東芝のデジタル事業領域における
最新のデジタル技術とソリューションをお届けします。

あらゆる企業の未来に、いまやAI活用は必須条件です。一方で多くの企業では、AIエージェントをはじめとするAI活用をPoC(Proof of Concept:実証検証)から本番導入へと進めきれていない実状があります。人手不足への対応や熟練者の知見継承、業務効率化、競争力強化が急務となるいま、求められているのはAIをツールとして導入することではありません。現場の業務プロセスの課題を見極め、どの箇所に最適なAIを組み込み、将来に向けてどのように現場AIを育てていくのか、といったシステム(仕組み)としてのAI活用術です。東芝の生成AIマネージドサービス「SaborBrain(サボーブレイン)」は、長年培ってきたAI技術と事業現場の知見を結集した、「システムとしてのAI活用術」を提供するサービスです。AI活用に迷うお客さまに寄り添い、企画から導入、AIソリューション構築、運用・改善までをワンストップで支援します。


AI活用の成否を分けるのは「課題定義力」と「AI技術力」


AIはいま、単なる便利ツールから、処理を手助けするアシスタントへ、さらには業務を担うアソシエート(協力者)へと進化しつつあります。中でも注目されているのは、抽象的な業務目的に沿って適切に複数の処理を取捨選択して組み合わせ、業務の判断や実行を支援するAIエージェントです。世界中の企業でAIエージェントの本格活用が広がる一方、多くの日本企業では現場導入が進んでいない現状があります。

※Gartnerの2026年レポートによると、日本企業におけるAIエージェントの導入はわずか13%との調査報告があります。(Gartner, 2026.1.7,「日本企業のCIOは主権を追求してエージェント型AIを優先させよ」より)

背景にあるのは、AI技術への理解不足だけではありません。これまで状況に応じて人が柔軟に判断してきたことから、実務的な業務処理が個人に委ねられた「暗黙知」になっていることも課題です。現場の複雑な業務にAIを活用するには、「業務の流れと課題は何か」「現場ではどのようにデータを処理しているのか」「既存システムとどのように連携しているのか」「業務の拡張・修正にどのように対応しているのか」といった現状と課題を明確にする「課題定義力」と、その課題のどの部分をどのようなAI技術で解くかを設計する「AI技術力」の両方が欠かせません。

そこで重要になるのが、北米を中心に急速に注目され始めているFDE(Forward Deployed Engineer:顧客密着型提案技術者)です。FDEとは、業種・業務の知見とAI技術の両方を備えて現場に入り込み、顧客と共に業務プロセスをひも解き、暗黙知を明文化し、潜在的な課題を見つけ、その課題を解く適切なAIエージェントを提案し、実装を指揮できる前線の技術者です。あらゆる顧客システムのAI化が一層求められており、東芝は重要な技術戦略として体系的にFDEを強化する取り組みを進めています。

東芝は長年にわたり、製造や社会インフラ、行政、交通、エネルギー、流通など多様な事業領域でお客さまの現場に向き合うとともに、システムインテグレーション(SI)事業を通じて、お客さまの業務やシステムの構築・運用を支援してきました。

さらに、半世紀以上にわたって先進的なAI技術を研究開発し、製品や事業へ応用してきました。近年では、マルチRAGエージェント(Retrieval-Augmented Generation:検索拡張生成)やAIエージェントフレームワーク、フィジカルAIなどの実装研究も進めています。

こうして蓄積してきた業種・業務の現場の勘所とシステムの実装力、AI技術があるからこそ、AIを導入するだけでなく、現場の暗黙知を引き出して使える形にすることまで支援できる――これが東芝の強みです。


社内外の実践経験を通じて開発した東芝流の生成AI活用術


東芝が目指すのは、「やさしく・あたたかなAI」を社会に実装することです。AIを人の仕事を奪う存在としてではなく、人や社会システムを支え、働く人が仕事の本質に向き合える時間を増やすパートナーとして活用していきたいと考えています。

