情報通信プラットフォーム

100万台以上のIoT機器を遠隔から即時操作できるクラウド集約型システムを開発

2015年1月

概要

当社は、IoT(Internet of Things)機器を遠隔から即時制御できるクラウド集約型システムを開発しました。多種多様な家電やセンサ等の機器がつながるIoTの世界において、機器が100万台以上の規模となると、制御信号の中継サーバが複数台必要となります。今回開発したシステムでは、比較的小規模なサーバ(メモリ4GBの一般的なノートPCクラス)単体で、10万台以上の機器を接続できるようにしました。さらに接続台数に応じてサーバ数を動的に増減させつつ、制御する側の携帯端末と制御される側の機器を常に同一のサーバに接続させて、即時性を維持する新方式を開発しました。本技術はラスベガスで2015年1月9日より開催された国際会議IEEE CCNC 2015(注1)にて発表しました。

背景

インターネットを介して宅内の家電を制御する場合、携帯端末からの制御信号をクラウドのサーバに一時的に蓄積し、宅内の家電から定期的にサーバに制御信号の有無を問い合わせる方式があります。但し、この従来方式では遅延の問題があり即時制御ができません。そこで、サーバと家電・携帯端末の間でWebSocket(注2)技術による接続を常時維持し、即時的に制御信号を転送する方式が提案されています。しかし、安全な暗号化接続を常時維持する必要性から、一台のサーバの接続台数には限界があり、特に100万台以上の規模の家電やセンサを扱うIoT向けの巨大システムでは、複数台のサーバを運用する必要があり、その効率化が求められます。

本技術の特徴

そこで当社は、WebSocketを用いた即時遠隔制御システムにおいて、サーバ一台あたりの接続台数の向上を図りつつ、サーバ追加によるシステム拡張性とシステム全体でのサーバ運用効率を向上させる新方式を開発しました。機器が100万台以上の規模となると、クラウド経由で機器・携帯端末間の通信をとりもつ中継サーバが複数台必要となります。今回開発したシステムでは、暗号化通信時(注3)のメモリ利用効率を向上させ、クラウド上で比較的小規模な仮想サーバ(メモリ4GBの一般的なノートPCクラス)単体で10万台以上の機器を接続できるようにしました。さらに、新方式の接続調停機能により、制御する側の携帯端末と制御される側の機器を常に同一のサーバに接続させることで、サーバ台数が増えても即時性を維持することが可能になります。携帯端末と機器が接続されるサーバがそれぞれ異なる場合は、サーバ間で制御信号を転送する必要があり、余分な経路をたどることになりますが、新方式ではこれが発生しません。今回、クラウド上に接続調停用のサーバ1台と中継サーバ10台(上記仮想サーバーと同性能)を配置し、100万台の機器の接続を確認しました。
また、新方式では、サーバの負荷状態に応じて動的にWebSocket接続を切り替え、システム全体での運用サーバ数を最適に調整する機能を持たせています。例えば、日中と夜中では利用される機器の数が異なりますが、利用数が少ない時間帯にサーバ数を自動的に削減させることも可能にしました。
これらにより、100万台以上という大規模な機器に対してもシステムの利用効率を下げることなく遠隔制御のサービスを提供することが可能になります。

今後の展望

当社は、今回開発したクラウド集約型システムを多種多様なセンサ等のIoT機器に適用すべく研究開発を進めます。

(注1)IEEE CCNC 2015(1/9~12, 米国ラスベガス)、https://ccnc2015.ieee-ccnc.org/
   CCNC … Consumer Communications & Networking Conference. Sponsored by IEEE Communications Society.

(注2)ウェブサーバと端末間の双方向通信のための技術規格

(注3)TLS(Transport Layer Security)通信