日本版人的資本経営の成功への道筋​~233社参加の人的資本調査結果からの示唆~


講師:東芝デジタルソリューションズ株式会社
   ICTデジタルソリューション事業部
   HRMソリューション部 技術担当
   スペシャリスト 山口 真良

Generalistの日セミナー 講演のレポートです。

日本企業が持続的な成長を遂げるためには、人的資本経営の重要性がますます高まっています。人的資本経営は、企業の人材価値を最大化し、企業価値を向上させる経営手法です。本レポートでは、日本版人的資本経営の成功への道筋について、具体的な施策を事例を交えながら解説します。

1.人的資本経営の目指す姿


日本企業が持続的な成長を遂げるためには、人的資本経営 の重要性がますます高まっています。人的資本経営は、企業の人材価値を最大化し、企業価値を向上させる経営手法です。ここでは、日本版人的資本経営の成功への道筋について、具体的な施策と事例についてご紹介します。 

人的資本経営の目指す姿  人的資本経営の目指す姿は、人財の価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上につなげることです。具体的には、デジタル技術を活用して現状の人財の「見える化」を実施し、その情報に基づいて人事戦略を立案し、行動に移すことが求められます。また、「人的資本情報」の開示により、マーケットに自社の持つ企業価値をアピールし、魅力あふれる企業へと成長することが期待されます。 

人的資本調査2023の結果


HR総研、一般社団法人HRテクノロジーコンソーシアム、MS&ADインターリスク総研株式会社が共同で人的資本経営と開示に関する「人的資本調査2023」を2023年9月~12月にて実施しました。当社は本調査に協賛いたしました。

本調査では、経営トップと従業員の領域での取り組みが進んでいることが明らかになりました。経営トップと従業員の領域は取組がすすんだという回答が多く、方針を実行していくための具体的な取組はこれからという回答は以下の通りとなります。

 

人材ポートフォリオの実現に向けて乗り越えるべきハードル


人的資本経営を成功させるためには、人財ポートフォリオの実現が不可欠です。これには、現状の人財の把握と経営戦略に基づく目指すべき姿のギャップを明確にすることが重要です。具体的には、以下のステップが必要です。

 ●人財像の定義:事業ポートフォリオから必要となる役割と求められるスキルを明確にする
 ●対象スコープの設定:全従業員が対象か、グループ会社や海外も含めるのかを決定する
 ●事業部門への浸透:事業部門や現場への浸透を図る


データ分析基盤の重要性

人的資本経営を支えるためには、データ分析基盤の構築が不可欠です。データの散逸や集約先の確保、変更への追随など、データ管理における課題を克服するためには、以下のポイントが重要です。
  ・データの散逸防止: 複数システムを利用する場合でも、データの一元管理を目指す

  ・データの集約先の確保: マルチカンパニーや履歴データを取り扱える基盤を構築する

  ・変更への追随: 新しい会社やデータの追加に柔軟に対応できる基盤を整備する

 

まずは何から始めるべきか

企業が人的資本経営を実践するためには、まず何から始めるべきかを明確にすることが重要です。ISO30414が存在するものの、その普及度はまだ十分ではありません。人的資本経営に関する主要11項目について、現場の意識は高まっているものの、後継者の定量的管理など、まだまだ改善の余地があります。システム化としては半分の項目で追いついていない現状があります。

 

日本企業のウィークポイント

 1.採用異動離職:

   雇用の質、重要ポジションの充足度、ポジションを埋めるまでのリードタイムなどが課題です。

 2.後継者育成:

  後継者の準備率や準備度が低いことが問題です。

 

どのように進めるか

 1. 人事情報の集約

  最初に取り組むべきは人事情報の集約です。企業内の様々なカテゴリの情報を一元的に管理することで、未来のトレンドに備えることができます。 
  具体的には、以下のような情報を人事システムにインプットします。

  ・教育システム: 社員の教育履歴やスキル管理情報を集約します。
  ・コンピテンシー情報: 社員の能力評価や成長の機会に関する情報を管理します。
  ・エンゲージメント情報: 社員のエンゲージメント度合いやチームワークの評価を含む情報を収集します。
  ・全社共通人事項目: 氏名や社員番号などの基本情報を統合します。