東芝では、全従業員の間でさまざまな生成AI活用法の試行錯誤を重ねています。当初は文書要約や情報検索、アイデアの壁打ちといった身近な用途から始め、業務文書の作成支援や社内ナレッジの検索、ヘルプデスク活用などへと適用範囲を広げてきました。さらに、レガシーソースコードの解析やソフトウェア開発の効率化、調達業務や特許出願の支援など、さまざまな実務業務プロセスを支援する仕組みづくりを進めています。こうした社内での実践を通じて、どの業務のどの箇所でAIが高い効果を発揮するのか、導入設計のどこでつまずくのか、どのように処理を拡張し運用し続けるのかといった導入や運用の勘所を確かめています。

AI活用において私たちが特に重視しているのは、「現場力を高めるAI」と「深刻化する人材不足に備えるAI」という2つの視点です。前者は、定型作業や情報探索にかかる時間を減らし、判断や創造といった人が担うべき本質的な業務に集中できる環境をつくること。後者は、熟練者の暗黙知やノウハウを可視化・明文化し、AIの力を借りて次世代にその知見を確実に遺しつなげることです。

前述した技術力や業務理解、さらには東芝自らの実践ノウハウを基に、この2つのテーマを具体的な業務変革へ結び付けるために生み出した「システムとしてのAI活用術」が、東芝の生成AIマネージドサービス「SaborBrain(サボーブレイン)」です。


AIの活用検討から導入・構築、運用・改善までをワンストップで支援


SaborBrain(サボーブレイン)は、「Smart use of AI in Business and Organizations is enabled by a Brain trust.」の頭文字から名付けています。「お客さまのビジネスや組織活動におけるAIの賢い活用術を、東芝が右腕(ブレーン)として支えます」という想いを込めました。またSabor(サボー)は、スペイン語で「味わいのある」「センスの良い」「気の利いた」といった意味を持ち、AIをそのように使ってほしいというニュアンスも込めています。

そんなSaborBrainの特長は、AIエージェントをはじめとするAI活用企画・検討から導入・構築、運用までを一貫して支援できることです(図1)。

まず導入検討(企画)の段階では、お客さまの目標と現状の業務プロセスを明確化し、業務課題を洗い出し、AIエージェントをはじめとするAI技術を業務プロセスのどこにどのように適用するかを整理します。またフィージビリティスタディ(実現可能性調査)やPoCの環境を構築し、AI活用の有効性や技術的な実現性の検証に伴走します。

次に本番導入の段階では、課題を解決するAIエージェントやRAGなどを含めたAIソリューションの開発と、AIが扱うデータの収集・整備・変換・配置の設計と開発を行います。さらに実行IT環境の設計と構築、既存システムとの連携開発なども行います。最後に運用の段階では、AIソリューション実行環境の運用や保守、利用状況の確認、さらには業務や環境の変化に応じたAIエージェントの処理の見直しや拡張、保守と管理、AI出力の精度改善などを継続的に支援します。

業務は固定されたものではありません。組織や制度の変更、製品やサービスの変化などによって、業務プロセスや必要なデータも変わります。だからこそ、AIも導入時の状態のまま使い続けるのではなく、環境の変化に合わせて育てていく必要があります。SaborBrainでは、お客さまの将来的な業務環境の変化に柔軟に追随できるAIソリューションを企画・導入段階から見据え、保守・拡張しやすい仕組みをシステムとして提供します。あわせて、変化する現場に応じたAIエージェントの構築・保守を継続的に支援します。


AIソリューションの実装と活用を支えるSaborBrainの2つの柱


お客さまの複雑な現場業務に対して最適なAI活用方法を提案し、構築、導入したAIソリューションを継続して使い続けていただくために、SaborBrainは「2つの柱」となるアセットを備えています(図2)。

