研究開発センター 首席技監 高見則雄が「紫綬褒章」を受章

2022年4月28日
株式会社東芝

概要

当社の研究開発センター首席技監の高見則雄が、「リチウムチタン酸化物負極を用いた高出入力性能と安全性に優れた長寿命大型二次電池の開発」の功績により、令和4年春の褒章で「紫綬褒章」を受章しました。紫綬褒章は、科学技術分野における発明・発見や、学術及びスポーツ・芸術文化分野における優れた業績を挙げた個人に与えられる褒章です。

当社は、リチウムイオン電池の負極に従来の黒鉛に替えて、安全性・長寿命・急速充電・高出入力性能に優れたリチウムチタン酸化物(LTO)微粒子からなるLTO負極(図1)の開発、2008年に業界に先駆けてLTO負極を用いた大型二次電池SCiB™(図2)の量産化に成功しました。高見は、本LTO負極の開発とSCiB™の量産化に寄与し、その功績により受章しました。
今般の受章は、カーボンニュートラルの実現に向けてエネルギーの有効利用を推進する自動車・バス・鉄道車両・船舶・無人搬送車・大型蓄電池システムに適合する高い性能・経済性・安全性を実現した電池の開発に貢献したことが高く評価されたものです。

開発に寄与した技術について

地球環境、エネルギー・資源の問題解決の視点からカーボンニュートラルとエネルギーの有効利用が世界的規模で求められる中、自動車等のモビリティの電動化や再生エネルギー用の定置用蓄電池システムに適合可能な大型二次電池の開発・実用化が進められています。このような大型二次電池に要求される性能として「安全性・長寿命・急速充電・高出入力」が重要な位置づけとなりますが、従来の民生用途の小型リチウムイオン電池では一般に黒鉛を負極に用いているため、これらの性能を同時に満たすことが困難でありました。

そこで当社は、従来の黒鉛負極に比べて化学的に安定し、充放電に伴う体積変化が殆ど無いLTO粒子の電極反応機構を解明することにより電極の高性能化の指針を得るとともに、LTO特有の内部短絡に対する安全機構を発見することで高い安全性を実現しました。電極開発においては、表面の不純物を除去した高品質・高結晶性のLTO微粒子を開発することにより、急速充電性能の向上(図3)と低抵抗でサイクル寿命性能に優れたLTO負極を実現しました。その結果、柏崎工場にてLTO負極の量産製造に成功し、高い安全性を確保しながら、20,000回(*1)を超えるサイクル寿命、急速充電、高出入力性能に優れた大型二次電池SCiB™の製品化を実現しました(図4)。SCiB™は、自動車・バス・鉄道車両・船舶・無人搬送車・大型蓄電池システムなどに採用され、普及が拡大しています。
当社は、持続可能な循環型社会の形成、安心・安全な社会の実現に貢献することを目指し、今後もSCiB™事業の拡大と研究開発を続けてまいります。

図1: LTO微粒子からなる負極
図2: SCiB™の外観
図3: LTO微粒子で急速充電性能の向上
図4: SCiB™の長寿命サイクル性能

*1 ある特定条件下で実測した数値。