従業員名簿とは何か?
必須項目や作成、注意点、保管方法を解説
労働基準法第107条・第109条により、使用者は従業員ごとに労働者名簿を作成・保管することが義務付けられています。
本記事では、従業員名簿の作成対象者や必要性、記載事項、保管期間・方法、作成・管理上の注意点について解説します。人事・労務担当者の方は、ぜひ参考にしてみてください。
従業員名簿とは?
従業員名簿とは、従業員の氏名や住所、入社日、担当業務などをまとめて管理する書類です。一般に、出勤簿・賃金台帳とあわせて「法定三帳簿」と呼ばれています。
会社が対象となる労働者を1人でも雇用している場合は、労働基準法に基づき労働者名簿を作成する必要があります。
法定三帳簿の一つ
従業員名簿は、賃金台帳・出勤簿とあわせて「法定三帳簿」と呼ばれることがあります。事業規模にかかわらず従業員を1人雇用している会社は、労働者名簿や賃金台帳などを適切に作成・保存する義務があります。
法定三帳簿を作成・保管していない、または不備があった場合は、罰金が科される可能性があるため注意しましょう。
労働基準法第120条では、労働者名簿や賃金台帳の作成・保管義務に違反した場合は、30万円以下の罰金が科されるため、事業者は適切に作成・保管することが重要です。
参考:労働基準法 第120条(e-Gov 法令検索サイトへ遷移します。)
労働基準法第107条によって作成が義務付けられている
従業員名簿の作成は労働基準法第107条によって義務付けられており、従業員を1人でも雇用している場合は従業員名簿を作成しなければなりません。
従業員名簿の対象者は雇用形態を問わず、すべての従業員が含まれます。ただし、役員や同居の親族などは原則として対象外となりますが、実態として労働基準法上の労働者に該当する場合は対象となる可能性があり、注意が必要です。
また、日雇い労働者や個人事業主も作成の対象外となり、派遣労働者に関しては原則として派遣元企業が作成し管理します。
在籍出向中では、原則として従業員は出向元・出向先の双方で労働者名簿を作成する必要がありますが、移籍出向の場合は出向先のみが作成義務を負うため、注意しましょう。
参考:労働基準法第107条(e-Gov 法令検索サイトへ遷移します。)
従業員の情報管理のための書類
事業規模や雇用形態に関係なく、対象となる労働者が1人でも在籍していれば、労働者名簿を作成する必要があります。
法人化していない個人事業主であっても、従業員を雇用していれば従業員名簿の作成義務は発生します。
(マネーフォワード クラウド給与サイト「労働基準法第107条とは?労働者名簿の作成義務についてわかりやすく解説」ページへ遷移します。)
従業員の情報を従業員名簿で管理しておくことで、入退社や異動に伴う手続きの漏れを防ぎやすくなるでしょう。
住所変更などがあった場合は遅滞なく訂正しましょう。なお、人事管理上必要な場合は、変更日や変更前の内容を社内履歴として残しておくことをおすすめします。
従業員名簿と労働者名簿・社員名簿の違い
法令上の正式名称は「労働者名簿」ですが、実務上は「従業員名簿」と呼ばれることもあります。
| 名簿名称 | 詳細 |
|---|---|
| 従業員名簿 | 正社員、パートタイマー、アルバイトなど、すべての労働者を対象 |
| 労働者名簿 | 労働基準法上の正式名称であり、「従業員名簿」と呼ばれることもある |
| 社員名簿 |
企業が任意に作成する名簿で、対象範囲は企業によって異なる |
労働基準法で作成が義務付けられているのは労働者名簿ですが、従業員名簿と呼ばれることもあります。
従業員名簿が必要な場面
従業員名簿が必要となる場面は、主に以下の2つです。
- 行政調査
- 労務管理
行政調査
労働基準監督署や年金事務所などの行政機関による調査の際、従業員名簿は提出を要求される書類の一つです。従業員の雇用状況や労務管理の実態などを確認する資料として使用される場合があります。
労働基準監督署の臨検監督では、労働時間や賃金の状況を確認するため、出勤簿や賃金台帳などとともに労働者名簿の提示・提出を求められることがあるため、すぐに提出できる状態を維持しておきましょう。
雇用関係助成金などの申請時には、従業員名簿の提出が必要となる場合があり、対象労働者の在籍状況や雇用状況を確認する資料として用いられることがあります。
行政調査に備え、従業員名簿は必要事項を漏れなく記載したうえで適切に作成・保管し、速やかに提出できる状態を維持することが重要です。
労務管理・人事管理
従業員名簿は、企業の労務管理・人事管理にて、従業員の情報を管理する際に使用する帳簿です。具体的には、以下のような場面で活用できます。
- 従業員の個人情報の確認
- 休暇管理や給与計算
- 社会保険・労働保険の手続き
