伴い、育児・介護休業法や雇用保険法などの関連法令が相次いで改正され、企業には制度対応だけでなく、従業員への周知や意向確認といった実務対応力がこれまで以上に求められるようになっています。

こうした背景のもと、2025年5月23日に開催されたオンラインセミナー「Generalist× SmartHRで実現する人事・労務の業務効率化と人材戦略の未来〜2025年法改正&トレンド ピックアップ解説〜」(主催:SmartHR、共催:東芝デジタルソリューションズ)では、2025年法改正の要点と、それに伴う人事・労務業務の変化、そしてそれらに対応するための実践的なソリューションを紹介しました。

本セミナーでは、クラウド人事労務ソフト「SmartHR」と、人財管理ソリューション「Generalist」の連携によって実現する業務効率化や、法改正への迅速な対応、人材戦略の高度化について、具体的な事例とともに解説しました。特に注目いただきたいのは、2025年7月施行の法改正により新設される「出生後休業支援給付金」および「育児時短就業給付金」に関する解説です。

本記事では、セミナー第2部で取り上げた「育児・介護休業法」の給付金に関するポイントを中心に、制度の概要、支給要件、実務上の留意点を整理し、企業の人事担当者が押さえておくべき要点をわかりやすく解説します。

【プロフィール】
2014年に東芝ソリューション(現:東芝デジタルソリューションズ)へ入社。入社以来一貫して人事ソリューション「Generalist」シリーズの導入・保守・提案活動に従事。製造業向けの「Generalist/TM」保守業務を皮切りに、「Generalist/LM」運用保守や新規案件対応を担当。近年はLMSのEC販売基盤「Generalist/LW」において、販促プロモーション、提案活動、カスタマーサクセス全般をリードし、カスタマーサクセスチームのリーダーを従事。現在は「Generalist」シリーズのアライアンス担当として、パートナー企業との連携強化や新たな価値創出に取り組んでいる。

講師:東芝デジタルソリューションズ株式会社
   デジタルエンジニアリングセンター
   HRMソリューション部 技術担当
   スペシャリスト 勝俣 公平

目次


「育児・介護休業法」の給付金に関するポイント

1.改正の背景と目的

2.育児・介護休業法の変遷

3.令和7年4月1日施行 雇用保険制度の改正について

4.出生後休業支援給付金

5.育児時短就業給付金

6.制度運用における企業の対応

「Generalist®」の特徴紹介

 

「育児・介護休業法」の給付金に関するポイント


1. 改正の背景と目的


本改正は、政府の「こども未来戦略」(こども家庭庁)に基づき、若年層の所得向上と育児支援の強化を目的としています。特に男性の育児休業取得促進と、育児と就業の両立支援を柱とし、企業における制度整備と職場環境の改善が求められています。

2. 育児・介護休業法の変遷


育児・介護休業法は、仕事と家庭の両立を支援するために段階的に整備されてきました。特に近年は、男性の育児参加促進や人的資本開示への対応といった社会的要請を背景に、制度の拡充が進んでいます。以下に、2022年以降の主な改正とその実務上のポイントを整理します。

 

■ 2022年4月施行:職場環境整備の義務化
企業には、育児休業制度の「個別周知」と「意向確認」の措置が義務付けられました。これは、従業員が制度を正しく理解し、取得しやすい環境を整えることを目的としています。

実務上のポイント:

  ●管理職や現場責任者への制度説明と意識づけ
  ●対象者への案内文書や面談記録の整備
  ●制度の存在を知らせるだけでない、取得を前提とした対話

■ 2022年10月施行:出生時育児休業(産後パパ育休)の創設

子の出生後8週間以内に、父親が最大4週間の育児休業を2回に分けて取得できる制度が新設されました。また、育児休業の分割取得も可能となり、夫婦で交互に取得する柔軟な運用が可能になりました。

実務上のポイント:

  ●取得希望者へのスケジュール調整支援
  ●分割取得に対応した勤怠・給与システムの整備
  ●取得しやすい雰囲気づくり

■ 2023年4月施行:育児休業取得状況の公表義務化

従業員数1,000人超の企業に対し、男性の育児休業取得率などの情報公開が義務付けられました。これは、人的資本開示(ISO30414)との連動も意識した施策です。

実務上のポイント:

  ●公表対象となるデータの定義と収集方法の明確化
  ●育児休業取得率の向上に向けた社内施策(例:取得促進キャンペーン)の実施
  ●経営層へのレポーティングや社外開示資料の整備

3. 令和7年4月1日施行 雇用保険制度改正について


2025年(令和7年)4月1日より、雇用保険制度が改正され、育児休業給付に関する体系が大きく見直されました。

■ 改正の概要

これまで「育児休業給付金」および「出生時育児休業給付金(産後パパ育休)」の2本柱で構成されていた育児関連給付に、新たに以下の2つの給付金が加わり、全体として「育児休業“等”給付」として再編されました。


  ●出生後休業支援給付金
  ●育児時短就業給付金


これにより、育児休業取得者への経済的支援が拡充され、特に男性の育児休業取得促進と、育児と就業の両立支援が強化されることとなりました。

■ 改正後の体系(育児休業“等”給付)

