技術者の素顔

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高電圧遮断器の大電力技術 橋本 優平 専攻:電気情報工学

開閉現象や事故現象を模擬した遮断器の性能検証技術の開発

私達の生活になくてはならない電気。普段、当たり前のように使っていますが、発電所で作られた電気を家庭やオフィス、工場などに安定して供給するためには送変電機器が必要不可欠となります。私が駐在する浜川崎工場では、送変電機器の中でも変圧器、開閉器、遮断器、避雷器の開発、生産、試験をしています。

私は入社以来、主に遮断器の大電力試験に携わっています。遮断器は、変電所などに設置されるもので、電力系統で短絡電流が流れようとしたときに大電流を遮断するための装置です。家庭内ではブレーカーに相当しますが、浜川崎工場で扱っている遮断器では数万アンペアの大電流を遮断したり、数十万ボルトの高電圧に耐えたりする必要があり、開発・製造には高度な技術が必要なものです。このような遮断器を開発するにあたっては、実際に数万アンペアの大電流を遮断したり、数十万ボルトの高電圧に耐えられるかどうかといった性能を試験する必要があります。遮断器の性能を検証するためには、国内外の規格によってさまざまな試験条件が定められており、また規格以外にも実際に遮断器を運用する場所によって要求される特殊な試験条件があります。そのため、大電流を流すための短絡発電機と呼ばれる特殊な発電機と、高電圧を印加するためのコンデンサバンクを中心としたさまざまな試験装置を組合せ、適切に制御することによって、遮断器が系統上での事故点を遮断する際の電流、電圧を模擬して試験を行っています。

私の学生時代の専攻では電気、電子、情報、制御といった幅広い範囲を学んでいました。入社当時は、学生時代に学んだ知識のうち何割が社会に出て活かせるのだろうか、と疑問に思っていましたが、電気に関する知識は当然として、試験設備を制御するための通信制御や、試験の測定結果を表示するためのプログラムなど、幅広い分野に対する知識が必要になっています。学生時代に学んだことは全て今の仕事に生かされているということを実感しながら、日々の業務に取り組んでいます。

短絡発電機の前で撮影
短絡発電機の前で撮影

入社して3年目のときから6年間、将来の高圧直流送電(HVDC)の実現に向けた直流遮断器の開発プロジェクトに関わっています。私が主に担当をするのは性能を検証する試験方法の研究開発です。世界的にみても、HVDC機器はまだどのような試験方法で検証したら良いかが決まっていないため、いちから考えていく必要があります。大きなシステムとしてのHVDC遮断器の遮断性能を検証する以外にも、個々の要素ごとの性能の検証、特性の取得をどのようにして実現するか研究しています。自分で考えた方法で特性を取得し、設計者と共に結果を考察することで開発が次の段階に進むというのは、とてもやりがいを感じます。

仕事以外では、最近会社の寮からアパートへ引越ししたことをきっかけに、自炊生活を始めました。今はまだネット上にあるレシピをなぞりながら多少のアレンジを加えるだけですが、味付けは自分好みに変えることができるので、毎日の楽しみになってきています。また、仕事終わりに料理をすることによって、仕事とプライベートとの切替えにも一役買っています。

これからも日々の安定した電力供給を支える送変電機器の試験業務に携わり、社会生活に貢献していける技術者でありたいと思います。

(2019年9月執筆)

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