デジタルで豊かな社会の実現を目指す東芝デジタルソリューションズグループの
最新のデジタル技術とソリューションをお届けします。

検索ヒット率の向上と問い合わせ業務の効率化を実現するシナリオレス型AIチャットボット

24時間365日、均一な応対品質で利用者への応答を自動で行えるチャットボット。利用者が自己解決できたり、ヘルプデスクなどでオペレーターの負荷軽減や業務効率化が行えたりするなどの理由から、企業においてチャットボットの導入が加速しています。しかし、従来のチャットボットには「システムの導入に手間がかかる」「検索のヒット率が低い」「メンテナンスが大変」といった課題があり、有効に活用することが困難でした。東芝デジタルソリューションズが提供する「コメンドリ」は、シナリオと呼ばれる、通常のチャットボットであらかじめ登録を必要とする会話の道筋の登録が不要です。質問と回答が記載されたFAQ集を登録するだけで運用が開始でき、AIと対話しながら求める回答へと利用者を導く、シナリオレス型AIチャットボットサービスです。ヘルプデスクなどの運営全体のコストを抑えつつ、顧客へのサービスの向上と社内の業務改善につなげます。ここでは、東芝が50年以上にわたり培ってきた独自のAI技術を活用したコメンドリの特長と、生成AIの活用による機能強化に向けた取り組みについてご紹介します。


「一問一答/AI型」「シナリオ型」チャットボットの長所と短所


近年、顧客サービスの向上や業務の効率化に向けて、多くの企業でチャットボットが活用されています。その動きはコロナ禍を経てさらに加速していますが、チャットボットを有効に活用するためには、その導入と運用に課題が残されています。

チャットボットは、主に「一問一答/AI型」と「シナリオ型(ルールベース型)」の2つに分類され、そのどちらにも一長一短があります。

一問一答/AI型は、チャットに入力された利用者からの質問に対し、チャットボットが「想定問答(FAQ:Frequently Asked Questions)集」を基に回答を返す仕組みです。事前にFAQ集の登録を必要とし、そこには想定されるさまざまなQAを登録することで、幅広い問い合わせへの対応を実現します。しかし、利用者が入力した質問とFAQ集の語句が異なるときには、検索した質問がヒットせずに回答を得られないことが度々起こります。検索のヒット率(精度)を高めるためには、FAQ集の中にある語句と同様の意味を持つ語句を、言い換え辞書あるいは同義語辞書として用意する必要があり、その準備には大変な手間がかかります。AIが搭載されている場合はヒット率が上がるものの、学習データの準備やツールに関する専門知識が必要になるケースが多く見られます。

一方のシナリオ型は、チャットボットが利用者に選択肢を与えてその中から質問に関連するキーワードを利用者に選択してもらう、というやり取りを繰り返すことで、求める質問の回答まで利用者を導く仕組みです。事前に、FAQ集と、回答にたどり着くまでの道筋となるシナリオ(フロー)の準備が必要となります。例えば、「電子レンジのアースを取り付けたい」と考えている利用者に対して、最初に、キッチン家電なのか生活家電なのかなどの分類を、次に、冷蔵庫なのか電子レンジなのかといった製品を、そして具体的に何をしたいのかを、選択肢を用いて徐々に絞り込ませることで、回答まで導きます(図1)。多くの利用者が回答にたどり着けるように、回答に向かうさまざまなフローを想定して設計する必要があり、また、FAQ集を更新した際には、それにあわせてフローも更新しなければなりません。シナリオ型は、利用者が選択して絞り込んでいくため正確な回答を得られやすい反面、準備されたフローによることから回答が限られてしまう特徴があります。

このように従来のチャットボットには、システム導入のための作業や運用中のメンテナンスの効率化と、利用者の求めに応じた正確な回答へのヒット率の向上に課題がありました。


