「ダイナミックレーティング」とは?                    カーボンニュートラルの実現を支える東芝のDLR技術に迫る!

  • 電力流通
2023.08.10

「ダイナミックレーティング」とは?                     カーボンニュートラルの実現を支える東芝のDLR技術に迫る!


近年、再生可能エネルギーの大量普及により、電力系統の混雑が系統運用上の新たな課題として注目されています。従来からの主な対応策としての系統の設備増強には、多大なコストや期間を要するため、既存の系統設備をより有効に使う技術として『ダイナミックレーティング』が注目されています。

本記事では、ダイナミックレーティングの概要から、東芝が取り組んでいるDLRサービスについて説明します。

ダイナミックレーティングとは

ダイナミックレーティングとは、設備温度を動的に把握して、潜在的な設備能力を最大限活用する運用技術です。電力流通設備のダイナミックレーティングには、送電線のダイナミックレーティング(DLR:Dynamic Line Rating)と変圧器のダイナミックレーティング(DTR:Dynamic Transformer Rating)の大きく2つがあります。


本記事では、送電線のダイナミックレーティングについて説明します。

送電線のダイナミックレーティング(DLR)

送電線に流せる電流(送電可能容量)は、送電線の材質で決まる許容温度によって制約されています。送電線の許容温度は、下図のように送電電流で発生するジュール熱に加えて、日射からの吸熱や、空気の対流や放射の拡散熱など、気象条件によって動的に変化します。

従来の考え方では、気象条件(日射・風速・外気温)が実際の運用時よりも保守的なケースを固定条件として、事前に計算を行い、送電可能容量は設定されています(SLR:Static Line Rating)。動的に送電可能容量を計算することができれば、既存の設備のままでより多くの電流を送ることが可能になります。気象条件を基に、動的に送電可能容量を設定する技術がDLRです。

東芝の提供するDLRサービス

・東芝方式は、センサーレス型DLR

DLRの導入方法はセンサー方式とセンサーレス方式の二つに大きく分かれます。センサー方式では、直接設備に接触して計測した物理パラメータから計算する接触型と、遠隔から設備の物理パラメータを計測して計算する非接触型があります。東芝方式では、これらのセンサー方式ではなく、気象モデルから送電可能容量を推定するセンサーレス方式を用います。

・風況解析技術によるボトルネック区間の推定で、センサー方式との効果的な共存が可能

先に紹介したDLRの導入方法の特徴を比較したものが下図です。

東芝が採用してるセンサーレス方式のメリットを以下にまとめます。

  • 設置に伴うコストや設置の容易性の点で優れています
  • センサーを設置する必要がないため、DLRを適用する設備の選定場所の柔軟性が高まります
  • 風況解析技術や風況予測技術との組合せにより、将来系統における運用計画への応用が可能です

下図のように、センサー方式とセンサーレス方式のそれぞれの強みを生かした併用も可能です。

・「風車機器販売」と「風力発電」の事業を展開する東芝は様々なシーンで風況解析を活用

架空送電線の導体温度は風況の影響を大きく受けるため、DLRを効果的に行うためには、高精度な風況予測を行うことが重要です。東芝の長年の風力発電事業によって培われた風況解析技術は、DLRでも強みになります。

・SaaS型での機能提供により、コストを抑え、技術進化に適応した導入が可能

東芝では、系統の変化、最新技術に追従することができる、SaaS型のDLRサービスの提供を検討しています。

電力系統技術をクラウド上で連携することにより、コスト削減、柔軟性の向上、業務効率性の向上など、多くのメリット生まれます。既存システムからダイナミックレーティングサービスを呼び出す形で活用することができるため、導入コストを抑え、最新の機能がすぐさま利用できます。

東芝では、系統運用システムとの連携により、DLRを面的かつ効率的に(使いやすく)適用する技術にも取り組んでいます。


最後に

ここまでに紹介した送電線ダイナミックレーティングに関する内容をまとめます。

  • 再生可能エネルギーの大量普及に伴い、既存の系統設備をより有効に使う技術として『ダイナミックレーティング』が注目されてます
  • 送電線の温度を動的に把握して、潜在的な送電能力を最大限活用する運用技術がダイナミックラインレーティング(DLR)となります 
  • 東芝が提供するDLR方式はセンサーレス型方式です
  • センサーレス方式はセンサー方式と併用および補完することも可能です 
  • 風力発電事業によって培われた風況解析技術が東芝方式の強みです 
  • 東芝はSaaS型のDLRにより、設備投資コストを抑えた導入を提案します 
  • 系統運用システムとの連携により、DLRを面的かつ使いやすくすることを実現していきます