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胸部の3次元MRI画像から心臓領域および横隔膜位置を自動的に検出する技術

2013年2月

概要

当社と東芝メディカルシステムズ株式会社 は、胸部全体をカバーする3次元MRI画像から心臓領域および横隔膜位置を自動的に検出する技術を共同開発し、杏林大学医学部付属病院の協力でその精度を確認しました。この技術があれば、これまで冠動脈検査に必要だった心臓の位置決め等の複雑な作業が不要になります。本技術は、米国サンフランシスコで開催された心臓MRIに関する世界最大の国際会議、第16回SCMR(Society for Cardiovascular Magnetic Resonance)で発表しました。

胸部の3次元MRI画像から心臓領域および横隔膜位置を自動的に検出する技術の図

従来技術の課題

心臓MRI検査は、心筋梗塞や心筋症などの様々な心臓疾患を一度に検査することができます。その一つである冠動脈検査の場合、まず最初に撮像した胸部の画像から心臓の領域を設定し、MRI装置の中心に心臓を合わせる寝台移動や、心臓周囲の磁場補正を行います。また、この冠動脈検査は呼吸同期撮像で行われるため、肝臓上の横隔膜頂点位置も設定します。従来から、これらの設定は手作業で行われています。しかし、心臓領域や横隔膜頂点位置を正確に設定することは非常に難しく、また煩雑な作業であるため、MRI装置を操作する技師の大きな負担でした。

心臓領域と横隔膜頂点位置の検出

そこで当社は、最初に撮像する胸部全体をカバーする粗い3次元データである入力画像と、あらかじめ用意しておいた平均的な体格のモデル画像とを重ね合わせる画像位置合わせの技術を開発し、冠動脈検査に必要な手作業を自動化しました。あらかじめ用意するモデル画像には正確な心臓領域や横隔膜頂点位置の情報を持たせ、入力画像と一致させて、患者の心臓領域と横隔膜頂点位置を特定する仕組みです。患者の入力画像をモデル画像と正確に重ね合わせるために、非剛体の画像変形手法を採用しました。一般的に、3次元のデータ同士の非剛体位置合わせは計算に時間がかかりますが、当社は非常に高速な画像位置合わせのアルゴリズムを開発し、汎用PCを用いて約2秒で計算できます。杏林大学医学部付属病院との共同研究で32名の心疾患患者を対象に評価し、診断に求められる十分な精度で心臓領域や横隔膜頂点位置を検出できることを確認しました。

今後の展望

今回当社は、MRI冠動脈検査自動化の基本技術を確立しました。また、寝台移動や磁場補正作業の自動化技術は、冠動脈検査だけでなく、すべての心臓MRI検査への適用が可能です。作業が簡単になるため、検査時間の短縮が期待でき、患者負担軽減にもつながります。今後は、日本人以外の臨床データも含めて更なる精度評価を進め、本技術の早期製品化を目指します。