迅速な導入・運用を可能にし、顧客体験の向上を実現する
シナリオレス型AIチャットボットサービス「コメンドリ®

 MS&ADインシュアランス グループの中核である損害保険事業を担う三井住友海上火災保険株式会社。長年の実績に基づく従来の保険だけでなく、新たに補償前後のリスクに対応したソリューションの提供に向けた環境づくりを進めている。この新サービスの問い合わせ窓口としてホームページにAIチャットボットの導入を決断した。コールセンターの新規立ち上げのコストと運用負担を大きく軽減するAIチャットボットに選ばれたのが、東芝デジタルソリューションズ(以下、東芝)が提供するシナリオレス型AIチャットボットサービス「コメンドリ®」だ。


Before

新たにリリースする補償前後のソリューションの問い合わせ対応システムに、AIチャットボットの導入を検討。投資と運用負担が大きいコールセンターではなく、コストを抑えつつ高品質なサービスを提供することで、顧客体験の向上を目指した最適な対応基盤づくりを検討していた。また、新規事業ということもあり、スピーディーに導入できるアジャイルな基盤を希望していた。

After

お客様をお待たせしない迅速で的確な回答により、顧客満足度の向上に寄与し、さらに代理店業務を強力にサポートするツールとしても期待されている。チャットボット導入時に手間のかかるシナリオ作成やテストが不要で、追加のFAQをアップロードするだけで日々改善、運用できるため、運用の手間と負担が大幅に軽減する環境づくりを実現した。

提供価値の変革に向けて、補償前後のソリューションを展開


 三井住友海上では、「グローバルな保険・金融サービス事業を通じて、安心と安全を提供し、活力ある社会の発展と地球の健やかな未来を支えます」をミッションに、国内事業のみならず、世界トップクラスの海外ネットワークを誇っている。

 同社では、DXを推進する中で、社内でデジタル人材を育成し、新たなビジネス展開を進めてきた。その取り組みのひとつとして、保険本来の機能に加えて、「補償前後の価値」を創造し、提供することを掲げている。補償前後の価値とは、事故・災害による被害を未然に防ぐこと、事故発生後の早期回復を支援することだ。これらを補償前後のソリューションとして新たに提供するサービスを検討してきた。

 この補償前後のソリューションをはじめとした、新たなビジネス領域での事業拡大を同社で強力に進めているのが、ビジネスイノベーション部(2023年4月よりビジネスデザイン部)だ。

コールセンターに代わる顧客対応を担うAIチャットボットに注目


ビジネスイノベーション部 データサイエンスチーム長
和食 昌史氏

 新たな補償前後のソリューションの導入を進めるなかで検討課題に上ったのが、お客様からの問い合わせ対応の手法だった。コールセンター運営の経験を持つビジネスイノベーション部 データサイエンスチーム長 和食(わじき) 昌史氏は他のアプローチを考えていた。「コールセンターの設置、運営には人件費をはじめ膨大なコストと時間がかかります。また、対応履歴の管理システムや応答用機器の設置など、基盤づくりの負荷も非常に大きい」と和食氏。

 補償前後のソリューションは、新たな領域のビジネスであり、リスク回避の観点からも当初から大規模な設備投資は避けたいという思いがあった。「お客さまには、ホームページなどでしっかり、わかりやすく情報をご提供した上で、ご不明点があれば問合せをいただくという流れを前提に、コールセンターとは異なる方法で対応できる環境作りを進めたいと考えました」と和食氏。事業を短期間で軌道に乗せるためにも、スモールスタートでスピード感を持って進めることを望んだという。

 そこで、検討したのが、AIチャットボットだった。顧客サービスの品質を落とさずに、導入コストやスピード面でも優れていると見込んだのだ。「当社ではすでに複数のAIチャットボットサービスを利用しています。保険は事務手続きなどが複雑なので、質問に対して的確に応えてくれるAIチャットボットのメリットは私たちもよく理解していました」と和食氏。

 こうして2022年10月に検討を開始してから、2023年1月にはコメンドリの導入決定、2023年4月の運用開始というスピード導入が実現した。

シナリオレスならではの導入の簡単さと直感的に使えるUI


 同社で利用しているAIチャットボットはいくつかあるものの、社内システムにカスタマイズされて組み込まれているものが多かった。できれば自分たちでゼロからコントロールできるものがほしいと考えていた和食氏。また、お客様が利用する際にマニュアルを読まなくても直感的で使いやすいUI(ユーザーインターフェース)であることを重視し、いくつかのチャットボットを検討した。

 最近はチャットGPTが話題だが、自分たちが用意した独自のFAQやマニュアル、サービス約款など正規の情報を読み込んだ上で学習して対応できるツールでなければ、自社サービスに適用することは難しい。「超短期間で構築でき、自分たちで確実かつ安全にコントロールできるものを探していました。」と和食氏。

 そこで注目したのが、東芝が提供するシナリオレス型AIチャットボットサービス「コメンドリ」だった。「直感的に利用できるコメンドリはとても使いやすい印象でした」と語るのは、同部 データサイエンスチーム 課長代理 棚橋 和紀氏だ。

