情報通信プラットフォーム

低消費電力AD変換器

2011年12月

概要

当社は、高速な動作周波数で高い階調を実現する、低消費電力AD(アナログデジタル)変換器を開発しました。AD変換器は、パソコン、カメラや携帯電話など、デジタル製品の多くに搭載されています。

背景

近年、デジタル製品同士でデータを大量に無線でやりとりする要求が高まっており、取り扱うデータ量の増大も見込まれています。大量のデータを扱う無線通信装置では、高速な動作周波数で高い階調を実現するAD変換器が必要です。しかし、そのようなAD変換器を実現しようとすると、消費電力が増大するという課題がありました。

タイムインターリーブ技術

高速な動作周波数を実現する技術として、タイムインターリーブ技術を採用しました。タイムインターリーブ技術とは、低速な動作周波数のAD変換器(副AD変換器)を複数使用してAD変換器を構成する技術です。複数ある副AD変換器で同じアナログ信号線を使用すると、副AD変換器から発生される雑音が、アナログ信号線を介して他の副AD変換器に影響を与えます(干渉)。そこで、干渉対策のための電気的な分離回路(Track and Hold回路:T/H回路)を副AD変換器内に設けました。この分離回路で干渉を防ぎ、高い階調も実現しました。さらに、分離回路内にあるバッファ回路の動作周波数を緩和し、バッファ回路を流れる電流を動的に制御することで、バッファ回路の消費電力を従来に比べ約7割削減しました。開発したAD変換器は、動作周波数1.5GHzで分解能6ビット以上を、業界最小クラスの消費電力36mWで実現しました(当社調べ)。

今後の展望

タイムインターリーブ技術は、副AD変換器の個数の調整で高速動作を比較的容易に実現できる技術として注目されています。今回開発した技術により、高階調での技術課題である省電力化を解決する見通しが立ちました。今後はさらなる高速化を進める予定です。なお、本技術は、韓国で開催された半導体関連国際学会A-SSCC(Asian Solid-State Circuits Conference)で2011年11月15日に発表しました。