「大電力無線機器の狭帯域化を実現する送受信超伝導フィルタの開発」が市村産業賞を受賞

受賞日 2013年4月25日

4月25日、第45回市村賞の贈呈式が開催され、当社は、「大電力無線機器の狭帯域化を実現する送受信超伝導フィルタの開発」により「市村産業賞」の「貢献賞」を受賞しました。これは、二律背反の特性である大電力性と狭帯域性を併せ持つ超伝導フィルタの開発に成功し、気象レーダの世界初の狭帯域化運用を実現したこと、今後、無線機器の周波数有効利用のキー技術として産業や社会への貢献が期待されることなどが認められたものです。

業績名

大電力無線機器の狭帯域化を実現する送受信超伝導フィルタの開発

受賞者

  • 加屋野 博幸
  • 研究開発センター   研究主幹
  • 篠永 充良
  • 社会インフラシステム社   電波システム事業部 技監
  • 河口 民雄
  • 研究開発センター   研究主務

業績概要

現在、無線LANやスマートフォンの利用が拡大し無線機器は生活に広く浸透していますが、周波数資源の枯渇が問題になっています。これを打開する周波数有効利用技術として、無線機器の狭帯域化運用に必要な狭帯域性と耐電力性を併せ持つフィルタの開発が切望されていました。

本開発では、狭帯域で低損失という超伝導体の特長を生かした超伝導共振器を実現するため、電力放射を最小化して損失を抑制し、電力集中を招く折り曲げ部を排除した平行2線型結合共振器技術を開発しました。この平行2線型結合共振器技術による受信用超伝導フィルタは、世界最小の容積と従来の2/3以下の通過損失特性を有します。

さらに、本開発では、超伝導共振器の弱点である耐電力性を改善することを目的に、大電力に強い空洞共振器で狭帯域性に優れた超伝導共振器を挟み込むことによって大電力から超伝導共振器を保護するとともに、大電力の信号経路と小電力の信号経路を分けるフィルタ構成である超伝導ハイブリッドフィルタ技術を開発しました。この超伝導ハイブリッドフィルタ技術による送信用超伝導フィルタは、従来の超伝導共振器フィルタより5桁高い100kWの耐電力性と、レーダに使われる従来フィルタの1/10以下の狭帯域性を併せ持ちます。本送信用超伝導ハイブリッドフィルタは、狭帯域化運用のキーコンポーネントとして新型気象レーダに搭載され、気象レーダの世界初の狭帯域化運用の実現に貢献しました。

本開発の超伝導フィルタ技術は、ゲリラ豪雨対策に資することができる新型気象レーダ網の構築に寄与できます。さらに、本技術は、あらゆる無線機器に適用することができ、無線機器の狭帯域化運用を可能にする周波数有効利用のキー技術として、産業の発展への貢献、安全・安心な社会づくりへの貢献が期待されます。

市村産業賞は、優れた国産技術を開発することで、産業分野の発展に貢献・功績のあった技術開発者またはグループに贈られます。本表彰は公益財団法人 新技術開発財団により主催され、1969年(昭和44年)に始まり、今回で45回目となります。独創的・画期的で世界的に見て高い水準にあるもの、その技術の実用化で新たな産業分野の創生や市場の拡大に効果が顕著なもの、産業・社会の発展に先導的な役割を果たし波及効果が大きく期待できるものを表彰対象にしています。