■注意するべきポイント

  ●申請手続きの変更:従来の「育児休業給付金」申請様式が変更され、「育児休業等給付金」として統一されました。
            新様式への対応が必要です。
  ●配偶者情報の取得:出生後休業支援給付金の申請には、配偶者の育休取得状況を確認する必要があり、他社勤務者の
            場合は証明書類の取得が求められます。
  ●社内制度との整合性:就業規則や育児休業規程の見直しが必要です。特に、時短勤務制度の運用ルールと給付金の
            支給要件との整合性を確認する必要があります。
  ●システム対応:給与・勤怠・雇用保険関連システムの改修が必要となる場合があります。API仕様の変更にも注意が必要です
           (e-Gov電子申請APIの更新スケジュールに基づく)。

4.出生後休業支援給付金


■ 制度の趣旨

出生直後の育児において、両親がともに育児休業を取得することを促進するための給付金です。従来の育児休業給付金に加算される形で支給され、最大で実質100%相当の所得補償が可能となります。

■ 支給要件

以下の2点を満たす必要があります。
  ●子の出生直後の一定期間(最大8週間または16週間)に、両親ともに14日以上の育児休業を取得していること。
  ●配偶者が自社の社員でない場合でも、育児休業を取得していることを証明する書類の提出が必要。

■ 支給額

  ●休業開始時賃金日額の13%相当額 × 最大28日間
  ●社会保険料の免除と併せて、実質手取りで100%相当の補償が可能。

■ 実務上の留意点

  ●配偶者の育休取得状況を確認する必要があるため、他社勤務の配偶者に関する情報収集が不可欠です。
  ●申請書には「配偶者の被保険者番号」や「育休開始日」などの記載が求められます。
  ●配偶者が育休を取得できない特別な事情(例:死亡、別居、無職等)がある場合は、例外的に単独取得でも対象となる可能性があります。

5. 育児時短就業給付金


■ 制度の趣旨

2歳未満の子を養育するために時短勤務を選択した労働者に対し、収入減少を補填する目的で支給される給付金です。柔軟な働き方の推進と、育児とキャリア形成の両立支援を目的としています。

■ 支給要件

以下の条件をすべて満たす必要があります。

  ●2歳未満の子を養育するために時短勤務を開始したこと。
  ●育児休業給付の対象となる育児休業から引き続いて時短勤務を開始した、または開始日前2年間に被保険者期間が12か月以上あること。
  ●高年齢雇用継続給付の対象ではないこと。


■ 支給額

  ●時短勤務中の賃金の10%相当額
   ただし、育児時短就業開始時の賃金水準を超えないように調整されます。


■ 実務上の留意点

  ●支給対象月ごとに、勤務時間の短縮状況や賃金水準を確認する必要があります。
  ●育児時短就業が複数回にわたる場合(例:第1子と第2子で連続取得)、基準となる労働時間の比較に注意が必要です。

6. 制度運用における企業の対応


■ 情報提供と申請支援

従業員が正しく制度を理解し、適切に申請できるよう、制度内容や申請手続きに関する情報提供が重要です。特に配偶者が他社勤務の場合、情報取得のための協力依頼が必要となるケースもあります。

■ 社内制度との整合性

就業規則や育児休業規程の見直しが必要です。新たな給付金制度に対応した社内手続きや申請フローの整備が求められます。

■ 職場風土の醸成

男性の育児休業取得を促進するためには、制度の整備だけでなく、取得しやすい職場風土の醸成が不可欠です。上司や同僚の理解を得るための啓発活動も重要です。

「育児・介護休業法」の給付金に関するポイントまとめ


2025年7月1日施行の法改正により、「育児・介護休業法」に基づく給付制度が拡充されました。新たに創設された「出生後休業支援給付金」と「育児時短就業給付金」は、従来の育児休業給付金を補完し、育児と就業の両立をより現実的に支援する制度です。

「出生後休業支援給付金」は、子の出生後8週間(または16週間)以内に、両親がともに14日以上の育児休業を取得した場合に支給され、休業開始時賃金日額の13%相当額が最大28日間支給されます。社会保険料の免除と併せて、実質的に100%相当の所得補償が可能となる点が大きな特長です。

また、「育児時短就業給付金」は、2歳未満の子を養育するために時短勤務を選択した労働者に対し、賃金の10%相当額を支給する制度で、柔軟な働き方の選択肢を広げるとともに、従業員の定着やキャリア形成支援にもつながります。

これらの制度は、単なる経済的支援にとどまらず、企業の人事戦略や人的資本経営にも直結する重要な施策です。制度の正確な理解と社内周知、就業規則の見直し、配偶者情報の取得体制の整備など、実務面での対応が求められます。

今回の法改正は、育児と仕事の両立を支援する制度の進化であると同時に、企業にとっては「人を活かす経営」への転換を促す契機でもあります。人事部門としては、制度対応を超えて、従業員のライフステージに寄り添う柔軟な人事施策の設計と運用が求められています。