- 従業員の配置転換
- 人材育成の計画
従業員の住所や連絡先などの情報は、緊急時の連絡や通勤手当の算定などに役立ちます。また、労働保険や社会保険の手続きの際に申請内容の正当性を証明する資料としても役立つでしょう。
No.8「労務管理」
No.39「人事管理」
従業員名簿の必須項目
従業員名簿は、労働基準法第107条と労働基準法施行規則第53条において、記載しなければならない事項が決まっています。
従業員名簿の必須記載事項は以下のとおりです。
- 氏名
- 生年月日
- 性別
- 住所
- 履歴
- 従事する業務の種類
- 雇入れ年月日
- 退職年月日とその事由(退職の事由が解雇の場合は、その理由を含む)
- 死亡年月日とその原因
必須事項ではありませんが、人事・労務管理上必要な範囲で、以下の情報を記載することもあります。
- 連絡先(電話番号・メールアドレス)
- 緊急連絡先
- 所属部署・役職
- 社会保険の加入状況
- 資格・免許 など
従業員名簿の必須項目とその書き方について詳しく説明します。
参考:労働基準法 第107条(e-Gov 法令検索サイトに遷移します。)
参考:労働基準法施行規則 第53条(e-Gov 法令検索サイトに遷移します。)
氏名・生年月日・性別
労働者名簿の氏名は、本人を正確に特定できるよう、正式な氏名を記載するのが一般的です。読み間違いを防ぐため、必要に応じてふりがなを添えておくと管理しやすくなります。
結婚などによって在籍中に氏名が変わった場合は、変更内容を速やかに労働者名簿へ反映しましょう。職場で旧姓を使用している従業員についても、労働者名簿には戸籍上の氏名を記載します。
生年月日は、年・月・日を正確に記載します。年齢の確認や各種労務手続きにも関わる基本情報のため、記載内容に誤りがないか確認することが大切です。
また、性別についても労働基準法で定められた労働者名簿の記載事項に含まれるため、漏れなく記載しましょう。
住所
労働者名簿には「住所」を記載します。実務上は、従業員が現在居住している住所を確認して記載するのが一般的です。
住所を正確に特定できるよう、都道府県、市区町村、番地、建物名、部屋番号などを必要に応じて記載します。
住民票の住所と現在居住している住所が異なる場合があるため、従業員本人に確認の上、記載しましょう。
履歴
労働者名簿の「履歴」については、労働基準法で記載内容が具体的に定められているわけではありません。そのため、企業ごとに必要な項目を定めて記載します。
一般的には、入社後の異動や昇進などの社内履歴を記載し、必要に応じて学歴や職歴なども記載します。人事異動や昇進があった場合は、その都度情報を更新し、最新の状態に保つことが大切です。
異動や昇進の履歴を記録する際は、変更日と変更内容がわかるように記載します。以前の所属部署や役職などの情報は削除せず、「いつ、どの部署・役職からどこへ変更されたのか」を確認できる形で残しておくと、人事管理にも活用しやすくなります。
従事する業務の種類
従業員名簿には、従業員が担当している業務を把握できるよう、「従事する業務の種類」を記載します。具体的な業務内容に加えて、必要に応じて所属部署や役職なども記載しておくと、社内での役割を把握しやすくなります。
配置転換などによって担当業務が変わった場合は、速やかに従業員名簿を更新し、最新の情報を反映しましょう。また、異動の経緯を確認できるよう、「履歴」の項目もあわせて更新しておくことが大切です。
なお、労働基準法施行規則第53条では、常時30人未満の労働者を使用する事業場について、「従事する業務の種類」の記載を省略できると定められています。
参考:労働基準法施行規則第53条(e-Gov 法令検索サイトに遷移します。)
雇入れ年月日
従業員名簿の「雇入れ年月日」には、従業員との雇用関係が開始した年月日を記載します。採用を決定した日や内定を通知した日ではなく、実際に雇用を開始した日を記載する点に注意が必要です。
試用期間を設けている場合も、原則として試用期間の開始日が雇入れ年月日となります。試用期間中であっても労働契約は成立しているため、労働契約書や賃金台帳などの関連書類と日付に相違がないよう確認しましょう。
雇入れ年月日は、勤続期間の把握や各種人事・労務管理にも関わる基本情報となるため、正確に記載することが大切です。
退職年月日とその事由
従業員が退職した場合は、従業員名簿に退職年月日を記載します。また、退職の事由も記載し、解雇による退職の場合は、その理由まで明記する必要があります。
退職年月日や退職理由は、雇用保険の資格喪失手続きや離職票の作成など、退職後の各種手続きにも関わる情報です。記載内容に誤りがあると手続きに影響する可能性があるため、事実関係を確認したうえで正確に記載しましょう。
