概要
UPSとは
UPS(Uninterruptible Power Systems 無停電電源装置)は、停電などの電源トラブルが発生した場合に、蓄電池を利用してコンピュータや周辺機器に高品質な電源を安定供給し、重要なコンピュータシステムを停電や電力トラブルから守る電源システムです。 小規模なサーバから、データセンタなど大規模なシステムまで、あらゆる重要な情報・通信設備を守るために必要な機器といえます。
東芝のUPSは、あらゆるシステムや容量に応じて最適な機種を取り揃え、大切なデータを守ります。
UPSの動作原理
- 交流入力を、直流に変換し、直流を交流に逆変換して高品質の交流出力を供給します。
- 交流入力が停電または電圧低下した場合、蓄電池電力を逆変換し、交流出力を供給継続します。
UPSの必要性とメリット
商用から供給される電源は、突然の停電や電圧変動が発生することがあります。
その電源トラブルの要因としては次のような事象があげられます。
電源トラブルの要因一覧表
自然災害による停電 | 雷、暴風雨、雪、地震など |
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人為的な要因による停電 | 電線路の点検や工事などによる停電 |
急な電圧変動 | 他の機器からの影響による急な電圧変動 |
その他 | ノイズ、周波数変動、瞬時電圧低下など |
このような停電や電圧変動はいつでも発生する可能性があります。コンピュータは電源変動に敏感なので、大きな損害につながる電源トラブルによるシステムの停止やデータの破損・損失には、防止策が必須です。 また、電源トラブルは事前に予想できないので、常に準備が必要です。
UPSはこのような予測不可能な電源トラブル時に、停電補償時間の間、高品質電源を安定供給することで、データ消失などの損害を未然に防ぐ装置です。 このようにUPSは大切な情報資産等を守るために必要な機器といえます。
UPSの基本構成
UPSの基本構成は下記のとおりです。
UPSの基本構成一覧表
コンバータ (順変換器) | 電力を交流(AC)から直流(DC)に変換するための装置です。 |
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インバータ (逆変換器) | 電力を直流(DC)から交流(AC)に変換するための装置です。蓄電池から取り出された直流を、交流電力へと変換するために使用します。 |
無瞬断切換スイッチ | UPS電源と商用バイパス電源を無瞬断で切換えるスイッチで、UPS点検時または万一のUPS故障時に適用します。TOSNICシリーズは全てハイブリット式の切換装置を用いており、サイリスタとコンタクタ(機種によって単投式2台の場合と双投式1台の違いがあります。)の組合せとなります。 |
蓄電池 | 交流入力側電源異常(停電、電圧低下など)時にあらかじめ充電された直流電力を放電します。 |
UPS基本構成図
UPSシステム構成
単一システム
- UPS1台で構成するシンプルな構成であるため、安価で省スペースが図れます。
- 万一UPSが故障した場合には、バイパス回路にて給電が継続されます。
- UPSを点検する場合には、保守バイパス回路にて負荷給電を継続することができます。
一括バイパス付並列冗長システム
- 並列冗長システムは、UPS給電の信頼性を求められる場合に用いられます。
- 並列冗長システムでは、UPSが冗長化されているため、万一1台故障した場合やUPS本体を点検する場合にもUPS給電を継続することができます。
- 万一UPSが2台以上故障しシステム過負荷となった場合には、商用電源によるバイパス給電となります。
- 切換盤を点検する場合には、保守バイパス回路にて、負荷給電を継続することができます。ただし、商用電源であるため万一この時に停電が発生すると、負荷電源は断たれます。
待機冗長システム
常時負荷給電する常用UPSのバイパス電源を、待機UPSのUPS電源でバックアップ構成したシステムであり、並列冗長システムと同様に冗長性を持ったシステムです。 各UPSは完全に独立しているため、共通部がありません。 万一、常用UPSが故障した場合には、常用UPSはバイパス給電に切り換わります。バイパス電源は待機UPSのUPS電源であることから、負荷に対してはUPS給電が継続されます。 常用UPSを点検する場合には、待機UPSのUPS電源を負荷に供給することができます。 システムの拡張性に優れています。