1つは、AIエージェント導入メソッド「SaborAIdea(サボーアイデア)」です。お客さまの業務プロセスを明確化し、業務課題を洗い出し、どこにどのようなAI技術・AIエージェントを活用するかを分析し、定義し、明文化(視覚化)するためのメソッドをまとめています。もう1つは、技術アセットの「SaborBrainファウンデーション・マップ」です。SaborAIdeaで定義したAI活用箇所を各種AI技術で実装し、必要なデータセットを整備し、安全に動作させるIT環境と、実装したAIエージェントをはじめとするAIソリューションを将来にわたって拡張・保守し続ける運用環境を提供します。

AIの導入にあたりまず重要になるのは、現場のいまの業務プロセスとその課題を整理し、AIをどこに適用すべきなのか、そのポイントを正しく見極めることです。この分析・設計プロセスを支えるメソッドが、SaborAIdeaです。

SaborAIdeaでは、お客さまの「現在の業務プロセス」を起点にして現状の業務の流れや関係者、データを可視化し、その中の潜在的な課題を、お客さまとの対話を繰り返して抽出し、AI化による変化を明文化(視覚化)します。どんなに優れた技術があっても、それを業務課題の解決に結び付けられるとは限りません。だからこそ、導入検討の段階で、現場の業務プロセスや判断の流れを丁寧にひも解くことが重要となります。

そのステップは5つに分けられます。最初の「Define」では、どの業務プロセスで、誰が、どのような効果を得たいのか(効率化、省力化、自動化など)を定義します。次の「Focus」では、お客さまへのヒアリングを通じて現状の業務の流れや関係者、扱うデータを明らかにし、そのプロセスに潜在する課題やボトルネックを洗い出します。東芝独自の手法「知識ばらし」も用いることで、熟練者が長年の経験で培ってきたその場の判断基準やノウハウも体系的に整理し、なぜこの部分でこの判断・処理が必要なのかといった知識を構造化して現在の業務の流れを明文化(視覚化)します。

続く「Analyze」では、現状の業務の流れや課題箇所を基に、AI(AIエージェント)に置き換える候補を明確化します。そしてAI化により業務プロセスがどのように変化するのか、その結果として違和感や支障が生じないかを検討し、AI化すべき処理内容(AIタスク)を決定します。合わせて、AIタスクの実行に必要な業務関連データを整理します。ここでは、時間の経過とともに変わる可能性のある、業務の流れや中身、組織、さらに深まる知見などを、変化するタイミング、いわゆる時間軸を含めて明確にしておくことも重要です。

「Create」では、個々のAIタスクを実装します。AIタスクは、処理の流れを制御するオーケストレーションの役割を担う「ワークフローコンポーネント」と、個々の具体的な処理を実現する「カスタムエージェント」に分け、将来の拡張性を担保できる形で実装します。またAIタスクが扱うデータの整備もこのステップで行います。社内のシステムやデータに安全にアクセスする仕組みを実装し、もしデータの形式変換や整備が必要な場合にはそれらを事前処理として実装します。最後の「Evaluate」では、試験的な活用や実利用を通じて、AIタスクの処理内容や出力、新しい業務の流れや課題の解決度などを評価し、個別にAIタスクをチューニングします。

SaborAIdeaで整理した業務課題やAIタスクを、実際のAIエージェントとして形にするための技術アセットが、「SaborBrainファウンデーション・マップ」です。AIエージェントの実装には、さまざまなAI技術はもちろんのこと、AIが扱うためのデータの整備や、社内のシステムやデータに安全にアクセスし活用する技術が必要になります。またAIエージェントを利用者のアクセス権限に応じて安全に動作させるためのセキュリティ技術や、AIエージェントの拡張・保守を将来にわたってサポートするIT基盤技術も必要です。これらを支えるため、世の中のAI標準技術と東芝独自の技術を組み合わせて取りそろえ、「AI Platform」「Data Hub」「Infrastructure」の三層からなる生成AI標準活用基盤として整備し、提供しています。さらにAnalyzeで決定したAIタスクを1~2週間で実装して検証したいといった要望に応えるため、広く普及しているOSS(Open Source Software)版ノーコードツールをSaborBrainファウンデーション・マップ上で利用できるようにしています。これにより、迅速にプロトタイプを実装して検証することも可能です。実際に約2か月でPoCを終え、本格導入となった事例もあります。

