社員データを活かした人的資本経営の実現
~ひとりひとりが歩んできた奇跡を企業価値にする方法~
講師:東芝デジタルソリューションズ株式会社
ICTデジタルソリューション事業部
HRMソリューション部
HRMソリューション技術担当 参事 萬 大祐
セミナー開催レポート
HRカンファレンス
1.国内企業を取り巻く環境
今はVUCA時代。変化が早く、不確実で予測が難しい時代だと言われます。新型コロナウイルスの感染拡大、ウクライナ危機や円安など、これまで当然と思っていた環境が急に変わってしまう、そんな環境の中に私たちはいます。
一方で、雇用を取り巻く状況も大きく変わっています。まず、個人の価値観が変化してきました。キーワードで言うとウェルビーイング、1人ひとり感じる対象も感じ方も異なる満足感や達成感といったことを重視する傾向が強くなっています。テレワークやフリーアドレスのオフィス、副業解禁、年功序列の崩壊などの変化も今、同時に起こっており、これまでの雇用の形が変わろうとしています。
従来の日本の雇用形態は新卒採用が基本で、採用した人材が企業の組織の中で色々と異動するなどして経験をつみ成長していくというものでした。メンバーシップ型雇用とも呼ばれます。経済産業省 産業人事政策室発行の経営戦略と人材戦略の人材版伊藤レポート※によると、これが組織外との柔軟なメンバーの出入りが常態となる雇用形態に変わっていくと予想されています。変化に素早く対応するためには、こういった人の出入りが必要になるというわけです。職務内容を定義し、その職務に適したスキルや経験をもった人を採用するジョブ型雇用に変わっていくという言葉で説明されることもあります。
それを行うために必要なのが企業の戦略であり、戦略に紐づいた人事戦略です。これは人事部門だけでできる話ではありません。部門横断で連携して取り組んでいくために、人材データやデータに基づいた戦略が必要になります。
また人事戦略は、企業の成長や持続性に深く関わる情報ですから、外部へ発信してくことも必要です。それが企業を評価するための重要な情報となってきたからです。令和元年6月21日の成長戦略フォローアップの閣議決定の中でも、「人的投資情報の“見える化“の推進」が採択されました。2018年にはISO30414という情報開示の国際規格も制定されています。これらはジョブ型雇用を前提にしないと実現しにくい取り組みでもあるため、日本企業には難しいのではないかという議論もあります。しかしそれでも、情報開示の動きは留めることができるものではないでしょう。
そんな状況の中で、いかに人材データの活用を進めていくのかということが、今の大きな取り組み課題になります。
2.人材データを企業価値につなげる3つのSTEP
しかし、課された義務への対応として人材情報の開示に取り組むというだけでは、非常につまらないと思います。人材データは、企業価値を向上させる可能性をもつものです。そこを目指して取り組むべきでしょう。その取り組みには、3つのSTEPがあると考えています。
まずSTEP1は、データを取得する段階です。それぞれの部署がもつデータが連携できない、目標管理や評価の情報も活用しやすいデータにしたい、本人の自己申告などの情報も今後は必要になるはず、といったご相談を、お客様からよく伺います。この段階の課題に対しては、やはりある程度柔軟なシステムを入れ、そこに入力するプロセスを決め、きちんと実行していくことがポイントになります。
STEP 2は、そのデータを活用しようとして見えてきた課題に対応する段階です。例えば、これから中国系のビジネスをする。人事異動の履歴情報などはあるが、中国とビジネスのやり取りを経験した人材を探したいといった情報は入っていないので役に立たなかった、といったお話をよく伺います。このような課題は、利用の目的から考えて取得するデータを整えていく必要がありますから、難易度の高い取り組みです。しかしその課題が分かったことで、取り組めることがあります。またデータベースは、常に最新の状態に保つためのメンテナンスが必要になります。その継続的な仕組みをつくることも大切な課題です。
そして、不確実な未来においても持続的に成長できる状態の実現に取り組むのがSTEP3です。これは、私どもからの提言という色合いが強いですが、4つの準備が必要だと考えています。
1つ目は「多様化する働き方への対応」です。例えば副業のマッチングやボランティア、ネクストステージへの取り組みといった多様な新しい働き方は、企業から従業員に提案していくことが、個人の不安の解消になり、惹きつけにもなります。しかし、そんな様々なメニューを自社だけのパワーで準備していくのは困難です。一方で、世の中では様々なサービスが次々に登場しています。それを活用できるようにしていくことが現実的なのではないかと考えております。