問い合わせ業務を変革するシナリオレス型AIチャットボットサービス


東芝デジタルソリューションズは、2020年10月から、当時業界初※1となるシナリオレス型のAIチャットボットサービス「コメンドリ」をSaaS型で提供しています。これは、一問一答/AI型とシナリオ型の長所を継承して短所を克服したサービスです。東芝には、長年にわたり研究開発を続けてきた自然言語処理技術があり、それらを生かした独自の対話技術をコメンドリに活用しています。

※1:2020年10月、東芝デジタルソリューションズ調べ

コメンドリは、FAQ集を登録するだけで、利用者と当社独自のAIオペレーターとの対話により、利用者を素早く求める回答に導くチャットボット(AIチャットボット)です。東芝独自のAI技術によって、FAQ集からの重要なキーワードの学習や、利用者からの質問に対する言い換え表現の理解、あいまいな質問から動的に推定したサジェストキーワード(東芝独自のAIが自動的に提案する、さらなる検索キーワードの候補)による利用者との対話を実現しています。利用者の質問に合致する回答の候補が多い場合でも、シナリオ型のような対話を、サジェストキーワードを用いて行い候補を絞り込めることで、より高いヒット率で回答を得られるとともに、大きな負担となっていたシナリオの準備やメンテナンスが不要となりました。

前述した「電子レンジのアースを取り付けたい」という例で説明します。例えば、利用者が「アース」と入力すると、コメンドリから「付け方ですか?」「取り方ですか?」「役割ですか?」のような形で回答に導くためのサジェストキーワードを推定して提示します。サジェストキーワードに対する利用者の選択に応じて、「洗濯機ですか?」「電子レンジですか?」など新たなサジェストキーワードによる対話が続けられ、利用者はスムーズに求める回答にたどり着きます(図2)。

また一問一答/AI型のような、言い換え辞書の準備も必要ありません。コメンドリでは、ウェブから取集した約6.5億文(約70万単語)のデータを、ディープラーニング(深層学習)を用いて学習しています。この東芝独自のAIモデルにより、あいまいな表現や言い換え表現を自動で理解した上で検索を行い、ヒット率を高めています。導入される企業の業界で専門的に利用されている用語は、独自用語辞書として準備し、学習させることも可能です。これらにより、例えば、利用者が「住宅ローンの利率を教えて」と質問し、FAQ集に同じ表現がない場合には、質問の意図に応じた言い換え表現をコメンドリが理解して「住宅ローンの金利ですね?」と確認します。さらにこのとき、サジェストキーワードを推定して「固定ですか?変動ですか?」といった問いも行うことで、より効率的に利用者が求める回答へと導きます。

このほかにも、コメンドリでは検索のヒット率を高める工夫をしています。利用者は、検索したいカテゴリーを選択してから質問することもできますが、検索した際に、選択したカテゴリー内から求めるQAが見つからないこともあります。その場合には、自動的に、検索する範囲をすべてのカテゴリーに切り替えて検索するため、異なるカテゴリーにあるQAにも気づくことができます。これは、利用者によるカテゴリーの選択の間違いや、運用管理者によるFAQ集のメンテナンスなどにおいて役立つ機能です。さらに、利用者が求める回答を得られなかった場合には、コメンドリの画面から手軽に運用管理者にエスカレーションするなど、迅速な解決につなげる機能も搭載しています。

コメンドリは、すでに多くの企業に導入いただき、顧客サービスの向上や問い合わせ業務の効率化、運営全体のコスト削減、運用メンテナンスの負担軽減を実現しています。例えば、三井住友海上火災保険株式会社では、保険会社にとって新しいビジネスとなる補償前後のサービスに関するウェブサイトでの問い合わせ窓口にコメンドリを採用されました。短期間かつ低コストで導入できた今回の新しいサービスは、同社のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進における好事例になったと評価いただいています。また、運用の手間と負担の軽減により、日々変化する顧客からの質問内容に応じて柔軟にFAQ集の改善を行えるなど、よりよい環境づくりに大きく貢献しています。多くの顧客からの保険に関する複雑な問い合わせに対して、顧客を待たせない迅速さと的確な回答で顧客満足度の向上に寄与すること、さらには、重要なパートナーである代理店に向けたサポートを強化、充実させるツールとしての効果が期待されています。

