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量子暗号鍵とデータの波長多重化による単線化

2013年1月

概要

量子暗号技術は、暗号鍵の光子の量子力学的な性質によって安全性が保障された暗号技術です。従来、微弱な光子による暗号鍵は、1ビットあたり光子数約100万個相当の光通信データとは同一ファイバーを用いることはできず、専用ファイバーを用いて送信する必要がありました。そこで今回、東芝欧州研究所ケンブリッジ研究所(以下、CRL)は、光通信データの波長とは異なる波長の暗号鍵の光子を多重化して、一本のファイバーで光通信データと暗号鍵を同時に送信することに成功しました。この結果は、米国物理学会で最も権威のあるPhysical Reviewのオンライン版Physical Review Xに掲載(2012年11月20日)されました。

従来技術の課題

量子暗号の暗号鍵は光子の量子状態を保ったまま送信をする必要があり、外乱に弱いため、専用ファイバーを用いて送信する必要がありました。光通信データと暗号鍵を同じファイバーで送信すると、散乱光によって光子の量子状態が失われてしまうためです。したがって、従来は暗号鍵用と光通信データ用の少なくとも二本のファイバーが必要で、コスト面で他の暗号技術に対して不利でした。そこで、CRLは、光通信データと暗号鍵の波長多重化を図る一方、光子の検出器のタイミングを制御して、微弱な光子の量子情報を取り出す方法を編み出しました。具体的には、暗号鍵が到達するタイミングに合わせて光子の検出時間を約50ピコ秒という短い時間に限定し、強度の高い光信号に起因する雑音レベルを低下させました。この技術を利用して、距離35㎞のファイバーで1メガビットの暗号鍵を送ることにも成功しました。この1メガビットという数値は、従来の波長多重化の1000倍から10万倍高い値で、世界最高を記録しています。

量子暗号鍵とデータの波長多重化による単線化

今後の展望

現在は、暗号鍵、クロック信号、および、光通信データを波長多重化していますが、更に波長多重化する光通信データの数を増やし、コスト面で他の暗号技術に対して有利で実用的な暗号システムの構築を目指します。