近年、物流現場では「⼈⼿が不足している」「保管スペースが足りない」「生産性が低い」といった課題に対する解決策として、保管・入出庫を自動化する様々なソリューションが登場しています。その中の一つの選択肢として、自動倉庫や棚搬送ロボットシステムがあります。しかし、「どのマテハンが自分の現場に合っているのか分からない」とお悩みの方も多いのではないでしょうか。
本記事では、保管・入出庫の自動化を検討している方に向けて、自動倉庫と棚搬送ロボットシステムの特徴・選定時に押さえておきたいポイントをご紹介します。

自動倉庫と棚搬送ロボットシステムとは?

⾃動倉庫と棚搬送ロボットシステムは、保管・⼊出庫を⾃動化する「GTPシステム」の⼀つです。GTP(Goods to person)とは、作業者が歩いて商品を取りに⾏くのではなく、ロボットによって商品を作業者のもとへ運ぶシステムです。作業者が保管棚の間を歩き回って商品を探す時間や労⼒を減らすことができるため、⽣産性・保管効率の向上やピッキングミスの削減が期待できます。

自動倉庫


自動倉庫は固定設備で、シャトルやスタッカークレーンと呼ばれる搬送機器によって、保管された商品を作業者のもとへ搬送する仕組みです。一般的に、商品の取り出しには、コンベアとの接続が必要です。自動倉庫の保管形式には、パレット式とケース式があります。自動倉庫内は人が立ち入らない構造となっています。

棚搬送ロボットシステム


棚搬送ロボットシステムは、AGVやAMRと呼ばれるロボットによって、保管された商品を作業者のもとへ搬送する仕組みです。コンベアなどの固定設備との連結は不要です。一つの棚に様々な荷姿の商品を保管することができます。また、保管エリアに人が立ち入ることも可能な構造となっています。

自動倉庫と棚搬送ロボットシステムの選定ポイント

⾃動倉庫と棚搬送ロボットシステムの導入を検討する際に、押さえておきたいポイントを3つご紹介します。

①将来的に取り扱い荷量が変わる可能性があるか?


⾃動倉庫は固定設備であり、導⼊後にシステム規模を拡張するには大規模な工事が必要となります。したがって、将来的な荷量の変動に対応するには、あらかじめ導⼊時にどの程度のシステム規模にするかをよく考えてから設計する必要があります。
⼀⽅、棚搬送ロボットシステムは⾮固定設備で、棚やロボットを段階的に増設でき、レイアウト変更も容易です。そのため、事業規模の変化に柔軟に対応できます。
このように、設備選定では現在の業務に対応できるかだけでなく、将来の変化にも対応できるかを経営計画と照らして検討することが重要です。

②どのような商品を保管したいか?


⾃動倉庫はパレットやケースなどの定形容器に商品を収納するため、容器に収まらないサイズ・形状の商品は保管できないという特徴があります。複数のサイズ・形状の商品を保管する場合、サイズが大きい商品に合わせた間口の設計が必要になる場合があります。商品サイズによっては、間⼝内に隙間ができてしまい、保管スペースを最⼤限活⽤できない可能性があります。
一方、棚搬送ロボットシステムは間⼝サイズを柔軟に調整できるため、様々なサイズ・形状の商品に合わせた最適な間口を設計することができます。そのため、保管スペースが無駄になりにくいという特徴があります。
将来的にどのような商品をどれだけ保管するかを導⼊時によく検討してから最適なシステムを選びましょう。

③運用を止めないためには?


トラブル発⽣時、どのようにシステムを復旧するかといった運⽤継続⽅法を事前に確認することも、マテハン選定において重要なポイントです。⾃動倉庫は搬送機構(スタッカークレーン、コンベア等)が故障すると全体が停⽌してしまう可能性があります。運⽤を⽌めないために、故障を未然に防ぐ法定の定期点検計画を⽴てることや、トラブル時に迅速な修理ができる保守体制を準備することが⼤切です。
⼀⽅、棚搬送ロボットシステムは各ロボットが独⽴して動作するため、⼀部のロボットが故障しても他のロボットで業務を継続できます。定期点検でトラブルを未然に防ぎつつ、万が一ロボットが故障してしまった場合は、正常なAGVで業務を継続しながら故障機を修理する保守体制を整えましょう。
トラブル発⽣時、どのようにシステムを復旧するかといった運⽤継続⽅法を事前に確認することも、マテハン選定において重要なポイントです。

まとめ

⾃動倉庫と棚搬送ロボットシステムは、物流現場の保管・⼊出庫の効率化を⽀える代表的なGTPシステムです。今回は、その2つの機器を比較しながら、GTPシステムの導入時に押さえておきたい3つの選定ポイントをご紹介しました。

選定のポイント

どのくらいの荷量を保管したいか

どのような商品を保管したいか

トラブル時に運⽤を継続するにはどのような体制が必要か

これらのポイントに加えて、導入後の業務フローや現場での活用方法を事前にしっかりとシミュレーションしておくことが、トラブルを防ぐ鍵となります。現場の特性や将来の成長に柔軟に対応できるよう、現場に合わせた最適なマテハンを選定しましょう。

棚搬送ロボットシステムにご興味のある方はこちら

セキュリティ・自動化システム事業部 物流・郵便ソリューション営業部
執筆:羽飼 彩
監修:杉野 優太
参考文献:湯浅和夫・内田明美子・芝田稔子著『これからの物流を読み解く!』アニモ出版、2025年

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