DX人材の育成について、課題とその解決策とは ~後編~
前編で日本の抱えるDX人材育成の課題とその要因について見てきました。本編では日本の各企業が取り組んでいる実例を参考にしながら、その具体的な解決策について考えてみようと思います。
目次
1.DX人材育成に必要なこととは
①戦略的なDX人材育成計画の設定
②DX推進体制の強化
③組織・文化的課題
2.おわりに
1.DX人材育成に必要なこととは
前編のとおり、DX推進が思ったように機能しないのは、これが複合的な課題であることに起因している為であることが多い様です。では、これらをどのように対処していくべきか、ポイントを考えていきましょう。
① 戦略的なDX人材育成計画の設定
まず、自社に必要なDX人材像の明確化と評価基準の確立が必要です。DXを推進する上では人材育成の方向性の明確化が必要で、どのようなスキルやレベルのデジタル人材が必要なのかを具体的に定義し、採用だけでなく既存社員の育成目標としても機能する評価基準を確立することが不可欠です。
次にDXスキル習得の実践機会の提供とリスキリングプログラムの強化が必要です。リスキリングプログラムを体系的に実施し、個人の学習意欲を高める動機付けを行う研修は勿論、デジタル技術を活用した具体的なプロジェクトへの参加や、実業務での実践機会を提供することが、スキルの定着と向上に繋がります。また、教育受講の動機付けの為、単なる研修機会だけでなく、個人が学び、実践し、貢献できる魅力的な環境(例えばコミュニティ)などの用意も重要です。このような活動が定着する将来的には、評価・報酬に紐づく人事制度の整備も必要となってきます。
また更には外部人材の確保、即ち高度DX人材獲得の為に、報酬面だけでなくリモートワークやフレックス制度等の魅力的な処遇と柔軟な働き方の提示による人材確保も不可欠です。
そして、最も重要な要素の一つが、デジタルリテラシーだけでなく、事業課題を解決し、組織の内側から変革を牽引できるリーダーシップを持つ人材、つまり内発的な変革を牽引するリーダーの発掘・育成です。これは、DX推進成果の二極化を乗り越え、ビジネス変革を実現するための鍵となります。
図 DX人材育成に必要な対策
② DX推進体制の強化
DX推進を成功させるためには強固な推進体制が不可欠です。この為にDXガバナンスの強化と成果目標の具体化が求められます。試行段階から真の変革段階へ進むためには、経営層がDXの成果目標を具体的に設定し、その達成にコミットメントを強化するDXガバナンスが不可欠です。DX推進指標の活用は、自社の現状を客観的に把握し、認識を共有する上で有効なツールとなります。
次に、事業課題の解決に向けた価値創造ストーリーの再構築が必要です。個別業務のデジタル化に留まらず、業務の垣根を越え、事業全体の課題解決に繋がる価値創造ストーリーを再考し、DX戦略に落とし込む必要があります。これは、IT投資が単なるコストではなく、競争優位性を確立するための戦略的な投資であるという認識を経営層に促すことにも繋がります。また今後は生成AIの急速な普及を踏まえたAIファーストな業務改革の推進が不可欠となっていくでしょう。
2.おわりに
日本の企業が持続的な成長と国際競争力を確保するためにはDX推進が不可欠であり、これはビジネスモデル、業務プロセス、そして企業文化・風土そのものを変革する挑戦です。この変革を成功させる上で最も重要な要素の一つが「DX人材」の育成です。DX人材育成は、企業の未来の成長を左右する戦略的な投資であり、経営戦略の中核に据えるべき要素であり実現に向け尽力していただきたいと思います。
ところで、我々東芝デジタルソリューションズでは、人材育成ソリューションサービス*1を長年提供しております。今回、これらの経験の中で最も重要視した「スキル可視化と活用」を念頭に、DXスキル標準活用を進めるワーキング活動「DSMパートナーズ*2」を通して、企業・団体のDX推進の活動を側面からサポートしています。
既にDXを進めている企業もこれからの企業も、デジタルスキル標準を始めとした政府支援策の活用も行いながらDX推進を加速させ、自社のDX戦略や人材育成計画を客観的に見直し、外部の専門知識やベストプラクティスを取り入れながらDX推進を行っていって欲しいと思います。我々もこの活動と並行して、DX人材育成をターゲットとしたサービス「DX NEXT」を展開しながら、引き続きDX推進に邁進して参ります。
*1 人材育成ソリューション
Generalistシリーズとして累計XXセットを販売、YYユーザが利用。この度25年中にDX人材育成サービスを提供予定。
*2 DSMパートナーズ
経済産業省(METI)と独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が策定したDSSP(DX推進スキル標準)を国内企業のDX推進のために活用していくにあたっての知見を共有するワーキンググループ。東芝デジタルソリューションズ株式会社が発起人となって、日本パブリックアフェアーズ協会と活動している
【著者プロフィール】
田中 尚(たなか ひさし)
東芝デジタルソリューションズ株式会社
ICTソリューション事業部
エキスパート
略歴・経歴
1984年株式会社東芝に入社。1998年よりエンタープライズ向け人事給与ソリューションGeneralistシリーズの開発リーダを経て、2003年より事業推進リーダ、責任者として事業に
従事。また2021年よりこれまでの経験を元に、DX人材育成のためのワーキンググループ
DSMパートナーズ(デジタルスキルマップ)を立上げ活動、現在に至る。

