技術者の素顔

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タービンの高効率化と高信頼性を実現する技術 エネルギーの有効利用に貢献 高木 紀和 専攻:機械工学

設計、解析、試験によるタービン技術の開発

私は発電所で使われるタービンの開発に携わっています。タービンは、火力、原子力、地熱などの熱源に関わらず必要になる発電の根幹の製品であり、その高効率化と高信頼性は広くエネルギーの有効利用に貢献します。

エネルギー関係に興味があったため、学生時代は高温で動作する燃料電池に関する研究をしていました。基礎的な内容でしたが、装置の重厚さのわりに得られる出力は小さいものでした。入社したきっかけの一つは、発電設備を扱っている京浜事業所の見学時に、工場に並んでいる製品の出力がとても大きく、これからアジア、アメリカ、ヨーロッパなど、各国に出荷予定のものだと教えられ、インパクトの大きな仕事だと感じたことです。入社してからは、従来タービンの性能向上を目指した開発に加えて、従来とは異なる新しいタイプのタービン開発にも携わることができました。検討を重ね、自分がCADで描いた図面が、実際の製品となり出荷された時には達成感がありました。

会議の様子

仕事のプロセスについて、私が入社してから感じた、学生時代のイメージとのギャップは、機械工学の基礎的な知見を幅広く使うことです。タービンの部品は多岐にわたるので、開発品の形を決めるときには、材料、伝熱、流体、振動、制御などあらゆる観点で評価する必要があります。検討の初期には、教科書に載っている基礎式を使って1次元的にオーダーをあたり、何が問題になりそうかを広く探っていきます。基本形状を決めた後、運転中に想定される複雑な現象を詳しく評価するときには、各分野の専門家に相談することや、大規模な解析を行うこともあります。課題を解決する形状を考えるときには、チーム内で議論したり、論文や特許から他社がどのような解決策を検討しているかも参考にします。こうして、性能向上する形や、より信頼性の高い形を考えていき、製品にして送り出しています。学んできた知見を総動員して、うまく成り立つ形をいかに見つけるかが醍醐味と感じます。

休日には、学生時代から続けているサイクリングをしています。市販の出力計を使うと漕いでいるときの出力を測れるのですが、例えば1kWを出すのはとても大変です。プロ選手でも数十秒しか維持できません。発電所のタービン出力は大きいもので1機100万kWありますから、このエネルギーがいかに大きいかを実感します。

これからも機械工学の基礎に基づきながら課題に取り組み、新しい製品を生み出していきたいと考えています。

(2019年12月執筆)

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