Analyzeでは、将来起こり得る業務変化の課題も整理します。SaborBrainファウンデーション・マップは、そのような変化にも対応できるよう、拡張性と保守性を見越したリファレンスアーキテクチャーとして整備しています。例えば、AIエージェントを運用する中で一部のAIタスクの組み替えが必要になった場合や、全体の流れや個々の業務の中身を変える必要が生じた場合でも、必要な部分だけを切り出し、新たなAIタスクと組み換え、そのAIタスクを管理する仕組みを備えています。Data Hubでは、MCP(Model Context Protocol)の仕組みによって、将来のデータ拡張にも対応します。


AI活用の定着を支える構築力と改善サイクル


AIタスクは、お客さまの実際の業務の流れに合わせるための微修正が必ず発生します。そこで、DefineからAnalyzeのステップでしっかりと業務を分析し課題を明確化したのち、その内容をいち早くAIタスクに置き換えて効果を検証し、改善する。この検証と改善のサイクルを従来のSI開発よりも劇的に速く回すことが、AIエージェントをはじめとするAIソリューションの提案と構築では極めて重要になります。加えて、AIタスクはお客さま社内の各種情報システムや業務データを駆使する必要があるため、これらのシステムやデータに安全にアクセスし、AIエージェントとして実装する構築力と信頼性が必要です。東芝には、長くお客さまの業務や業種に寄り添ったシステムを構築してきた実績があり、安心・安全にAIソリューションの構築をお任せいただけます(図3)。

このように、SaborAIdeaによって現場の課題を洗い出してAIが担うタスクへ落とし込み、さらにはどのタイミングで何がどう変わっていくかという時間軸まで含めた分析を行います。その分析結果に基づきSaborBrainファウンデーション・マップを用いてAIエージェントを構築します。こうして、業務の変化にも対応でき、現場で長く実践活用が可能なAIソリューションの実現につなげています。またSaborBrainファウンデーション・マップの各構成要素も、AI技術やIT環境の変化に応じて継続的に拡充していきます。


AI活用を現場の価値へ、そして未来へ


AIツールを導入さえすれば、自動的に業務が改善し、会社が成長するという考え方は危険です。AIは道具であり、AIを使うことが企業成長の目的になっていては本末転倒です。企業の業務遂行と将来の成長に不可欠なことは、現場の業務とその課題(困りごと)をひも解いて明確にし、AIを道具として最大限に活用して課題を解くこと。それとともに、働き方を変革して働く人の力を引き出し、事業を進化させていくことです。これらの積み重ねが、企業の持続的な成長と将来の社会へとつながるのです。

現場で価値あるAIエージェントをはじめとするAIソリューションを設計・実装・構築・運用するには、業種・業務の理解とAI技術の両面の知見から課題を深掘りすることが欠かせません。東芝は長年にわたり、製造や社会インフラ、行政、交通、エネルギー、流通などの現場で培ってきた知見があるからこそ、現場に寄り添い、課題の明確化からAIの実装、運用までを、お客さまと共に進められると考えています。あらゆる企業でAI活用が必須となるいま、東芝は生成AIマネージドサービス「SaborBrain(サボーブレイン)」をフル活用し、お客さまの価値創出を支えるとともに、「やさしく・あたたかなAI」の社会実装を目指していきます。

生成AIマネージドサービス「SaborBrain」の推進メンバー
(左から)阿部 一彦,園尾 聡

  • この記事に掲載の、社名、部署名、役職名などは、2026年8月現在のものです。
  • この記事に記載されている社名および商品名は、それぞれ各社が商標または登録商標として使用している場合があります。

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