知能化システム

少量多品種の半導体製造で発生する不良を早期に発見するAI技術を開発
-異なる種類の製品に共通する不良の解析時間を8分の1に削減-

2020年06月09日
株式会社東芝

当社は、少量多品種の半導体製品の製造において、異なる種類の製品に共通して発生する重大な不良を早期に発見するAIを開発しました。本技術により、個々の製品のデータが十分に得られない場合においても、複数の製品のデータを統合することで解析に使用するデータ量を増やして機械学習を行い、不良を高精度に分類できます。当社は、本AIを東芝デバイス&ストレージ株式会社傘下の半導体工場に導入し、従来1日につき1人あたり4.2時間かかっていた不良監視作業を約1/8の30分に短縮することに成功しました。
当社は本技術の詳細を、6月9日から12日にかけてオンラインで開催される人工知能学会全国大会(第34回)で発表します。

近年、半導体製造の分野においてAIを用いた生産性向上の取り組みが進んでいます。例えば、製品の品質検査で得られる不良の種類や発生箇所といった品質データをAIにより分類することで、多様な不良の発生を早期に発見し、生産性の向上につなげることができます。
また、一方で多様な顧客ニーズや市場変化に対応するため、少量ずつ多様な仕様の製品を製造する少量多品種製造が求められることが多くなっています。AIで高精度の自動分類を行うためには大量のデータを用いる必要がありますが、生産量が少ない製品では品質データも少量になり、分類精度の低下が課題となります。また、製品の種類が多い場合には、各製品の自動分類の結果を人が確認する回数が増加し、分析作業が煩雑になってしまいます。そのため、少量多品種の生産が主となる半導体工場では、AIによる自動分類を導入することが困難になっていました。

そこで当社は、少量多品種の半導体工場に適した、品質データ分類を行うAIを開発しました。本技術では、ウェハ上の製品チップ数が異なる品質データの特徴量を共通に扱う製品またぎ処理を行うことで、複数の種類の製品の品質データを統合的な1つの品質データとして同時に分類することができます(図1)。公開データ(注1)を用いた実験では、本技術により44製品の品質データを製品またぎ処理を行って共通に扱うことで、少量製品の品質データを大規模な統合品質データの一部として分類することができ、データ量の増加により全製品の分類精度が75.3%から83.3%に向上しました。少量製品においては、分類精度が最大で50.0%から87.5%に向上しました。また、統合品質データの分類結果を個別の製品毎に集計して可視化することで、複数の種類の製品に共通する重大な不良の発生を一目で確認することができます(図2)。これにより、従来人手に依存していた不良監視作業を自動化できるようになり、大幅な時間削減と人件費の削減に貢献します。

図1:本技術の概要。少量多品種の半導体工場の品質データに対して、複数の種類の製品をまたいだ自動分類を行う処理を表しています。従来はデータ不足により少量の製品の精度が低下する問題がありましたが、本技術によりデータ量を増加することで、分類精度向上を実現しています。

図2:本技術を利用した少量多品種の半導体製品の不良検知のイメージ。本技術を利用することで、複数の種類の製品に共通して発生する不良や、注目する製品に発生している不良の種類を一目で確認するアプリケーションを実現できます。品質データの色は不良の程度を表しています。

当社は、今回開発した技術を東芝デバイス&ストレージ株式会社グループ半導体工場の80%以上の製品解析に適用し、1人が1日あたり約4.2時間かかっていた不良解析にかかる時間を30分に短縮しました。今後、社内外の半導体工場への適用拡大を目指し、少量多品種の半導体製造における品質検査の効率化に貢献していきます。