労働者名簿とは?記載事項や保存期間、管理方法を解説

労働者名簿は、単なる法定帳簿としての役割にとどまらず、日常の人事・労務管理における基幹ツールとしても機能します。

本記事では、労働者名簿の作成方法から保存期間、デジタル管理のメリットまで詳しく解説します。また、適切な労務管理を行うための参考にしてみてください。

労働者名簿とは?

労働者名簿は、労働基準法第107条・第109条に基づき、使用者が作成・保管を義務付けられている書類です。従業員の氏名や生年月日、住所といった基本情報をはじめ、雇入れ年月日や退職年月日とその事由など、労働者の基本情報や雇用に関する履歴を明らかにするための重要な記録です。

労働基準監督署の調査が入った際には、一般に「法定三帳簿」と呼ばれる労働者名簿・賃金台帳・出勤簿の提出を求められることがあります。企業の労務管理体制が整備されているか判断する材料の1つとなります。

参考:労働基準法 (e-Gov 法令検索サイトに遷移します。)

労働者名簿の対象者

労働者名簿の作成義務の対象は、原則として事業場で雇用する労働者です。正社員、パート・アルバイト・契約社員など雇用形態は問いません。

ただし、日雇い労働者、法人の代表者や役員は対象外です。また、派遣労働者は派遣元企業が作成するため、派遣先では不要です。

出向中の従業員の場合、在籍出向なら出向元と出向先の双方、移籍出向なら受け入れ先の企業に作成義務が発生します。雇用関係の実態に応じて対象者が異なる点に留意しましょう。

労働者名簿と従業員名簿・社員名簿・役員名簿との違い

労働者名簿と似た書類に従業員名簿・社員名簿・役員名簿があります。

 

「従業員名簿」は企業が従業員情報を管理する名簿の一般的な呼称です。一方、労働基準法で作成が定められている帳簿の名称は「労働者名簿」です。

社員名簿と役員名簿は、法的な位置づけや記載項目、対象者が異なります。

項目 労働者名簿 社員名簿 役員名簿
法的位置づけ 法定帳簿(作成義務あり) 任意作成 任意作成(事実上の公式文書)
根拠法令

労働基準法第107条

なし

なし

記載項目

法律で定められた9項目が必須

企業が自由に設定可能

企業が自由に設定可能

対象者

労働者(正社員・パート・アルバイト等)          

労働者

役員(取締役・監査役など)

 

労働者名簿は労働基準法で作成が義務付けられている法定帳簿であり、記載項目も法律で定められています。一方、社員名簿は企業が任意で作成するもののため、自由に項目を設定可能です。

役員名簿は、労働者名簿とは別に作成している企業もあります。役員は労働基準法上の労働者には該当しないため労働者名簿の対象外です。しかし、社会保険調査時に労働者名簿と併せて役員名簿の提出を求められることがあります。

労働者名簿の記入事項

労働者名簿には、法律で決められた項目を漏れなく記載する必要があります。具体的には以下の項目の記載が必要です。

  • 氏名、生年月日、性別
  • 住所
  • 従事する業務の種類
  • 履歴
  • 雇入の年月日
  • 退職の年月日及びその事由
  • 死亡の年月日及びその原因

参考:労働基準法施行規則 第53条 (e-Gov 法令検索サイトに遷移します。)

本章では各項目の記入方法をわかりやすく解説します。労働者名簿の記入をする際の参考にしてみてください。

氏名、生年月日、性別

労働者名簿には、氏名・生年月日・性別を正確に記載します。氏名は、会社で管理している正式な氏名を記載しましょう。読み仮名を併記しておくと、保険や年金の手続き時の確認の手間を減らせます。

生年月日は和暦・西暦どちらでも問題ありませんが、統一することが大切です。氏名などの記載事項に変更があった場合は、変更を把握した後、遅滞なく労働者名簿を訂正する必要があります。

住所

労働者名簿の「住所」欄には、従業員の住所を記載します。住民票上の住所と実際の住まいが異なるケースもあるため、労働者名簿へ記載するときは、本人に確認して適切に管理しましょう。

ただし、単身赴任中の従業員は住民票と現在住んでいる居住地が異なることがあるため、注意が必要です。また、住所に変更が生じた際は、その都度遅滞なく名簿の内容を更新する必要があります。

従事する業務の種類

労働者名簿の「従事する業務の種類」の欄には、従業員が実際に担当する具体的な業務内容を記載します。事務のような曖昧な表現ではなく、「人事」「労務」など担当業務が明確に伝わるように記すことが重要です。

なお、労働者数が30人未満の事業場では、従事する業務の記載は義務ではありませんが、労災発生時の業務確認に役立つため、記載することが望ましいです。

履歴

「履歴」の欄は、社内での異動や昇進、転勤など、従業員の人事に関する変更履歴を記録する項目です。法令では、記載範囲について明確な規定がないため、社内履歴を中心に記録します。また、従業員の最終学歴や入社前の職歴を確認したい場合は、会社の判断で任意に追加します。

