機械・システム
コンクリート構造物の内部劣化の非破壊センシング技術を開発
2016年8月
概要
当社は京都大学大学院塩谷智基特定教授と共同で、高速道路橋などのコンクリート構造物の内部劣化をセンサデータに基づき、精度良く診断する技術を開発しました。本技術は、アコースティック・エミッション(注1)と呼ばれる手法を使い、表面からは判らない内部ひび割れの位置を可視化することができます。開発技術の詳細は、東北大学で開催される土木学会全国大会にて、9月9日に発表します。また、パシフィコ横浜で開催されるMEMSセンシング&ネットワークシステム展(9月14日~16日)にも出展いたします。
開発の背景
高度経済成長期に建設された橋梁などの社会インフラ構造物の老朽化が社会課題となりつつある一方で、労働力人口の低下が顕在化しつつあり、橋梁などを点検する検査員の確保が困難となることが予測されています。このため、インフラ構造物に内在する問題を出来るだけ効率よく早期に発見可能な技術の開発が望まれていました。
本技術の特徴
当社は、橋梁などに用いられているコンクリート構造物にセンサを設置し、そのデータを分析することで、表面からは判らない内部ひび割れの位置を可視化する技術を開発しました。この技術では、アコースティック・エミッション(AE)と呼ばれる、構造物の内部の損傷から発生する波動を、高感度なセンサ(AEセンサ)で捉えることで損傷の位置を推定します。構造物に設置したAEセンサ(図1)で捉えたデータを利用して、AEの発生源(図2)や構造物の中を伝わる波動の特性(図3)を求めて、コンクリート内部のひび割れや損傷、劣化の位置を精度よく求めることができること(※)を確認しました。(※特許出願中)
本技術について、供用中の橋梁でコンクリート床版(注2)のサンプル抜き取り調査を行ない、分析結果の妥当性を確認しました。
今後の展望
当社は、今回開発した技術の実証を引き続き進め、近い将来の市場投入を目指します。
なお、本技術には、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の委託研究業務「インフラ維持管理・更新等の社会課題対応システム開発プロジェクト」の成果が含まれています。
(注1)固体内部の微小な破壊などによって発生する波動現象のことを指します。地震を非常に規模の大きなアコースティック・エミッションと考えることもできます。
(注2)橋梁の通行車両を直接ささえる部材で、コンクリートが使われているものを指します。国内外の橋梁で広く用いられています。