 また、和食氏は、すでに同社で利用中の他のAIチャットボットでは、シナリオ作りからテストに相当な手間と時間がかかっていることを知り懸念を強めていた。「シナリオを作り込む必要がなく、FAQを取り込むことで活用できるコメンドリは、短期間での運用開始を希望していた我々にとっては最適でした」と評価する。お客様が入力したあいまいな用語をコメンドリ内で的確に言い換え理解し、必要な情報に導いてくれる、といった高い機能にも注目した。また費用面でもコールセンター設置という大きな投資をせず導入できる点を高く評価したという。

ビジネスイノベーション部 データサイエンスチーム 課長代理
棚橋 和紀氏

 その結果、新たに展開する補償前後のソリューションにおいて、コールセンターに代わる問い合わせ窓口の仕組みとして、東芝のシナリオレス型AIチャットボットサービス「コメンドリ」が選ばれることとなった。

顧客満足度の向上や代理店へのサポート強化に期待


 2023年3月時点で、4月からの正式リリースに向けて補償前後のソリューションとして当初展開する13のサービス全ての問い合わせに対応できるよう、300ほどのFAQを学習させている。「今はまだFAQの数は少ないのですが、実際に運用開始後に問い合わせが増えてくるでしょう。その都度、FAQを追加しながら日々柔軟に改善、運用していきたいと考えています」と和食氏。「コールセンターになかなか電話が繋がらない、回答に時間がかかる、自分が伝えたいことをうまく伝えられない、といった体験をした方も多いのではないでしょうか。その点でも、使いやすいUIで、うまく説明できなくても的確に回答へ導いてくれるコメンドリであれば、そのようなストレスを軽減することができ、顧客満足度の向上に役立つと期待しています」と棚橋氏は語る。

 さらにソリューションを検討する一般のお客様だけでなく、重要なパートナーである代理店へのサポートを強化、充実させるうえでも役立てられることが期待されている。

 日々の運用としては、追加のFAQファイルをアップロードするだけで済み、新たにシナリオを作成、テストするといった手間が不要なため、運営側としての負担は非常に小さいという。「アップロードすれば新たなナビゲーションが追加でき、日々変わっていく質問内容や項目の追加、改善作業にも負担なく取り組むことができます」と棚橋氏は評価する。チューニングについても、社内のデータサイエンティストが分析し、最適なFAQを作成するという流れが作りやすいと好評だ。

 パートナーである東芝については、問い合わせへの回答が迅速で、バージョンアップの時期や改善内容の情報なども都度連絡があり、改善希望に対しても柔軟に対応してくれているという。「新しいシステムを導入する際は、第三者によるセキュリティ診断がマストなのですが、リリースまで短期間だったので、間に合うか不安でした。セキュリティ診断会社からの要請に東芝さんが迅速にご対応いただいたので、早々に完了しました。その上、診断結果も大変良好で、『さすが東芝さんだ』と安心しました。スピード感ある対応を含め、手厚く支援してくださっているので、とても助かっています」と棚橋氏は評価する。 

DX推進に向けた大きな試金石として今後の進化にも期待


 同社では、これほどの短期間で新サービスの販売体制を整備したのは初めての経験で、まさに社内のDX推進における好事例となった。同社のDXをさらに進めていくための大きな試金石となるのが今回の新サービス、補償前後のソリューションであり、それを下支えするAIチャットボットコメンドリへの期待は高い。「AI技術が搭載されているので、将来的にはお客さまからの問い合わせに対応するだけでなく、最適な保険商品を組み合わせて提案してくれるなど、最新のAIの進化を踏まえた活用範囲の拡大を期待しています」と和食氏。

 損害保険業界におけるDX推進の新たな試みを支えていく東芝のコメンドリは、これからも進化しつつ同社のビジネスに役立っていくことだろう。

SOLUTION FOCUS

シナリオレス型AIチャットボットサービス「コメンドリ®

FAQ集を取り込むだけですぐにチャットボットを利用できるシナリオレス型AIチャットボットサービス「コメンドリ®」。SaaS型サービスのため、短期間での導入が可能となり、シナリオが不要なため、運用・メンテナンスコストを大幅に削減。チャット機能では自社製AIがFAQを絞り込むための最適なキーワードをご提案します。さらに言い換え理解による高い検索ヒット率で、問い合わせ業務の効率化を実現します。


補償前後のソリューション ~提供価値の変革~(三井住友海上火災保険株式会社のページへ遷移します)

この記事の内容は2023年3月に取材した内容を元に構成しています。
記事内における数値データ、社名、組織名、役職などは取材時のものです。

COMPANY PROFILE

会社名
三井住友海上火災保険株式会社

設立
1918年10月

代表者
取締役社長 社長執行役員   舩曵 真一郎(代表取締役)

本社所在地
東京都千代田区神田駿河台3-9

事業内容
損害保険業、他の保険会社の保険業に係る業務の代理または事務の代行、債務の保証、確定拠出年金の運営管理業務、自動車損害賠償保障事業委託業務

URL
https://www.ms-ins.com/