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HDTV映像伝送を低ビットレートで4K解像度に拡張する高画質SHVCエンコード技術を開発

2014年11月

概要

当社は、既存のHDTV映像伝送を活用し、低ビットレートで4K(注1)解像度に拡張可能なHEVC(注2)スケーラブル拡張(SHVC(注3))エンコード技術を開発しました。これにより、従来30Mbps程度のビットレートが必要だった4K映像配信に必要な追加伝送帯域を1/3の10Mbps程度まで低減できます。

開発の背景

4Kテレビの普及に伴い、4K・8K(注4)コンテンツを放送やネットワークを介して提供するサービスが検討されています。総務省が主催する「4K・8Kロードマップに関するフォローアップ会合」では、既存のサービスであるHDTVと4K・8K放送を視聴者のニーズに応じて併存させることが前提(注5)であるため、4K・8K放送の帯域確保の方法が検討課題でした。現在のHDTV放送は15-20Mbpsの帯域でサービスされているのに対し、4K・8K放送ではそれぞれ30-40Mbps、80-100Mbpsと膨大な帯域を必要とします。したがって、限られた帯域で様々な解像度を持った映像を併存して配信するサービスを実現する技術が望まれていました。

SHVCエンコード技術

そこで当社は、放送波やネットワークを介して伝送されているHDTV映像をベースに、低ビットレートの追加で高画質な4K映像伝送を実現できるSHVCエンコード技術を開発しました。SHVCでは、HEVCで用いられていた画面間予測と画面内予測に加え、HDTV画像から4K画像を予測するレイヤ間予測を利用しています。変形を伴う動きや不規則な動き、ピンボケや被写体やカメラの動きによるボケ画像領域に対してレイヤ間予測を適用することでデータ量を抑え、ピントのあっている動きの少ない領域により多くのデータ量を割り当てることで、主観画質を改善しました。
また、本来圧縮が難しいノイズ成分を時空間画像処理(注6)で予め4K画像から除去することで、低ビットレートでの解像度感の低下を抑制しました。そのため、追加ビットレートを10Mbpsに設定したときでも4K映像が持つ解像度感を維持することができます。
これにより、映像伝送に必要な帯域を抑制しつつ、HDTV~4K/8Kといった複数の解像度の映像配信を併存したサービスが実現できます。

今後の展望

今後は、本技術をベースに現行HDTV映像配信との互換性を維持しつつ、より高精細な映像の配信を可能とするサービスの開発を進めていきます。

(注1)3840×2160画素で構成された60fpsの映像を想定

(注2)High Efficiency Video Codingの略。正式規格名はITU-T H.265 | ISO/IEC 23008-2

(注3)Scalable High-efficiency Video Codingの略

(注4)7680×4320画素

(注5)総務省「4K・8Kロードマップに関するフォローアップ会合中間報告」 https://www.soumu.go.jp/main_content/000312825.pdf

(注6)フレーム内およびフレーム間の情報を利用したノイズ除去方式