死亡年月日とその原因
在籍中に従業員が亡くなった場合は、従業員名簿に死亡した年月日とその原因を記載します。特に、業務中や通勤途中の事故などの場合は、労災に該当する可能性もあるため、事実関係を確認したうえで正確に記録することが重要です。
死亡年月日やその事由は、雇用関係の終了に伴う各種手続きや社会保険の資格喪失手続き、遺族への対応などにも関わります。そのため、確認できた事実に基づいて、誤りのないよう記載しましょう。
従業員名簿を作成する際のポイント
従業員名簿を正しく作成するには、記載する対象者、作成と更新の担当者、情報の書き方をあらかじめ決めておくことが重要です。
従業員名簿を作成するポイントとして、以下の3点について解説していきます。
- 従業員名簿の対象者
- 従業員名簿の作成者
- 従業員名簿の書き方の例
従業員名簿の対象者
従業員名簿に記入する対象者としては、基本的に雇用しているすべての従業員が対象になっています。
対象となる従業員は下記のとおりです。
- 正社員
- 契約社員
- パートタイム
- アルバイト
一方、労働基準法上の労働者に該当しない取締役などの役員や、雇用契約ではなく業務委託契約を結んでいる個人事業主は、原則として従業員名簿の対象には含まれません。ただし、役員や業務委託であっても、実態として使用従属性が認められ、労働者に該当する場合は対象となる可能性があります。
派遣労働者については、雇用関係にある派遣元企業が従業員名簿を作成・管理します。また、在籍出向では出向元と出向先の双方に雇用関係が成立するケースが一般的であるため、それぞれで従業員名簿の作成が必要です。移籍出向の場合は、受け入れ先の企業に作成義務が発生します。
日雇い労働者は、労働基準法第107条により労働者名簿の作成対象から除かれているため、作成の必要はありません。
参考:労働基準法 第107条(e-Gov 法令検索サイトに遷移します。)
従業員名簿の作成者
従業員名簿を作成する実務上の担当者については、法律で具体的に定められていません。一般的には、人事・労務担当者が作成・管理を行いますが、専任の担当者がいない企業では、管理者や経営者などが担当する場合もあります。
また、住所や氏名など従業員本人に関する情報が変更された場合は、社内ルールに基づいて人事・労務担当者などへ速やかに届け出てもらい、従業員名簿を最新の状態に更新することが大切です。
従業員から変更の申告を受けられる仕組みを整え、記載内容を適切に管理できる体制を構築しておきましょう。
従業員名簿の書式・様式
従業員名簿の記載事項は労働基準法第107条と労働基準法施行規則第53条において定められていますが、書式や様式に決まりはありません。
必須項目が記載できれば形式は自由ですが、自社で一から作成しようとすると、時間や手間がかかるだけでなく、抜け・漏れが発生し、トラブルにつながる恐れがあります。
作成に迷う場合は、厚生労働省が提供する労働者名簿のひな形・テンプレートを活用することで抜け・漏れを防ぐことが可能です。
参考:労働者名簿 (PDF形式)(厚生労働省の労働名簿ページへ遷移します。)
従業員名簿の保管期間と方法
従業員名簿には法定の保存期間があり、紙または電子データで適切に保存する必要があります。ここでは以下の項目に関して詳しく説明します。
- 従業員名簿の保管期間
- 従業員名簿の保管方法
- 従業員名簿の更新タイミング
従業員名簿の保管期間
従業員名簿の保管期間は、労働基準法第109条では原則5年と定められていますが、現在は労働基準法附則第143条の経過措置により、当分の間は3年の保管でも問題ありません。
将来的な5年保存への移行に備え、5年間保存できる管理体制を整えておくとよいでしょう。
保管期間が始まるタイミングとしては、労働者の死亡・退職・解雇の日から5年間(当面の間は3年間)の保管が必要となります。
参考:労働基準法第109条(e-Gov法令検索サイトへ遷移します。)
参考:労働基準法附則第143条(e-Gov法令検索サイトへ遷移します。)
参考:労働基準法施行規則第56条(e-Gov法令検索サイトへ遷移します。)
従業員名簿の保管方法
従業員名簿の保管方法は、紙媒体・電子媒体のいずれでも保存できますが、個人情報を守れる管理体制が必要になります。
紙媒体で保管する場合は、施錠できるキャビネットへ保管し、電子媒体で保管する場合は、ファイルにパスワードを設定するなどの対策が有効です。
電子データで保存する場合は、厚生労働省が示す以下の要件を満たす必要があります。
- 法令で定められた要件を具備し、それを画面上に表示し印字できること
- 労働基準監督官の臨検時など、直ちに必要事項が明らかにされ、提出し得るシステムとなっていること
- 誤って消去されないこと
