技術者の素顔

技術者の素顔技術者の思いをご紹介

原子力発電設備の構造強度評価技術:原子力発電システムの安全性確保に向けて 仲村 岳 専攻:機械工学

解析と試験による機器・配管系の損傷予測技術の開発

東日本大震災の教訓から、原子力発電所の安全性を確実に確保することが求められています。そのためには、設計時の想定を大きく超える巨大な地震や津波などに対する備えが必要となります。東芝は、原子力発電設備の研究開発で培った技術を発展させ、地震や津波などの過大な外力により生じる原子力発電設備の損傷度合いを高精度に予測する評価技術を開発しています。原子力発電設備は数多くの機器・配管系で構成しており、それらがどのように損傷するのかを知ることができれば、安全性を向上させる対策を立案できます。

私の担当業務は、前述の過大な外力により機器・配管系が大きく変形したり損傷する際の挙動を予測する、構造強度の評価技術の構築と検証です。電力・社会システム技術開発センターが保有する加振台などの実験設備を活用し、評価技術の妥当性を検証しています。特に、動的で大きな荷重を受ける機器・配管系の振動応答には、材料の永久変形やボルト締結部の離反などの非線形性が強く現れます。そのため、設計に利用できる精度を有する評価技術を構築するには、評価に用いる解析モデルの定式化を工夫するだけでなく、実験的な検証を経て解析モデルを改良することが必要です。机上で検討した理論を実験で検証し、評価精度を改善できた時や、構築した手法を実機適用に向けて提案できた時には、その苦労にふさわしい研究開発の醍醐味を感じることができます。

大学では、計算力学分野の研究室に所属し、材料の微視的な構造と巨視的な構造を連成させて構造物全体の動的挙動を高精度に解析する手法の研究や、所定の材料特性を実現するために必要な微視的構造の設計アルゴリズムの研究をしてきました。大学で得られた知識は、試験計画の事前シミュレーションや評価だけでなく、津波による漂流物などの衝突が機器・配管系に与える衝撃荷重の評価技術の構築など、入社してからも技術の幅を広げることに役立っていると感じます。

仲村写真

余暇は、学生のころから続けていたジョギングをすることが多く、社内の他部署と複数チームを組んで競うマラソンリレーに参加するなど楽しんでいます。週末のトレーニングを欠かさないためにも、日頃の体調管理にも気を遣い、積極的に休日を楽しんでいます。

(2017年7月執筆)

「技術者の素顔」のトップへ