知能化システム
東芝独自のAIを活用した高精度な太陽光発電量予測技術を開発
-「太陽光発電量予測技術コンテスト『PV in HOKKAIDO』」にてグランプリを受賞-
2019年07月17日
株式会社東芝
当社はこの度、太陽光発電量を予測する技術において、当社独自のAIを活用した高精度な予測技術を開発しました。本技術では当社独自の気象予測システムから得られる様々なデータを活用するとともに、太陽光発電設備の性能や設置条件が不明な場合でも過去の同設備の発電実績をもとにAIで性能や設置条件を推定し、発電量を高精度に予測します。本技術適用前と比較して、予測誤差が約9.8%改善しました。
当社は、本技術を7月17日にお台場で開催される「INTEL ENERGY FORUM 2019」にて紹介します。
また、本技術を活用して参加した東京電力ホールディングス株式会社と北海道電力株式会社が共同開催した「太陽光発電量予測技術コンテスト『PV in HOKKAIDO』」において、応募約70団体の中で、予測精度と実用性の面で高評価を頂き、グランプリを受賞しました。
今後、電力事業者の需給運用を支えるサービスへ適用を目指します。
近年、電力小売自由化や世界的な脱炭素への動きに呼応して、再生可能エネルギーの導入が拡大しています。一方で、再生可能エネルギーは発電量が気象条件に左右されることが多く、電力の安定供給が課題となっています。例えば、国内の全発電量に対する太陽光発電の発電量の割合は約6.5%にとどまっていますが、今後比率を上げた場合、広域大停電につながる懸念が生じます。太陽光発電において電力事業者が安定的かつ効率的な電力供給を行うために、電力の需要量や太陽光の発電量などを予測した上で需給計画を立てることが求められます。
また、2009年11月に始まった固定価格買い取り制度(FIT)の買い取り期間が、本年11月以降に満了となる家庭は50万世帯を超えるといわれており、満了後の余剰電力の使い道が課題となっています。余剰電力を効率的に活用するためにも、発電量の予測は重要となります。また、周波数調整や受給バランス調整といった調整力の調達や取引を行うことを目的とし、2021年度に開設される需給調整市場を見据えて、デマンドレスポンスやバーチャル・パワープラント(VPP)などの新たなリソースの活用も注目されていますが、刻刻と変わる需要量と発電量の調整においても、需要量や発電量の高精度な予測は不可欠です。
従来の一般的な太陽光発電量予測技術は、太陽光発電の設置場所の気象予測値を参照し、太陽光発電設備の工学モデルを組み合わせて発電量を予測するか、気象条件が近い過去の実績値を用いて予測する手法が用いられています。
当社は、これまで気象予測とAIを融合した高精度な電力需要量予測技術(注1)に取り組んでおり、今回開発した太陽光発電量予測技術は、既に当社が独自に運用する数値気象予報モデル(注2)を用いた予測システムから得られた発電量に関係するデータ(日照強度、気温、風速、降雪、太陽光の反射率など)を活用することで説明性の高い予測モデルが構築できることが特徴です。特に、発電量への寄与が高い日照強度については、予測値からAIへ実測値をフィードバックすることで、予測誤差の傾向を学習し、予測精度を高めています。さらに、太陽光発電設備の性能や設置条件が不明な場合でも、工学モデルとスパースモデリングやアンサンブル学習などの機械学習を融合して、過去の実績データから太陽光発電設備の特長や設置条件を推定するAIを開発し、発電量の予測誤差を改善することができました。
当社は、本技術を用いて、東京電力ホールディングス株式会社と北海道電力株式会社共同開催の「太陽光発電量予測技術コンテスト『PV in HOKKAIDO』」に参加し、応募約70団体の中でグランプリを受賞しました。本コンテストでは、北海道電力株式会社が保有する過去の太陽光発電量実績データを用いて、指定された太陽光発電所の発電量を13ヶ月の期間、30分単位で予測し、予測精度や予測モデル、実用性、発展性が審査されました。当社の予測技術は、独自運用システムから必要な気象情報を抽出して従来の工学モデルと機械学習を組み合わせたことや、予測に必要な要素を自社技術で実現していること、予測モデルの入力データを工夫して精度向上が期待できることなどから、精度と実用性、発展性の面で総合力が高いと評価されました。
当社は今後、実績データの蓄積や気象予測値の種類を増やしてAIに学習させることで、さらなる予測精度の向上を追求します。また、発電量予測技術ととともに、電力事業者の需給運用を支えるシステムやサービスへの導入を目指していきます。
① 独自の気象予測データを用いて予測精度を高める
② AIがPV設置条件を推定して予測精度を高める
(注2)Weather Research and Forecasting:米国大気研究センター(NCAR)と米国環境予測センター(NCEP)によって開発されたオープンソースの予報モデル。