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MRI診断装置向け心臓断面設定技術

2011年10月

概要

株式会社東芝と東芝メディカルシステムズ株式会社は、3次元MRI心臓画像から診断用の基準断面を自動位置決めする技術を共同開発し、杏林大学付属病院の協力でその精度を確認しました。本技術を用いることで、心臓MRI検査の最初に行われる基準断面の煩雑な位置決め作業が解消され、約10分の時間短縮が見込まれます。本成果は、国内のMRI学会である第39回日本磁気共鳴医学会大会にて2011年9月30日に発表しました。また、2011年10月6日より3日間に渡りドイツ、ライプチヒで開催された国際学会である第28回ESMRMB(European Society for Magnetic Resonance in Medicine and Biology)大会でも本成果を発表しました。

開発の背景

心臓MRIの検査は、虚血性心疾患、心筋症、冠動脈瘤、心内血栓などのさまざまな疾患を一度に評価できるという特長があります。心臓MRI検査では、ほとんどの検査は基準となる位置を確定した上で、診断に使用される断面像(基準断面像)を撮影(連続的に撮像して心筋の動きを観察するシネ撮影、心筋梗塞部位を明瞭に描出する遅延造影撮像等)する、2ステップで行われます。体内における心臓の位置や向きが分からないと基準となる位置決めができず、検査用の基準断面像を撮像できないため、個人に合わせた心臓の位置や向きを調べる位置決め(基準断面位置)作業を行う必要があります。その後、基準断面位置を基に診断に使用する基準断面像の収集が可能となります。

従来技術や課題

従来、この位置決め作業のために手動で撮影を繰り返す方法を行っており、時間がかかる作業でした。そのため、撮像の度に息止めが必要になる患者、装置を操作する技師の双方にとって、この位置決め作業が大きな負担となっていました。また、位置決め作業は技師の技量などに依存し、同じ断面位置を再現性良く設定することが困難でした。従って、断面設定技術による位置決め作業の自動化が心臓MRI検査に必要とされてきました。しかし、体内における心臓の位置・大きさ・傾き、また画像内での心臓のパターン(明るさ、コントラストなど)は、個体差、呼吸や拍動のタイミング、疾患の影響によりさまざまなバリエーションが存在するため、位置決め作業の自動化は非常に困難な問題でした。

技術の特長

今回、実症例のデータを複数用いて心臓の複数の特徴部位の統計的なパターンを学習する事例ベースの部位推定技術を開発し、自動化に成功しました。この技術を用いると、様々な形状や画像パターンのバリエーションに対しても安定、かつ精度良く基準断面の位置決めをすることができます。本技術によって、これまで約50分(40分~60分)かかっていたMRI心臓検査時間が約40分に短くなります。

今後の展望

今回、心臓基準断面設定の基本技術を確立しました。今後さらなる臨床データでの精度評価を進めて、製品化を目指します。