技術者の素顔

技術者の素顔技術者の思いをご紹介

加速器・ビーム技術 佐古 貴行 専攻:物理学

理論構築から解析、設計、試験までの一貫した加速器の開発

自然科学の発展と共に加速器と呼ばれるイオンや電子等のビームを生成、加速する装置が発展してきました。最先端の素粒子や原子核等の研究に用いられるほか、近年においては重粒子線がん治療装置等の医療分野、加速器で生成した中性子による材料開発など産業応用も進んでいます。さらに新たなエネルギー源として核融合分野でも加速器が応用され始めています。東芝では数多くの加速器関連製品を開発し、研究用・民生用問わず様々な場所で使われています。そのような中で私が担当する業務は新たな加速器の開発です。

業務の内容は多岐に渡ります。大学の先生と議論を重ねながら従来以上のビーム電流値を実現するための加速方式を検討し、自分でプログラミングしたコードでビーム加速の実現性を検証するなど基礎的な研究もあります。一方で、高周波解析により加速器の特性をシミュレーションで検証し、その結果を踏まえて、設計から組立て、調整、運転、計測など実際にビームを加速するために必要な一連の業務も行っています。解析や実験を組み合わせて小型で消費電力が低く、高いビーム品質が得られるような加速器の実現を目指して開発を進めています。これらの業務では電磁気学から機械加工、材料物性など広範な分野の理解が要求されるため勉強の毎日です。なかでも最先端の加速器技術を学ぶため、合計4ヶ月間米国の国立研究所に駐在したことは貴重な機会となりました。様々なトラブルに見舞われながらもビーム試験を行えたことは良い思い出になりました。当時知り合った方々とは今でも交流が続いています。

学生時代は、原子核の構造に関する研究を行っていました。加速器のビームを用いて原子核の構造を調べることで、宇宙で元素が合成されたプロセスの解明の一端を担う研究でした。ビームを使う側と作る側、入社前後で立場は異なりますが、大学で学んだ各分野の学問の知識や実験手法などは今も活きています。

佐古写真

東芝を志望したきっかけは複数の会社を見学する中で、重粒子線がん治療装置を始めとして加速器関連の研究開発を積極的に行っている印象を抱いたからです。実際に入社後も一貫して加速器に関連した業務を中心に担い、国内外の学会発表も積極的に行っています。その意味では入社前にイメージしていた通りですが、一点大きく違うことがありました。それは分野の幅広さです。入社前は全く想像もしていませんでしたが、興味を持った様々な業務に取り組んでいった結果、原子力や核融合などの分野での解析コード開発・実験を行うなど、普段中心に行っている加速器とは全く異なる分野の仕事も経験することになりました。広範な事業領域を持つ企業ならではのことであり、非常に有意義な経験となっています。

余暇には趣味の映画鑑賞や旅行にエネルギーを費やしています。自宅にはシアタールームを構築し、映画やゲームを楽しんでいます。また、普段の土日は全国各地の山や庭園を巡る他、お盆や年末年始などの連休にはハリウッドに映画を見に行ったり、世界一周旅行をしたりなど遊びにも全力を出しています。

これからも社内外の多くの方々と連携しながら加速器やビームの技術の開発を通じて社会に貢献していきたいと思います。

(2019年9月執筆)

「技術者の素顔」のトップへ