そして、「イノベーションを起こす」環境の準備です。多様性のある企業の方がイノベーションは生まれやすいといわれます。多様性のある企業になるには、多様性を認め合う土壌が必要です。そんな土壌は、自分を客観視して長所や短所を理解している、そして他のメンバーについても客観視できる、というところから生まれてくるのではないかと考えます。そのために、客観的な人材データの活用が力になるはずです。
次に、「個人の自律的なキャリア形成」。日本は、世界の中でみると社外学習や自己啓発に対する意識が非常に低い、という調査結果があります。これは、何を学習すればいいかわからないということが大きな要因になっているのではないでしょうか。
そこで我々東芝は、日本のスキルの国内標準を作るべきだと考え、活動を行っています。客観的で、社会で統一された指標があれば、自分の立ち位置が分かり、学習すべき内容も分かりやすくなるはずです。
4つ目は「エンゲージメントを高める」ことです。エンゲージメントのスコアと、売上・生産性には正の相関関係があることが確認されています。エンゲージメントを高めるのは、一人ひとり異なる志向に合致した活躍の場が企業の中にあり、そこにアサインされるということでしょう。こういったことができるためにも、一人ひとりの人材データの蓄積と、それを活用できるようにすることが必要なのだと考えています。
3.不確実な未来に向けて
これまでは、企業の人事ご担当者様の視点で取り組むべきことをお話させていただいてきましたが、皆さん自身も働いている個人です。個人として考えると、これからどんなことが必要だと感じていらっしゃるでしょうか。
未来は不確実です。これまで懸命に頑張ってきた仕事が急に役に立たなくなる可能性もあります。しかしそんな状況に流されたくない。そう感じないでしょうか。そのためには、自分を見つめ直し、自分で自分を知ることが必要でしょう。また自分の可能性を広げるために、最近次々に登場している人生やキャリアに役立つサービスをもっと具体的に知ったり、活用してみたいという気持ちにならないでしょうか。企業だけでなく、社会に貢献したいと感じることもあるのではないでしょうか。
もしそんな気持ちを感じるなら、その状態を実現する方法を作っていくべきです。私たちはそのように考え、これからサービスを発展させていこうと考えています。
4.Generalist/PeCome™サービスのご紹介
私たちの部門がメインで提供しているサービスは「Generalist」という人財管理ソリューションです。約25年の実績があり、約9400社、990万人にご利用いただいている、今企業側が把握している情報を一元管理できるシステムです。
そして、来るべき未来に必要な機能をもった「PeCoMeTM」という新サービスを開発いたしました。 「Generalist」は、収集した情報を企業が活用することを前提にしていますが、「PeCoMeTM」は個人が活用することを前提にしています。副業や社会貢献、学びに関する様々なサービスをここから利用でき、自分の興味や活用履歴を蓄積して自分を客観視できる機能(Myトリセツ)もあります。活用することでサイト内の世界やキャラクターを育成ゲームのように育てていくことができたり、同じ興味や経験をした人たちとコミュニケーションをすることもできます。将来的には個人のファイナンシャルプランやライフプランなどを蓄えたり、例えば、転職をする際にもそこに蓄えたデータを保持利用できるようにすることなどを計画しております。
そして少し大きな話になってしまい恐縮ですが、「社会の人事部」と呼べるような機能をもつサービスを提供していきたいと考えております。
目指す世界観にご共感いただける方は、是非お声がけください。一緒に新しい世界を作っていければと考えております。
※出典:総務省統計局ホームページ 産業人材政策課 令和2年1月「事務局説明資料」
https://www.meti.go.jp/shingikai/economy/kigyo_kachi_kojo/pdf/001_04_00.pdf (PDF形式)

東芝デジタルソリューションズ株式会社
インダストリアルソリューション事業部 HRMソリューション部 HRMソリューション技術担当
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