新卒採用の場合は最終学歴、中途採用の場合は最終学歴から入社までの職歴を簡潔にまとめ、その後は社内での異動や昇進を追記していくのが一般的です。

雇入の年月日

「雇入の年月日」欄には、従業員が実際に働き始めた日を記載します。雇入年月日は、社会保険の資格取得、賃金台帳の登録など各種手続きに必要になるため、正確な記入が求められます。本採用となった日を誤って記載しないように気を付けましょう。

退職の年月日及びその事由

「退職年月日」欄には、従業員が退職した日付を記載し、退職事由は簡潔に記し、解雇の場合はその具体的な理由を明記します。

退職年月日とその事由は、雇用保険の資格喪失・離職に関する手続きで確認資料として用いられる場合があります。退職日や理由については、事実関係を正確に確認して記載することが重要です。

従業員が退職した際などに手続きが必要な「雇用保険被保険者資格喪失届」については、以下の記事で詳しく解説しています。

内部リンク:No.13「雇用保険被保険者資格喪失届」

死亡の年月日及びその原因

従業員が在職中に亡くなった場合、労働者名簿には死亡年月日とその原因を記載します。業務上の事故や疾病によるものかを判断し、労災に該当するか、必要な情報となります。

労働者名簿の記入事項以外の記載

労働者名簿は、法定の必須項目を満たしていれば、任意で以下のような項目を追加することが可能です。

  • 家族の人数・扶養の状況
  • 緊急連絡先
  • 免許・資格
  • 顔写真
  • 電話番号 など

法定項目以外の情報を追加する場合は、業務上の必要性を確認し、利用目的を明確にしたうえで適切に管理しましょう。

任意の項目に記載される情報は、従業員本人の緊急時や本人確認の際に役立ちます。免許・資格は取得年月日や有効期限も併せて記録しておくと、更新時期の管理にも活用できます。

マイナンバーは労働者名簿の法定記載事項ではありません。利用目的が厳格に制限されているため、労働者名簿には安易に併記せず、必要な手続きに応じて適切に別途管理するのが望ましいでしょう。

労働者名簿を使用するシーン

労働者名簿は、法定帳簿としての役割にとどまらず、企業の日常的な人事・労務管理において活用される実用的な書類です。以下のようなシーンで活用します。

  • 人事・労務管理
  • 退職証明書の発行
  • 通勤手当の算定や緊急連絡

人事・労務管理

労働者名簿は、日常の人事・労務管理において活用しやすいです。従業員の住所や入社年月日、異動や昇進の履歴など、個人情報が網羅されているため、必要な時にすぐに利用できます。

具体的には、社会保険や雇用保険の手続き、扶養変更の対応、適切な人材配置や育成計画の策定などの業務で活用されます。また、長年在籍する従業員の異動履歴も一目で確認できるため、人事異動の際の判断材料としても役立ちやすいです。

労働者名簿には、従業員の重要な個人情報があるため、常に最新の状態を維持することが求められます。

内部リンク:No.8「労務管理」

内部リンク:No.39「人事管理」

退職証明書の発行

退職者から退職証明書の発行を求められた際、労働者名簿の記載内容はその基礎資料の1つです。

退職証明書では、労働者から請求があった使用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金、退職事由について証明します。ただし、請求されていない事項を記載してはいけません。

そのため、退職証明書を作成する際、労働者名簿の正確な情報が必要になります。

参考:労働基準法 第22条 (e-Gov 法令検索サイトに遷移します。)

通勤手当の算定や緊急連絡

労働者名簿に記載された住所情報は、通勤手当の算定に役立ちます。

従業員の居住地と勤務地間の距離や交通機関を正確に把握することで、適切な通勤手当の算定に役立ちます。それにより、企業と従業員の双方にとって、根拠の明確な通勤手当を算定しやすくなるでしょう。

また、災害時や緊急時には、名簿に記録された住所や連絡先が重要な情報となります。住所は、引っ越しや転勤などによって変更されることもあるため、遅滞なく更新する必要があります。

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労働者名簿の保存期間と管理方法

労働者名簿は、法定帳簿として適切な保存と管理が求められます。保存期間や管理方法、更新のルールを正しく理解しておかなければ、法令違反になりかねません。ここでは、以下の項目について解説します。

  • 労働者名簿の保存期間
  • 労働者名簿の管理方法
  • 労働者名簿の変更・更新

労働者名簿の保存期間

労働者名簿の保存期間は、労働基準法第109条により、従業員の退職・解雇または死亡の日から起算して5年間(経過措置として当面は3年間)と定められています。在職中の従業員の名簿はもちろん、退職者の分もこの期間中は保管しなければなりません。

2020年4月の労働基準法改正により賃金請求権の時効が5年に延長されたことに伴い、関連書類である労働者名簿の保存期間も原則として5年となりました。起算日は入社日や異動日ではなく、退職・解雇・死亡の日である点に注意しましょう。

