ナノ材料

当社のリチウムイオン二次電池「SCiBTM」の技術が第52回市村産業賞功績賞を受賞

2020年06月04日
株式会社東芝

当社はこのたび、「リチウムチタン酸化物負極を用いた大型二次電池の開発と実用化」において、第52回市村産業賞功績賞を受賞しました。
今回の受賞は、従来のリチウムイオン電池の黒鉛を使用した負極に替え、高品質なリチウムチタン酸化物(LTO)微粒子からなる高入出力で長寿命なLTO負極(図1)を開発し、世界で初めてLTO負極を用いた大型二次電池「SCiBTM」(図2)の製品化に成功したことと、同製品がエコカー、バス、鉄道車両、大型船舶、大型蓄電池システムに適合する高い性能と安全性を実現していることが高く評価されたものです。

受賞者

株式会社東芝 研究開発センター チーフフェロー 高見則雄
株式会社東芝 研究開発センター ナノ材料・フロンティア研究所 機能材料ラボラトリー シニアマネージャー 松野真輔
株式会社東芝 電池事業部 技師長 稲垣浩貴

業績概要

地球環境、エネルギー・資源の問題解決の視点からエネルギーの有効利用とCO2排出削減が世界的規模で求められる中、自動車等のモビリティの電動化や再生エネルギー用の定置用蓄電池システムに適合可能な大型二次電池の開発・実用化が進められています。このような大型二次電池に要求される性能として、大電流での充放電が可能な高入出力、急速充電、長寿命、高い安全性が重要な位置づけとなっていますが、黒鉛を負極に用いた従来の民生用途の小型リチウムイオン電池では、これらの性能を同時に満たすことが困難でした。

そこで当社は、黒鉛を使用した負極に比べて充電時の化学的安定性が高く、体積膨張変化が無いLTO粒子の電極反応機構を解明して電極の高入出力化を実現するとともに、LTO特有の内部短絡に対する安全機構を発見することで、電極の高い安全性を併せて実現しました。さらに、表面の不純物を除去した高品質なLTO微粒子を用いることにより、低抵抗でサイクル性能に優れたLTO負極(図3)を開発し、高入出力、急速充電、長寿命、高い安全性を兼ね備えた大型二次電池「SCiBTM」の製品化に成功しました。これらの性能を持つSCiBTMは、今日、電気自動車やマイルドハイブリッド車などのエコカー、バス、鉄道車両、大型船舶、定置用大型蓄電池システムなどに採用され、普及が拡大しています。

SCiBTMは、これからの持続可能な循環型社会の形成を目指した地球環境問題、エネルギー・資源問題の解決と、安心、安全な社会の実現に貢献することが期待されます。当社は、SCiBTMを東芝グループの全社変革計画「東芝Nextプラン」において新規成長事業として位置付けており、本技術の特性を最大限に生かし、SCiBTM事業の拡大を図ってまいります。

図1:LTO微粒子からなる負極

図2:SCiB(TM)の外観

図3:SCiB(TM)と従来リチウムイオン電池の6分急速充電のサイクル性能の比較

市村産業賞

市村産業賞は、公益財団法人市村清新技術財団により主催され、優れた国産技術を開発することにより産業分野の発展に貢献・功績のあった技術開発者またはグループに贈られる権威ある賞です。1969年(昭和44年)に始まり、今回で52回目となります。独創的・画期的で世界的に見て高い水準にあるもの、その技術の実用化で新たな産業分野の創生や市場の拡大に効果が顕著なもの、産業・社会の発展に先導的な役割を果たし波及効果が大きく期待できるものが表彰対象とされています。