ナノ材料・デバイス

エネルギー変換効率が世界最高レベルの新構造CIGS太陽電池

2013年9月

概要

CIGS(※注1)太陽電池(※注2)は薄膜型の太陽電池です。低コスト、省資源、省エネルギーで製造できる経済性と環境性に優れた太陽電池と言われています。当社は、新たにホモ接合型のCIGS太陽電池を開発しました。そして、現在のCIGS太陽電池の最高効率(※注3)に並ぶ、世界最高レベルのエネルギー変換効率20.7%(※注4)を達成しました。

(※注1) 銅(Cu)、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、セレン(Se)からなるCu(In,Ga)Se2化合物半導体。

(※注2)CIGSをガラス基板上に成膜した安価な多結晶薄膜太陽電池で、市販太陽電池としては単結晶Si・多結晶Si太陽電池に次ぐエネルギー変換効率を示す。

(※注3)CIGS太陽電池の最高効率は2013年1月にスイス連邦材料試験研究所(EMPA)が報告した20.4%(当社調べ)。

(※注4)エネルギー変換効率は当社評価によるもので、受光部から集電極部分を差し引いた開口部(約0.1cm2)の効率。

開発の背景

太陽電池の一般的なセルは、p層とn層を重ねたpn接合構造をしています。p層とn層に同じ半導体を用いたホモ接合構造は理想的なセル構造ですが、今まで、CIGSでn層を作ることは困難でした。従って、現在のCIGS太陽電池のセルは、p層であるCIGS薄膜上に、n層としてCIGSとは異なる硫化亜鉛、硫化カドミウム、硫化インジウムなどを積層したヘテロ接合構造をしています。このヘテロ接合構造は、pn接合界面に格子不整合が生じて界面欠陥ができやすく、エネルギー変換効率を低下させる原因となっていました。

新構造CIGS太陽電池

そこで、当社は独自の液相ドーピング法を用い、p層とn層が共にCIGSで、原理的に界面欠陥が少ないホモ接合構造を実現しました。そして、現在のCIGS太陽電池に並ぶ世界最高レベルのエネルギー変換効率を達成しました。液相ドーピング法は、n型ドーパントを溶かした液体にp層のCIGS薄膜を成膜したガラス基板を浸漬し、n型ドーパントをCIGS薄膜表面から内部に拡散させてn層を形成する方法です。溶液に浸すだけの大変簡便な手法で、CIGSでn層やホモ接合構造を作製することが可能になりました。

今後の展望

当社は、2年後にCIGSのホモ接合技術の完成を目指し、現在よりも高いエネルギー変換効率を示すCIGS太陽電池の研究開発を進めます。