情報通信プラットフォーム

通信距離が異なる60GHz帯ミリ波無線システムの共存を可能にする干渉制御技術を開発

2016年8月

概要

当社は、60GHz帯ミリ波(注1)無線において、混在する異なる通信距離の無線システムを共存させる干渉制御技術を開発しました。本技術では、異なる通信距離の無線システムの混在を検出し、1秒以内に通信距離がより短い無線システム側の周波数チャネルを切り替えることで、60GHz帯ミリ波無線の課題であった電波干渉を回避し安定した通信を実現します。

開発の背景

IoT社会ではデータやアプリケーションの特性に適した多種多様な規格の無線システムが存在するため、異なる通信距離のミリ波無線システムが混在します(図1)。従来の干渉制御技術(注2)は、通信距離が同等の無線システムを対象にしているため、異なる通信距離のミリ波無線システムが同一エリアに混在する場合には機能せず、通信距離が長く電波の強いミリ波無線システムの干渉を受けるという問題がありました。そのため、異なる通信距離の無線システムを共存させる干渉制御技術の開発が求められていました。

図1: 開発の背景

本技術の特徴

本技術では、機器の操作における制御信号の受信規則を利用した当社独自の干渉検出方式により、高精度に干渉を検出し、1秒以内に周波数チャンネルを切り替えることで安定した通信を実現します。

今回、通信距離が数センチメートルの近接ミリ波無線システムを搭載したカメラ映像伝送機器に、開発した干渉制御技術を実装しました(図2)。通常、カメラのズーム切り替え、レンズ切り替え、照度調整の制御信号はディスプレイモジュールからカメラモジュールに順番に伝送されますが、カメラモジュールはこれらの制御信号が同時に2つ以上受信されたことを検出した場合、通信距離が数メートルの近距離ミリ波無線が同一エリアに混在し干渉を受けていると判断します。そして、干渉を回避するために60 GHz帯の異なる周波数チャネルに切り替え、順番に制御信号の伝送を行います。

当社は、本技術を検証するために、カメラ映像伝送機器の周囲に近距離ミリ波無線システムを配置し、カメラ信号伝送を行った結果、干渉が無くなることを確認しました。

図2: 干渉制御技術を実装した実験機

今後の展望

本研究の一部は、総務省が実施する「電波資源拡大のための研究開発」の一環として、当社が委託を受けて実施したものです。当社は、IoTの普及に備え、電波干渉の影響が小さい世界を目指しており、様々な用途での本技術の適用を検討していきます。

(注1)60GHz帯ミリ波:ミリ波は周波数範囲が30~300GHzの電波。60GHz帯は免許不要で利用可能な帯域で、日本では57~66GHzが利用可能となっています。

(注2)電波の強さを観測し、基準より強い電波を観測した場合に送信を控える。通信距離の短い無線システムと比較して、通信距離の長い無線システムは強い電波を発信する。