技術者の素顔

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直流送電システムの制御技術 久米 里奈 専攻:電気情報システム工学

送電量の最適化を行う多端子直流送電システムの送電電力制御の開発

近年、地球環境に対して負荷の少ない太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーが大量に導入されています。大規模な太陽光発電や洋上風力発電は需要の多い地域から離れた場所に設置されることが多く、長距離送電に適した直流送電システムが開発されています。さらに、洋上風力発電などは建設場所が分散していることから、近年は3箇所以上に交流と直流を変換する変換器を設置し、直流の電力で接続する多端子直流送電システムも検討されています。多端子直流送電システムのメリットの一つは、これまで主流の2端子直流送電システムと違い、直流送電線の故障時もシステムを停止させないで運転を継続できることです。しかし、これを実現するためには故障した直流送電線を素早く切り離し、残りの健全な区間の変換器が協調して送電量のバランスを調整する制御が必要となります。

私は、多端子直流送電システムにおける送電量の最適化を実現する制御技術を開発しています。その際、実際の電力系統に直流送電システムを接続することはできないため、シミュレーションを利用しています。直流送電システムは変換器や変圧器、送電線など複数の機器から構成されているため、シミュレーション条件を変えると予想もしていなかった現象が発生することもあります。現象の発生要因を特定することは難しく、自分で解決できない場合にはチームメンバーで議論します。対策が必要な場合には、製品部門や技術部門も交えて議論します。多くの人が関わっており、皆で良いものを作り上げようという意気込みを感じます。

入社一年目の時に直流送電システムの一大プロジェクトに携わりました。学生時代は分野の異なる無線通信の研究を行っており、一年目では直流送電の技術をほとんど理解できていなかったため不安もありました。しかし、指導者に教わりながら自分の担当業務を遂行することができました。実際にはプロジェクトのほんの一部分でしたが、私のシミュレーション結果をもとに製品が設計されると聞き、経歴に関係なく重要な仕事を任せてもらえるやりがいのある職場だと感じました。

久米写真

海外市場をターゲットとした案件もあります。国内のメンバーだけでなく現地法人のメンバーとのコミュニケーションも必要になります。英語は決して得意ではないので、会議やメールでうまく伝わらないこともありますが、補足説明などで他のメンバーがサポートしてくれます。社内の研修などを活用して英語のスキル向上にも努めています。

今後、語学力と技術力の両方で海外にも通用するような技術者を目指して取り組んでいきたいと思います。

(2017年12月執筆)

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