個別バイパス付並列冗長システム
- 個々のUPSにバイパス回路、切換回路を装備してシステム信頼性を向上させた並列冗長システムです。
- 並列冗長システムでは、UPSが冗長化されているため、万一1台故障した場合や、UPS本体を点検する場合にもUPS給電を継続することができます。
- 万一UPSが全台故障した場合には、商用電源によるバイパス給電となります。
- システムの拡張性に優れています。
UPS導入までの手順
UPS導入までの手順を説明します。
ステップ1 負荷の確認
負荷設備の仕様、容量を確認します。
ステップ2 UPSの選定
UPSの出力容量を決定します。
- 現在計画されている負荷設備の合計容量を算出します。
- 将来増設予定の負荷設備容量を算出します。
- 負荷設備(群)のインラッシュ、クレストファクタ、需要率等を考慮してUPSシステム出力容量を決定します。
ステップ3 蓄電池の選定
蓄電池の仕様を決定します。
- 停電補償時間、蓄電池の種類を決定します。
ステップ4 電源系統との協調検討
UPSに見合った入力電源容量、電圧とし、保護協調のとれる電源系統を構成、決定します。
ステップ5 設置環境の検討
UPSの配置を決定します。
- 外形寸法、質量、将来の増設計画を考慮して、配置を決定します。
- UPSシステムの前面、上面は、所定の保守点検スペースを確保してください。
- 空調機による冷却が有効に行なえる機器配置とします。
- UPS装置および周辺機器は重量物となります。搬入ルートの最小寸法(幅、高さ)および 荷重の確認をしてください。
- UPS室内に蓄電池を設置する場合、蓄電池室の条件を満足するように考慮してください。
配線方法を検討します。
- 電源容量が大きくなると、配線材料は大きなものとなります。配線の作業性、および保守性を考慮し、充分な配線スペースを確保してください。
空調設備容量を決定します。
- UPSシステムの総合発熱量を算出し、充分冷却できる空調設備容量を決定します。
- 周囲温度は、安定動作と寿命の長期化の点から20~30℃が望ましい条件です。
蓄電池室の条件を確認します。
- 外形寸法、質量、保守スペース、将来の増設計画を考慮して、機器配置を決定します。
- 外気と有効に通じる換気ファンを設置し、火災予防条例に規定されている必要換気量を確保してください。
- 火災予防条例により、床、壁、天井および扉は不燃材を使用し、防火区画とします(キュービクルタイプを除く)。
- 蓄電池設備が4800Ah・セル以上となる場合は、所轄消防署への届出が必要となります。
接地方法を確認します。
- UPSシステムはエレクトロニクス機器ですので、安定動作の確保のため、専用A種もしくはC種の接地を準備してください(汎用小形UPSはD種でも可)
よくある質問
UPS用蓄電池の廃棄方法は、UPSの用途により異なりますが、事業用に使用した場合は「特別管理産業廃棄物」となります。
<廃棄方法>
特別管理産業廃棄物管理責任者を設置し、資格を有する運搬業者に依頼し、資格を有する処理業者に依頼して処理すると同時に、これらが確実に実施されたことを確認するために、定められた様式(マニフェストという)の記録をとって、保管・報告する義務があります。
UPSに適用される蓄電池にも寿命はあります。
蓄電池は時間の経過とともに放電バックアップ時間が短くなるばかりでなく、交換周期を過ぎて使用し続けますと、蓄電池の容器が割れ、中の液漏れ・異臭・発煙・発火などの二次障害を引き起こす原因となります。
UPS用蓄電池の更新には、UPS装置とのシステム検討・検証が必要です。交換時にもUPS運転操作が必要となりますのでUPSメーカーに御連絡をお願いします。
UPSに適用される蓄電池にも寿命はあります。
UPS用蓄電池の寿命は、一般的には蓄電池メーカーの期待寿命と同一と考えられがちですが、周囲温度や放電特性により期待寿命が短命となる場合があります。
UPS用の蓄電池は使用年数の経過によって容量が低下します。据置型鉛蓄電池においては、一般的に蓄電池容量が定格容量の80%まで低下した時点を寿命の目安としているため、保守率として0.8を採用しています。その場合1.25倍の容量が必要となります。