機械・システム

家庭向け消費電力量シミュレーション技術 ― ライフスタイルに合わせて実効性の高い節電方法を提案 ―

2012年3月

概要

当社は、人々の生活行動や保有する家電の消費電力等をもとに、各家庭のライフスタイルに合わせて消費電力量を計算するシミュレーション技術を開発しました。生活行動と消費電力を関連付け、世帯構成の変化や家電の省エネ製品への買い換え、冷暖房の設定温度変更や住宅への断熱材導入などによる節電効果を定量的に評価することで、各家庭への効果的な節電方法の提案につながります。2012年4月から米国ニューメキシコ州で独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構が実施するスマートグリッドの日米共同実証事業などにおいて、本技術の実用化に向けて精度を高めていきます。また、当社が2012年末から米国で展開予定の家庭向けエネルギーマネージメントサービスの追加サービスとして、2013年春から本技術を用いた節電提案サービス開始を目指します。

住宅消費電力シミュレータの構成

背景および従来技術

人々の環境意識の高まりや昨今の電力不足から、節電やピーク時電力の削減が求められています。電力削減のための仕組みとして、機器の利用抑制を直接ユーザに依頼する、電力価格を変化させて需要を調整するなどのデマンドレスポンス(需要応答)が注目されています。電力を効果的に抑制するには、抑制依頼に対する消費電力の削減効果のモデル化が必要です。従来手法として、各家庭の消費電力履歴を元に統計的に消費電力を推定する方法がありますが、消費電力変化とその要因の関係が明確でないため、節電行動を実施した場合の消費電力の削減量を精度よくシミュレーションできませんでした。

本技術の特長

そこで当社は、各家庭の1日の行動と機器利用を結びつけるモデルと、住宅の断熱性能を考慮して機器の消費電力を計算するモデルを開発しました。各機器の種類に応じた消費電力、住宅の構造に応じた断熱性能、冷暖房設定温度、ユーザのライフスタイルに応じた1日の機器使用パターンなどの基礎データを蓄積し、これらデータ間の関係をモデル化したことで、今回のシミュレーションが可能となりました。ユーザはあらかじめ準備された世帯構成と居住者の属性、利用機器の種別などの設問に回答することで、節電行動の消費電力削減量をシミュレーションできます。例えば、生活パターンの改善、省エネ機器への買い換え、暖房設定温度を下げる、住宅の断熱リフォームをするなどの節電行動に対する消費電力削減量を定量的に評価できます。また、本技術とスマートメータを連携させ、シミュレーションにより算出したユーザの消費電力を実際の電力消費データ履歴で補正することで、今後さらに精度を高くできます。

住宅消費電力シミュレータの処理の流れ

今後の展望

本技術は大規模な需要家群の消費電力の計算が可能であり、電力会社での活用も想定しています。電力会社が本技術を用いることにより、個々の家庭の状況に応じた電力需要を把握した効果的な節電サービスを提供することが可能となります。東芝グループは、スマートコミュニティ事業を注力事業の一つと位置付け、関連技術の開発を積極的に推進していきます。