Generalistの特徴紹介


〜人事・給与業務の基盤を支える国産統合ソリューション〜

「Generalist」は、東芝デジタルソリューションズが提供する国産の人事・給与ソリューションであり、1998年の発売以来、累計9,652社以上、1,000万ライセンス超の導入実績を誇る業界屈指の統合人事システムです。製造業、流通業、金融業、公共機関など、業種・業態を問わず幅広い企業に採用されており、従業員数500名未満の中堅企業から1万人超の大企業まで、規模を問わず柔軟に対応できる点が大きな特長です。

 

         Generalistは 共創 という考え方で、様々なサービスと企業をつなぎ、企業の成長を支援します

 

Generalistは単なる人事給与システムにとどまらず、人材育成、eラーニング・教育管理、人財戦略支援など、企業の人事基盤を総合的に支えるファミリー製品群を展開しています。経営層・人事部門・従業員の三者それぞれに価値を提供する設計となっており、人的資本経営の実践やISO30414への対応、人的資本情報の開示義務化といった最新の経営課題にも対応可能です。

経営層向け:人的資本の可視化と戦略支援

経営層に対しては、「人財戦略支援サービス」および「人的資本分析オプション」を通じて、人的資本の可視化と戦略的活用を支援します。たとえば、女性管理職比率、男女の賃金差、育児休業取得率などの指標をワンタッチで出力し、時系列・部門別に分析することが可能です。これにより、経営戦略と人材ポートフォリオの整合性を可視化し、ギャップ分析に基づく施策立案を支援します。

人事部門向け:業務効率化と働き方改革の推進

人事部門に対しては、業務の属人化を防ぎ、業務フローの「見える化」や「自動化」を実現する機能を提供しています。たとえば、操作手順の簡略化、SNSによるチーム内コミュニケーション、AIによるリコメンド機能、定型業務の自動実行(オートメーション)などが標準装備されており、業務の効率化と高度化を同時に実現します。

また、画面の自由編集機能により、複数の管理画面を統合し、不要な項目を非表示にするなど、現場の使いやすさを重視したカスタマイズが可能です。

従業員向け:キャリア形成と情報活用の支援

従業員に対しては、企業が保有する人事情報を「個人に開放」し、自己理解やキャリア形成に活用できる仕組みを提供しています。たとえば、「myトリセツ」の提供や、退職後も活用可能なスキルデータの提供など、個人と会社、さらには社会をつなぐ「社会の人事部™」としての役割を目指しています。

 

 

Generalistの新サービス:人財戦略支援サービス


Generalist®の新サービス「人財戦略支援サービス」は、企業の人的資本を最大限に引き出し、中長期的な企業価値向上を目指すものです。デジタル技術を活用して現状の人財を「見える化」し、その情報に基づいて人事戦略を立案・実行します。さらに、「人的資本情報」の開示により、企業価値をマーケットにアピールし、魅力的な企業を目指します。

 

人財戦略支援サービスの特徴

 1.人財戦略の計画・現状・GAPの可視化

  •Generalist®では、人財戦略の実現のために必要な人財ポートフォリオとその計画を可視化し、現状の人財とのGAPを把握して、
        人財戦略実行につなげます。
  •会社が必要とする人財を定義し、レベルごとの必要スキルを設定し、計画した人数(ToBe)と現在の人財数(AsIs)の差を可視化します。

 2.人的資本最大化のための施策の実行

  •Generalist®では、人的資本を最大化するための施策として、採用、異動、学びの3つのポイントを重視します。
  •必要な人財が社内にいない場合や即戦略として必要な場合は外部から調達し、必要な人財を社内から探して最適な配置を検討します。
  •従業員のスキルアップによる人的資本の拡大を図り、トップダウンによる育成やボトムアップでの自律的な成長を促します。

 


本講演では、人事・労務業務を取り巻く環境は、法制度の変化、人的資本経営の推進、従業員体験(EX)の重視など、かつてないスピードで変化しています。こうした中で、企業が持続的に成長していくためには、業務の効率化と戦略的人材マネジメントの両立が不可欠です。「Generalist®」と「SmartHR」の連携は、まさにその実現を支える強力なソリューションです。従業員にとって使いやすいSmartHRのフロントエンドと、信頼性の高いGeneralist®の人事給与基盤を組み合わせることで、業務の正確性とスピードを両立しながら、人的資本の可視化や戦略的活用にもつなげることができます。また、両社が共同で業務整理や要件定義を行う「共創型」の導入支援体制により、企業ごとの運用に最適化された形での導入が可能となり、単なるシステム連携にとどまらない「業務変革」の実現が期待されます。今後も、段階的な開発ロードマップに基づき、連携機能はさらに拡充していく予定です。企業の人事部門にとっては、これらの連携を活用することで、より柔軟で強靭な人事基盤を構築し、変化に強い組織づくりを進めていくことができると考えています。

 

【出典・参考資料】
・厚生労働省ホームページ「育児休業等給付について」
 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000135090_00001.html
・厚生労働省ホームページ「2025年4月から「出生後休業支援給付金 」を創設します」
 https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/001372778.pdf
・こども未来戦略(こども家庭庁ホームページ)
 https://www.cfa.go.jp/resources/strategy

関連サイト