技術者の素顔

技術者の素顔技術者の思いをご紹介

発電プラント機器の伝熱流動評価技術:ただ造るのではなく、より良い製品にするために 竹山 大基 専攻:機械工学

熱流体機器設計の基盤を支える性能予測手法の開発

私の所属部門は、発電プラントの構成機器開発に関わる伝熱流動技術の担当です。機器開発と一言で言っても、熱伝導、熱伝達、圧力損失などの基本的な性能評価から、沸騰/凝縮熱伝達率向上によるシステム高効率化、有機媒体を使った低温熱回収サイクル構築、発電プラントの安全性向上まで業務内容は多岐にわたります。高効率化、低コスト化、安全性向上と目的は様々ですが、付加価値の高いより良い製品にしようとメンバー全員が日々開発しています。そんな研究を支えるのが伝熱流動評価技術です。開発する機器は担う役割ごとに特徴的な形状をしており、作動媒体や運転条件も大きく異なります。これらを発電プラントごとに特化させて最適化するには、精度よく性能を予測できる評価手法が必要です。

私は原子力プラントの安全性向上設備を担当しており、相変化を伴うフィン付き加熱流路や化学反応を伴う充填層流路向けの伝熱流動評価手法を研究しています。課題抽出から、計画立案、解決方法の理論仮説、解析や試験、結果の考察まで全て自分で行います。必要性に合わせて新しい解析技術やプログラミング技術を習得しますし、試験装置の設計/試作も行います。評価では実規模サイズを模擬することが多く、試験装置は商業用ボイラーや内容積40m3の圧力容器、3mを超える加熱流路などの大型設備を使って構築します。これらのプロセスは多くの困難を伴い、一朝一夕には克服できないうえ、克服しても自分の仮説が実証できるとは限りません。だからこそ、やりがいのある作業となり、試行錯誤の末に自分の仮説が裏付けられたときの達成感はひとしおで、更に良いものにしようというモチベーションにつながります。

エネルギーシステム工学分野を専攻しながら、大学でもプログラミングと試験を併用して熱交換器を研究しました。どちらも拙い出来栄えでしたが、初めて自分でゼロから作り上げました。エラー文ばかり表示していたプログラムが美しい数字の羅列を吐き出した時、試験条件すら満たせなかった試験装置が理想的な定常状態に達した時、試験結果と計算結果が良好に一致した時の喜びは忘れられず、研究開発職を志望する理由になりました。

研究開発業務には閉鎖的なイメージがあるかもしれませんが、社外活動も積極的に行っています。複数の学会および研究会に所属しており、様々な技術分野の方と知り合うことも、日常では知り得ない意見や情報に接することもよくあります。また、学会発表の機会も多く、世界中の研究者と交流することで、自身の研究における欠点や粗を発見でき、技術の幅を広げられます。なにより、人前で研究成果を発表することは、それだけで大きな達成感をもたらします。

チームで協力して業務を分担するため、個々人の理想的なバランスで休暇も取りやすく、私は仕事も生活も優先できています。生まれたばかりの息子と真剣に遊ぶと、休暇を取ってもかなり疲れてしまいますが、仕事のことを気にせずに気兼ねなく過ごせるので良い気分転換になり、休み明けにはメリハリをつけて仕事に集中できる好循環が生まれています。

竹山写真

エネルギーシステム技術開発センターでは、機械、材料、化学、電気など様々な工学分野のエンジニア達が、より良いものを造るために技術を磨いており、私の職場にも見本とすべき上司や先輩、ともに切磋琢磨し合える同期や後輩が多数揃っています。そんなメンバーから私も頼ってもらえるエンジニアになれるよう、これからも頑張っていきます。

(2019年9月執筆)

「技術者の素顔」のトップへ