ナノ材料・デバイス

エッチング転写機能を備えた自己組織化レジスト用垂直配向制御膜

2012年6月

概要

当社は、エッチング転写機能を有する、ブロックコポリマー用垂直配向制御膜を開発しました。この垂直配向制御膜により、半導体のリソグラフィープロセスが簡略化され、10nm以下の超微細の半導体回路パターン形成の実用化に近づきます。

従来技術と課題

従来の半導体リソグラフィープロセスでは、露光装置の露光光の波長を短くして半導体回路パターンの微細化が行われてきました。しかし、その方法も限界に近づいています。そこで、各社はブロックコポリマーの自己組織化を利用したパターン形成技術の開発に取り組んでいます。この技術を用いると、露光装置で作製したガイドパターンの1/整数を周期とするパターンが形成可能なため、露光装置で形成するより微細なパターン形成が可能です。2007年以降には、国際半導体技術ロードマップにおいて、当該技術は次世代リソグラフィー技術の候補にも挙がっています。

このブロックコポリマーと呼ばれるプラスチック材料は、自己組織的にパターンを形成します。しかし、半導体回路パターン形成のためには、基板に対してポリマーからなる層が垂直に並ぶように配向を制御する必要があります。また、ガイドパターンを用いて、ブロックコポリマーパターンを水平方向に並べ、形成されたパターンを鋳型に、半導体回路を構成する膜を加工するためのエッチング転写膜が必要です。個々の要素技術は開発されてきましたが、半導体の回路パターンに適用するためには、上に述べた要件を満たすプロセスを構築する必要があります。単純に要素技術を組み合わせると、エッチング転写膜と配向制御膜を別々に形成することになり、課題となっていました。

本技術の特長

そこで当社は、エッチング転写機能を備えたブロックコポリマー(BCP)用垂直配向制御膜を開発しました。1つの膜で2つの機能を兼ね備えているため、機能の異なる膜を重ねて形成する必要がありません。また機能の異なる2層の膜をエッチングする代わりに、1層膜をエッチングすることで済みます。このため、膜形成工程、エッチング工程を各々1工程ずつ削減することができました。この垂直配向制御膜の開発により、10nm以下の超微細な回路パターン形成の実現に近づきました。

従来の配向制御膜と今回開発の配向制御膜の図

今後の展望

本技術は米国ハワイで開催されたEIPBN 2012で発表しました。今後は、2016年以降に、ブロックコポリマーの自己組織化を利用したリソグラフィー技術を用いた回路パターン形成技術が製品製造に適用されることをめざして、研究開発を進めていきます。