半導体メモリのフォトマスク現像技術」が市村産業賞を受賞
受賞日 2012年4月27日
4月27日、第44回市村産業賞の贈呈式が開催され、当社および東京エレクトロン九州株式会社の共同開発による「半導体メモリの大幅大容量化を実現するフォトマスク現像技術」が「貢献賞」を受賞しました。これは、世界に先駆けて、2世代以上先の大容量NAND型フラッシュメモリの製造を可能にする独創的なスキャン型超高精度フォトマスク現像技術を開発し、半導体メモリの大容量化競争をリードする原動力として半導体産業の発展に貢献していることが認められたものです。
業績名
半導体メモリの大幅大容量化を実現するフォトマスク現像技術
受賞者
- 桜井 秀昭
- 研究開発センター 研究主務
(現 セミコンダクター&ストレージ社 半導体研究開発センター 主務) - 伊藤 正光
- 研究開発センター グループ長
(現 セミコンダクター&ストレージ社 半導体研究開発センター グループ長) - 船越 秀朗
- 東京エレクトロン九州株式会社 主任技師
市村産業賞貢献賞を受賞した伊藤グループ長、桜井研究主務、
東京エレクトロン九州株式会社 船越主任技師(左から)
業績概要
パソコン、スマートフォンなどで使用されるNAND型フラッシュメモリは、年率約2倍の大容量化が求められ、メモリ設計上、年率約30%の回路パターンの微細化が求められてきました。回路パターンの微細化にはパターンの原版であるフォトマスクの高精度化が不可欠ですが、フォトマスクの現像工程で発生する寸法誤差が回路パターンの微細化、メモリの大容量化への高い障壁となっていました。
本開発では、フォトマスクの現像機構の究明研究に基づき、回路パターン寸法の超高精度化を実現する独創的な現像液吐出/吸引機構一体型ノズルおよびそれを用いた近接走査現像技術を開発しました。すなわち、(i)現像液吐出/吸引機構一体型ノズルにより、現像副産物をフォトマスク基板上から迅速に排出することでパターン欠陥を従来比1/3に低減、(ii)近接走査方式により、現像液を高流速化し現像副産物のレジスト面からの離脱を促進することで、パターンの疎密差(被覆率差)に起因する寸法誤差を観測できないレベルにまで低減、(iii) 吐出スリットの両側に吸引スリットを配置した現像ノズルを等速度で走査する方式により現像液の均一供給を可能にし、回路パターンのフォトマスク面内の寸法誤差を0.11nm以下に低減しました。
本開発によって、回路パターン線幅70nm世代以降、常に2世代以上先の大容量NANDフラッシュメモリの製造が可能なフォトマスクの現像工程におけるパターン寸法精度を実現してきました。本技術は半導体メモリの大容量化競争をリードする原動力となっており、半導体製造の基盤技術として我が国の半導体産業の発展の一翼を担っています。
市村産業賞は、優れた国産技術を開発することで、産業分野の発展に貢献・功績のあった技術開発者またはグループに贈られます。本表彰は公益財団法人 新技術開発財団により主催され、1969年(昭和44年)に始まり、今回で44回目となります。独創的・画期的で世界的に見て高い水準にあるもの、その技術の実用化で新たな産業分野の創生や市場の拡大に効果が顕著なもの、産業・社会の発展に先導的な役割を果たし波及効果が大きく期待できるものを表彰対象にしています。