参考:労働基準法 第109条・第143条 (e-Gov 法令検索サイトに遷移します。)

参考:労働基準法の一部を改正する法律 (PDF形式)(585KB)(令和2年法律第13号)の概要(厚生労働省サイトに遷移します。)

労働者名簿の管理方法

労働者名簿は、紙媒体と電子データで認められていますが、いずれの場合も適切な管理が求められます。紙の場合は、施錠できる場所に保管し、紛失や盗難を防ぐことが重要です。

また、電子データで保存する場合は、各事業場で画面表示・印刷できる装置を備えておきましょう。労働基準監督署の調査時には必要事項を明らかにした写しを提出できる体制を整えることが重要です。加えて、誤って消去されないようバックアップを取るとともに、長期保存が可能な環境を整備しましょう。

労働者名簿の変更・更新

労働者名簿は、記載事項に変更が生じた場合、遅滞なく更新することが義務付けられています。

変更の対象となるのは、住所や氏名、従事する業務、異動や昇進の履歴などさまざまです。

労働者名簿の情報が古いまま放置されると、実態と乖離し、各種手続きに支障をきたす恐れがあるため、注意しましょう。紙の名簿で管理している場合は、変更箇所に二重線を引き、訂正印を押して新しい情報を記載します。

労働者名簿の作成や保存に問題があった場合の罰則

労働者名簿の作成・保存について、以下のようなケースで法令に違反した場合、労働基準法第120条により30万円以下の罰金が科される可能性があります。

  • 労働者名簿の作成を怠った
  • 必要な記載事項が欠けていた
  • 労働基準監督署の調査で不備を指摘されても改善しなかった
  • 適切に管理をしていなかった

適正な労務管理体制を構築するために日頃から適切な作成・保管を徹底しましょう。

参考:労働基準法 第120条 (e-Gov 法令検索サイトに遷移します。)

労働者名簿をデジタルで管理するメリット

労働者名簿は、紙で管理する方法のほかに、クラウドなどを使って電子的に管理する方法があります。労働者名簿のデジタル管理には、主に3つのメリットがあります。

 

  • 業務の効率化が見込める
  • 労働者名簿の紛失や保管のリスクが抑えられる
  • 従業員の能力やキャリアを可視化できる

業務の効率化が見込める

労働者名簿をデジタル化することで、人事・労務業務の効率化がしやすいです。手書きやExcelでの管理では、従業員の住所変更や異動のたびに手作業で更新する必要があり、転記ミスや更新漏れが発生しやすいという課題があります。

専用のシステムを導入すれば、従業員情報の入力を一度行うことによって、給与計算システムや勤怠管理システムと連携できるものもあります。それにより、業務を効率化しながら労働者名簿の管理を行うことが可能です。

労働者名簿の紛失や保管のリスクが抑えられる

労働者名簿をデジタルで管理することによって、紛失・盗難のリスクを減らせます。紙の保管場所も必要なく、保管にかかるコストを減らせるメリットもあります。

従業員の能力やキャリアを可視化できる

労働者名簿に記載された履歴や資格情報は、デジタル化により、従業員1人ひとりのスキルや経験、キャリアパスを可視化しやすくなります。これにより、従業員のデータを踏まえて、適材適所の人材配置がしやすくなります。

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労働者名簿におけるよくある質問

労働者名簿の作成や管理に関して、実務上よくある疑問をQ&A形式でまとめました。

 

  • 労働者名簿に個人番号(マイナンバー)を記載していいですか?
  • 労働者名簿は誰が書きますか?
  • 労働者名簿の書式にルールはありますか?

労働者名簿に個人番号(マイナンバー)を記載していいですか?

労働者名簿に個人番号(マイナンバー)を記載することは適切ではありません。労働者名簿は、法定帳簿として人事・労務管理の様々な場面で閲覧されることが想定されています。

個人番号(マイナンバー)を労働者名簿に記載すると、本来の使用目的以外で閲覧されるリスクが生じます。そのため、個人番号(マイナンバー)は、違う場所で管理し、個人情報の保護を徹底しましょう。

労働者名簿は誰が書きますか?

労働者名簿の作成責任は事業主(会社)にありますが、法律で特定の担当者が定められているわけではありません。一般的には、人事部や総務部など、労務管理を担当する部署のスタッフが作成・更新作業を担当します。

労働者名簿の書式にルールはありますか?

労働者名簿の書式や様式に法律上の決まりはなく、自由に作成できます。必須項目(氏名、生年月日、住所など)が記載されていれば、独自のフォーマットでも問題ありません。

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労働者名簿は法定三帳簿の1つとして、労働基準法が適用される使用者に作成・保存が義務付けられています。氏名や住所、履歴などの必須項目を記載し、記載事項に変更があった場合は遅滞なく更新する必要があります。

 

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