ナノ材料

光で二酸化炭素をエチレングリコールに変換 エネルギー変換効率0.48%を達成

2016年10月

概要

当社は、光で二酸化炭素をエチレングリコールに変換する光電気化学システムを開発し、エネルギー変換効率0.48%を達成しました。電気化学的に二酸化炭素をエチレングリコールに還元する分子触媒の開発を進めており、今回、光起電力素子としてシリコン系太陽電池を用いて、光で二酸化炭素をエチレングリコールに変換する光電気化学システムを開発しました。本技術は、米国で行われた国際学会PRiME2016で発表しました。

開発の背景

近年、二酸化炭素の大気中濃度は上昇を続けており、地球温暖化の一因と推測されています(注1)。また、化石燃料の枯渇も懸念されており、再生可能エネルギーの活用が望まれています。このような背景から、地球温暖化と化石燃料の枯渇の両者を解決できる技術として、光で二酸化炭素を化学エネルギーに変換する光電気化学セル技術の開発が国内外で進められています。
これまで、二酸化炭素を一酸化炭素やギ酸などの2電子還元物質(注2)に変換する電気化学触媒技術が報告されてきました。より複雑な還元反応によって生成される多電子還元物質(注3)においては、炭化水素に直接変換する銅などの触媒の研究が進められていますが、副生成物が多いという課題がありました。

本技術の特長

当社は従来から電気化学的に二酸化炭素をエチレングリコールに変換する分子触媒の開発を進めてきました。今回、光起電力素子としてシリコン系太陽電池を用いて、光で二酸化炭素をエチレングリコールに変換する光電気化学システム(※)を開発しました。この光電気化学システムを用いてエチレングリコールへの変換を行ったところ、エネルギー変換効率0.48%(注4)を達成しました。分子触媒は金属表面上にイミダゾリウム塩誘導体を高密度に吸着させたものです。金属表面に吸着したイミダゾリウム塩誘導体が分子上で二酸化炭素分子と相互作用をすることで、従来実現できなかった反応を可能にしました。これは、分子触媒が、二酸化炭素の反応を促進するとともに、2電子還元反応よりも複雑な多電子還元反応の反応場としての役割を果たしているからと考えています。得られたエチレングリコールはPETボトルやポリエステル繊維・樹脂の原料にも使用できる汎用性の高い工業原料です。分子触媒の吸着方法を見直して二酸化炭素還元の性能を向上させた電極を利用し、触媒が最も効率的に作用するように光電気化学システムを制御した事により、光によるエチレングリコール生成が可能となりました。(※特許出願中)

東芝の分子触媒

光電気化学システム

今後の展望

今後、開発を進め、2020年代の実用化を目標に、汎用性の高い工業原料を高効率で製造する技術の開発を進めていきます。

(注1)IPCC第4次評価報告書総合報告書 環境省

(注2)二酸化炭素が電子2個を受け取って得られる物質

(注3)二酸化炭素が電子4個以上を受け取って得られる物質。今回の場合は10電子を受け取り、エチレングリコールが得られる。

(注4)国際学会の予稿には0.16%と記載されています。