- 長期にわたって保存できること など
労働基準監督官から従業員名簿の提出や閲覧を求められた場合に備え、必要事項を記載した名簿をすぐに印刷できる状態で管理しておきましょう。
参考:労務関係の書類をパソコンで作成して保存したいのですが、可能でしょうか。(厚生労働省サイトへ遷移します。)
従業員名簿を作成する際の注意点
従業員名簿は、記載事項に変更が生じたタイミングで更新します。労働基準法第107条第2項では、記載事項に変更があった場合、「遅滞なく訂正しなければならない」と定められているため、変更内容を把握したら速やかに反映することが重要です。
たとえば、従業員の引っ越しや改姓、配置転換などによって名簿の記載事項が変わった場合は、最新の情報へ更新します。
特に、アルバイトやパートタイマーを多く雇用している企業や、従業員の入退社・異動が頻繁に発生する企業では、更新の機会も多くなります。変更内容の反映漏れを防ぐため、従業員からの変更申告の方法や更新手順をあらかじめ決めておくとよいでしょう。
参考:労働基準法第107条(e-Gov法令検索サイトへ遷移します。)
従業員名簿を作成する際の注意点
従業員名簿を作成・管理する際の主な注意点は、以下のとおりです。
- 役員名簿は別途作成する
- セキュリティ対策を徹底する
- マイナンバー情報は記載しない
- 廃棄方法のルールを策定しておく
- 事業拠点ごとに作成する
それぞれの注意点について、以下より詳しく解説します。
セキュリティ対策を徹底する
従業員名簿には、氏名や生年月日、住所などの個人情報が記載されているため、個人情報保護法などに基づいて適切に管理する必要があります。情報の漏えいや紛失、不正な閲覧を防ぐためにも、十分なセキュリティ対策を講じることが重要です。
紙で管理する場合は、施錠できるキャビネットなどに保管し、閲覧できる担当者を限定しましょう。電子データで管理する場合は、パスワードの設定やアクセス権限の制限などを行い、必要な担当者だけが情報を確認できる環境を整えます。
マイナンバー情報は記載しない
従業員名簿にはマイナンバーを記載せず、別の方法で適切に管理しましょう。労働者名簿の法定記載事項にマイナンバーは含まれません。個人番号は法令で認められた利用目的の範囲内で、通常の人事情報とは分けて厳格に管理することが望まれます。
マイナンバーは、社会保障や税などの手続きに利用する個人番号であり、法律によって利用できる範囲が限定されています。
企業が従業員からマイナンバーを取得する際は、あらかじめ利用目的を明示しなければなりません。雇用保険や社会保険、税務などの手続きでマイナンバーが必要な場合でも、利用目的と関係のない従業員名簿などには記載を避けましょう。
廃棄方法のルールを策定しておく
従業員名簿の保存期間が終了した後は、個人情報が外部に漏れないよう、安全な方法で廃棄することが重要です。紙と電子データでは適切な処分方法が異なるため、あらかじめ社内で廃棄方法や手順を定めておきましょう。
紙で保存している場合は、シュレッダーによる裁断や専門業者による溶解処理など、記載された個人情報を復元できない方法で廃棄します。廃棄を外部業者へ委託する場合は、個人情報を適切に取り扱える事業者を選定することも大切です。
電子データの場合は、単にファイルを削除するだけではデータを復元できる可能性があります。専用ソフトウェアなどを利用し、電子データは復元できない方法で消去し、記録媒体を処分する場合も適切な方法で廃棄しましょう。
事業拠点ごとに作成する
従業員名簿は、原則として事業場ごとに作成・管理します。本社だけでなく、支社や営業所、工場などがそれぞれ独立した事業場に該当する場合は、各事業場に所属する従業員の名簿を適切に管理することが必要です。
名簿の作成やデータ管理を本社で一元化する場合でも、各事業場において必要なときに従業員名簿を確認・提出できる状態にしておくことが重要です。電子データで管理する場合は、各事業場から必要な情報をすぐに表示・出力できる体制を整えておきましょう。
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従業員名簿は、労働基準法に基づいて作成・保存が義務付けられている重要な帳簿です。対象となる従業員を正しく把握し、氏名や住所、雇入れ年月日などの必須項目を漏れなく記載するとともに、変更があった場合は速やかに更新する必要があります。
また、保存期間や事業場ごとの管理、個人情報のセキュリティ対策にも注意が必要です。従業員数が多く管理負担が大きい場合は、人事・労務システムを活用し、正確かつ効率的に管理できる体制を整えましょう。
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