技術者の素顔
技術者の素顔技術者の思いをご紹介
理論、試験データを基とする反応モデルで水素処理技術を開発
東日本大震災の教訓から、炉心が重大な損傷を受けるような重大事故の発生時に原子炉格納容器を破損させないための対策が必要とされています。避難時間の確保や、放射性物質の放出抑制など、発電所の安全性をより一層高めるため、当社では金属酸化物との気固反応により水素を酸化し水に変換する方法に着目し、水素処理システムの開発を進めています。
私の担当業務は、前述の水素処理システムに使用可能な金属酸化物の反応挙動を予測するための気固反応モデルの評価です。金属酸化物が格納容器内で想定される様々な水素濃度、温度、圧力において、どのような反応特性を示すかを試験で確認し、理論式を基にモデル化します。こうした反応モデルに基づき実機のガス処理性能を予測するため、反応モデルとしての精度が重要となります。水素処理システムに充填する金属酸化物は、水素処理により細孔内部の構造が逐次変化することや、細孔内に反応生成物が滞留し反応阻害が生じることなど、複雑な現象が生じます。モデル化の研究で難しい点は、こうした複雑な現象をいかに正確にとらえて現象に即したモデル式を立式するかということです。そのため、日々反応試験や分析により反応や細孔構造に関するデータ収集を行い、データに基づき分子レベルで現象を考え理解することに努めています。こうした研究を通じ、反応モデルが実機適用に向けて提案できた時は、努力と苦労に見合う達成感を得ることができます。
反応試験の様子
大学では、分子科学を専門とする研究室に所属し、真空環境下でレーザーアブレーション法により白金代替を目的とした多元素触媒を合成する手法の研究や、合成した触媒分子の反応速度式の研究を行ってきました。大学で得た分子科学に関する知識はもとより、反応解析の技術や、真空装置を設計した経験などが、工学規模の反応器設計や反応評価に役立っていると感じています。
勤務している職場は同じ業務に従事するメンバとの情報交換もしやすく、分からないことがあれば部門を超えて相談できる環境が整っています。
余暇はジョギングやロードサイクル等の運動や、学生のころから続けているスキー(夏場はイメトレ)やゴルフの練習を通じてリフレッシュしています。また、最近は健康管理や家族に料理を振舞うため、色々なジャンルの料理作りを楽しんでいます。
(2020年12月執筆)