 これらの情報を統合することで、企業全体の人的資本の現状を把握し、適切な施策を講じるための基盤を築くことができます。

 

2.人的資本経営の指標策定

 次に重要なのは企業特性を考慮した人的資本経営の指標を策定することです。各企業の特性や経営方針に応じて、適切な指標を設定することが
 求められます。

例えば、企業Aでは以下のような指標が考えられます。


  コスト: 採用コストは質を重視するため、多くても問題ありません。
  採用異動離職: 離職率は定年雇用までを想定しているため、低い方が良いです。
  内部異動率: ゼネラリストを育成するため、高めに設定します。
  後継者育成: 内部継承率は外部登用を考えていないため、高めに設定します。


一方、企業Bでは以下のような指標が適用されるかもしれません。


  コスト: 大量採用モデルのため、採用コストは低めに設定します。
  採用異動離職: 10年で新陳代謝を想定するため、離職率は高めに設定します。
  内部異動率: スペシャリストを育成するため、低めに設定します。
  後継者育成: 内部継承率は比較的高めに設定します。


これらの指標を基に、企業の人的資本経営を効果的に進めるための具体的な施策を検討します。

 

3. 見える化の仕組みの構築

 最後に、人的資本経営に関する情報の見える化を実現する仕組みを構築します。蓄積された全ての管理項目を自由に組み合わせて、人的資本経
 営に関する情報を可視化することが重要です。具体的には、以下のような情報を統合人材データベースに集約します。


  キャリア情報: 社員のキャリア履歴やスキルレベルを管理します。
  エンゲージメント情報: 社員のエンゲージメント度合いやチームワークの評価を含む情報を収集します。
  コンピテンシー情報: 社員の能力評価や成長の機会に関する情報を管理します。
  eラーニング情報: 社員の受講履歴やコース内容を管理します。
  発令情報: 社員の発令履歴を管理します。
  人事基本情報: 氏名や社員番号などの基本情報を統合します。


これらの情報を基に、企業全体の人的資本の現状を把握し、適切な施策を講じるための基盤を築くことができます。

Generalistシリーズの新サービス

Generalistは企業の人財戦略策定を支援するサービスを提供いたします。

現状の人財を「見える化」し、その情報に基づいて人事戦略を立案・実行します。企業にとっては「人的資本情報」の開示により、企業価値を最大限に引きだすことができ中長期的な企業価値向上を目指すことが可能となります。

人財戦略支援サービスの特徴

1.人財戦略の計画・現状・GAPの可視化

Generalistでは人財戦略の実現のために必要な人財ポートフォリオとその計画を可視化し、現状の人財とのGAPを把握して人財戦略実行につなげます。
会社が必要とする人財を定義し、レベルごとの必要スキルを設定、計画した人数(ToBe)と現在の人財数(AsIs)の差を可視化します。

2.人的資本最大化のための施策の実行

人的資本を最大化するための施策として、採用、異動、学びの3つのポイントを重視し、必要な人財が社内にいない場合や即戦略として必要な場合は外部から調達し、必要な人財を社内から探して最適な配置を検討します。
また従業員のスキルアップによる人的資本の拡大を図り、トップダウンによる育成やボトムアップでの自律的な成長を促します。

 

3.人財戦略を立案するためのファーストステップ


現在の人財状況を知る
 経営戦略を実現するための人財戦略を検討・実行するためには、まずは企業にどのような人財がいるのかを知ることが必要です。
 Generalistでは、DX人財に関するスキルマップを活用し、企業内のDX人財の把握を支援します

経営戦略を人財戦略に落とし込む
 経営戦略をインプットにして、必要となる人財(ToBe)をAIにて提案するサービスを提供します。
 また、経営戦略を実現するために、的確な人財戦略を立案するための支援を行います。

 

日本版人的資本経営の成功には、デジタル技術を活用した人財の「見える化」、データ分析基盤の整備、人事情報の集約、企業特性を考慮した指標策定、見える化の仕組みが不可欠です。これらの施策を実行することで、企業は中長期的な価値向上を実現し、魅力あふれる企業へと成長することが期待されます。

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