LSI・ストレージ

トランジスタの絶縁膜欠陥に起因するノイズを利用した新たなチップ個体認証技術を開発

2015年6月

概要

当社は、IoT(Internet of Things)機器のセキュリティ技術「physical unclonable function(以下、PUF)」において、トランジスタの絶縁膜欠陥に起因した「ランダムテレグラフノイズ(以下、RTN)」を利用した新技術を開発しました。本成果は、京都で開催される半導体デバイスの国際会議「VLSI技術シンポジウム」にて、6月16日に発表しました。

開発の背景

ネットワークを介して接続する機器の数が増大する中、デバイスや機器の複製対策などセキュリティの重要性がますます高まっています。PUFは、電子回路を構成する個々のデバイスのばらつきを、チップ固有のID「チップ指紋」として利用することで、暗号・認証を実現するセキュリティ技術です。この技術は、複製困難性が高く、低コストで実現できるため、注目を集めています。
従来、PUFには、メモリ型と遅延型がありました。メモリ型PUFは、電源を入れた直後のメモリセルの初期状態の個体差を利用するものです。遅延型PUFは、回路内の配線遅延の差を利用しています。これらの方式は、主にトランジスタの電源ON/OFFを決定する閾値電圧のばらつきをチップ固有のIDとして利用します。閾値電圧のばらつきは、トランジスタが劣化に伴い変化するため、初期に設定したIDが識別できなくなることが懸念されています。PUFの信頼性を高めるためには、初期に設定したIDの変化を低減することが求められています。

本技術の特徴

今回、注目したのは、RTNと呼ばれる現象です。RTNは、CMOSイメージセンサの画質劣化、トランジスタやメモリの情報反転を引き起こす原因となるので、より低減しようとする技術的努力がなされていますが、完全に消滅させることは難しいとされています。このRTNを詳細に評価・解析する中で、RTNの複製困難性、固有性や電気ストレスに対する安定性に着目し、世界で初めてRTNをPUFに応用しました。また、短時間でRTNを検出するアルゴリズムを新たに考案し、100万回以上利用しても「チップ指紋」を識別できることを確認しました。

今後の展望

当社は今後、本技術の早期実用化に向けて、さらに信頼性と性能を高めたPUFセキュリティシステムの研究開発に取り組みます。