※三井住友海上火災保険株式会社の導入事例はこちらで詳しく紹介しています。


生成AIを活用した新しいサービスへの取り組み


ここまで、コメンドリの特長や効果、代表的な事例を紹介しました。チャットボットの導入にあたっては、FAQ集を作成したり更新したりする作業の負担に課題を持たれている企業も多いと思います。そこで当社では、「FAQ集」に着目した新しいサービスの開発に取り組んでいます。これは、生成AIを活用したサービスです。

OpenAIが開発したChatGPTという、生成AIサービスがあります。ChatGPTは、画面に質問を入力すると、自然な文章で回答をまとめてくれる大変便利なツールです。しかしその一方で、最新の情報や個別の情報に関する回答の正確性や、機密情報や著作権の取り扱いなどに課題があるといわれています。当社はこれらの課題に対応するため、OpenAIの技術をベースにMicrosoftが提供している「Azure OpenAI Service」を利用して高い安全性を確保し、さらに導入されるお客さまごとに独立した環境を準備するという、万全のセキュリティ対策を施した上で生成AIの活用を進めています。

※生成AIの基盤である大規模言語モデル(LLM)に関する当社の取り組みを、こちらで説明しています。

新しく開発しているサービスは、2つあります。いずれも既存のドキュメントを生かしたサービスで、ドキュメントからFAQ集を生成するサービスと、FAQ集の代わりにドキュメント内を検索して質問に対する回答を生成するサービスです。現在、PoC(Proof of Concept)を行い、2024年春の提供を目指しています。

1つ目のFAQ集を生成するサービスは、指定されたドキュメントから、想定される質問とそれに対する回答を独自のアセット群を介して生成AIで生成し、FAQ集のたたき台としてExcel形式で出力するものです。各アセットによって、ドキュメントの構造を解析したり、生成AIが生成したQAのマージやコンペアなどを行ったりすることで、より精度の高いFAQ集となるように工夫を施しました。出力された結果を運用管理者が確認し、正確性の高いFAQ集へと仕上げます。後は、完成したFAQ集をコメンドリに登録することでスムーズに運用が開始できるため、チャットボットの導入や運用中に発生するQAの追加や更新にかかる負担を大きく軽減できます(図3)。

2つ目のドキュメントを検索するサービスは、お客さまの社内での活用に役立ちます。規定やマニュアルといった既存のドキュメントをコメンドリに登録することで、利用者からの質問に対して生成AIがドキュメントから該当する箇所を検索して簡潔にまとめ、わかりやすい言葉で回答するものです。回答と同一画面に、出典元であるドキュメントの抜粋とリンクが提示され、検索キーワードがハイライトして表示されます。また、リンクを開くと出典元ドキュメントの該当ページが表示されるため、利用者は情報の正確性や詳細な内容を容易に知ることができます(図4)。

当社では、問い合わせ業務のさらなる効率化、応対スキルの均質化、有識者のノウハウ共有、そして業務DXに向けて、現在は人手を介して行っているFAQ集をメンテナンスする業務の完全自動化を目指しています。チャットボットにQAの追加や更新をする機能を持たせる目標を掲げ、ソリューション開発に取り組んでいます。これからも、AIチャットボットの精度向上と機能強化でサービスを進化させ、お客さまの業務DXに貢献していきます。

  • この記事に掲載の、社名、部署名、役職名などは、2024年2月現在のものです。
  • この記事に記載されている社名および商品名は、それぞれ各社が商標または登録商標として使用している場合があります。

>> 関連情報

関連記事

連載:生成AI最前線!技術のポイントから、ビジネス活用、そして未来に向けた展望を解説(連載記事一覧