研究開発センター

学生の皆様へ

研究者紹介 バックナンバー2016

第一線で活躍している研究者と研究をご紹介

“高性能プログラマブルデバイスを実現する” 高集積・不揮発FPGA技術 小田 聖翔(まさと) フロンティアリサーチ部門 2010年入社 化学専攻

回路設計からソフトウエア開発まで担当

FPGA(Field-programmable gate array)と呼ばれるプログラマブルLSIの一種を研究開発しています。通常のチップは設計したものを工場で作り、出荷します。出荷後に当初設計されたチップの構成を修正することはできません。一方FPGAは、出荷後でもユーザが構成を書き変えることができるチップです。一般的なFPGAは電源を切ると回路内容も消えてしまうので、電源を入れるたびに書き直しをする必要があります。これに対し私たちのFPGAは、当社の不揮発メモリ技術を生かし、電源を切ってもFPGAの回路内容が消えないという特長があります。しかも、従来よりも数倍、高集積です。FPGAの研究開発では、メモリ素子を開発し、回路とアーキテクチャを決め、そしてユーザがFPGAを使うときに設計データを書き込むためのソフトウエアまでを用意します。私の担当範囲は、最初のメモリ素子の開発を除いた部分です。回路とアーキテクチャを決め、ソフトウエアをすべて作り、目指す性能を実現することが研究の目的です。

小田 聖翔の写真

高集積・不揮発FPGA技術の図

技術の種を、1年がかりで木に育てる

私たちのミッションは、新しい事業の種をまくことです。ただ、種をまいただけではなかなか育たないので、木になるところまで育てています。研究開発のスキームとしては、回路の設計と、それを組み合わせたFPGAの設計に半年。工場に製造を依頼して、できあがったFPGAが返ってくるまでの間にソフトウエアを整備して3ヶ月。その後の3ヶ月でFPGAの測定を行い、その結果を次の回路設計にフィードバックする。ここまでで、ほぼ1年です。測定しているときに不具合が見つかると、ソフトウエアの整備に戻ることもあるので、それぞれのフェーズが重なる場合もありますが、このサイクルをここ3、4年続けています。これをやり遂げたらノーベル賞もの、という研究ではなく、どちらかというと開発に近いですね。ソフトウエアはすべて自分でコードを書きます。回路シミュレーターはもちろん、本当に小さな素子、トランジスタをプローバで測定したり、FPGAをボードにはめてケーブルでつないで電気測定器も使います。実際にやってみないとわからないことも多いので、経験値が上がります。

小田 聖翔の写真

ものづくり魂を胸に研究開発に励む

学部学生では化学の合成も勉強しましたが、終わりころに物理化学系の研究室を選択し、大学院では応用寄りの研究室で物性研究を行いました。大学で学びながら社会活動にも取り組むうちに、人の役に立ちたいという思いが強くなり、ものづくりの会社である東芝に入社しました。私が研究開発センターに入るまでの道のりは、自分のやりたい方向に、取り組み対象の修正をしながら、自由意志で進んできた感じです。
入社時の研修に、からくり人形を作る実習がありました。キットが与えられるのですが、一つだけ使えない部品が混ざっていて、その代わりに適切な部品を自分で手作りして組み立てないとからくりがうまく動かないのです。からくりの茶運び人形が直進してクルッと回って同じ場所に正確に帰ってきたら完成で、私はおよそ200人中2番目に完成させました。手先は器用な方だと思います。ものを作るのが大好きなのです。人がお金を払ってでも欲しいと思う製品に、自分が手掛けた技術が入ればいいなと思っています。

小田 聖翔の写真

学生の皆さんに一言

学生の皆さんに一言!『自分の研究を理解し、情熱を持ちましょう。』

研究に自信がある、きちんと理解して意味がわかっている人は、面談でどのような質問をされても全然へこたれない。そういう人は、会社に入ってからも上手くいきます。研究がうまくいっていなくても良いのです。なぜ、その研究をするのか、意義を理解できていることが重要だと思います。自分の研究を心の底から愛していますか?楽しんでいますか?