働き方改革の次のステージは何か?
意識すべきは個人の思いと「働く」の明日
~企業目線から転換し、明日を見た個人に響く改革を~


労働人口の急激な減少の中で、政府が働き方改革を打ち出し、多くの企業が様々な施策に取り組んでいる。しかし、政府や企業の施策と従業員個々人の思いは異なっていることもしばしばだ。
そこで、東芝デジタルソリューションズは企業の取り組みを踏まえた上で、働き方改革がどこに向かえばよいのか、個人の思いと「働く」の明日を見据えた個人に響く改革に焦点をあてたセミナーを開催した。
セミナーでは17年にわたって、HRMソリューションを担当する東芝デジタルソリューションズ HRMソリューション部の萬 大祐が働き方改革を支援するソリューション「Generalist®/WR」の紹介も含めて講演した。

政府の思いと企業の思いの違い


4月1日から働き方改革関連法が施行されました。しかし、働き方改革は無理に推し進めると、弊害が生じてしまいます。そこで本日は企業の働き方改革の現状と東芝デジタルソリューションズが考える従業員一人ひとりが満足するその先の施策、そしてそれを支援するソリューションについて考えて行くことにします。

2017年の日本の労働人口は7,596万人、2065年には3,000万人も減って、4,529万人になると予測されています。働き手不足が深刻化する中で、現在のGDPを維持していくことができるのか。そうした危機感から政府は働き方改革で、働き手の拡大、出生率と生産性のアップを図ろうとしています。一方で、企業も同じことを考えているわけではありません。企業が意識しているのは最終的にはどう利益につなげることができるかです。このように政府の思いと企業の思いは異なります。企業にとっては様々な施策のひとつとして働き方改革があるのです。

では、企業はどのように働き方改革に取り組んでいるのでしょうか。最も多いのが長時間労働の是正、次に業務の見直し、そして在宅勤務・オフィス外勤務の促進です。一方で、RPAやAIの活用、社外労働力の柔軟な活用、ひとつの企業に頼らない働き方の許可・推奨などは多くありません。私たちのヒアリング結果では、取り組み例のトップ3は長時間残業削減と生産性の向上、テレワークの導入です。その他、既存システムの見直しや組織風土の改革などもあり、100社100様といってもよい状況です。

求められるのは現場との対話


1つ目の長時間残業削減の取り組みでは法律違反のようなケースは少ないです。圧倒的に多いのは残業時間を少しでも減らそうという取り組みで、具体的には定時退社日、有休取得推奨、残業の事前申請などです。当社も2019年4月以降、18時退社、20時以降は勤務禁止になりました。中には遅くまで働かせるのは上司のマネジメントの問題だと上司への教育を徹底させて残業を減らそうとする企業もあります。

2つ目の生産性向上の取り組みでは規定/ルールの見直し、マネジメント力向上、不要業務の廃止などで、どこの企業でも行われています。また最近ではRPAや社内向けのチャットボットの導入なども盛んになっています。

3つ目のテレワークの取り組みは試行中の企業が多く、テレワークの制度化やモバイル端末の貸与、複数の勤務場所の設置などが主な施策です。テレワークで本当に仕事をしているか、業務の監視まではやりたくないという企業が圧倒的です。その場合には公平性の担保をどうするかが大きな課題になります。ちなみにテレワークの導入目的では勤務者の移動時間短縮と労働生産性の向上がほぼ同じ位の比率で上位に来ています。しかし、これは微妙な問題です。育児や介護が必要な人のテレワークは分かりますが、それで必ずしも労働生産性が上がるわけではないのです。

ここまで企業の取り組みを見てきましたが、企業の思いや働き方改革は現場や従業員個々の思いを受け止め切れているとはいえないのが現実です。どうしたらよいのか。そのためには現場・個人の思いと企業の取り組みのマッチングが必要です。現場との対話やPDCA、他社事例などを参考にして、自社にあった施策へとブラッシュアップしていくことが切実に求められています。

やりがいを満たす働き方を考える


働き方改革はこれからどこへ向かうべきなのでしょうか。企業はワークライフバランスといいますが、言葉だけになっている面があります。従業員にまで十分につたわっていないのです。従業員一人ひとりにフォーカスした時のキーワードは、個人の思いと「働く」の明日、の2つです。働き方改革のカギは個人にあります。ですから、個人の思いを満たす改革が必要です。そして、働き方を変えていくために、「働く」の明日を考えていくことが求められます。これらを意識して働き方改革を考えていく時に大きな役割を果たすのがRPAやAIの活用、社外労働力の柔軟な活用、ひとつの企業に頼らない働き方の許可・推奨などです。

ひとつめのキーワードの個人の思いを考える時に、政府の基本的考え方では「働く人の視点に立って・・・働く一人ひとりが、よりよい未来の展望を持てるように」と個人に焦点をあてた、とてもよい内容です。しかし、実際に効果が感じられたと評価する企業は49%と過半数近くに及ぶのに対して、従業員は28%と低い水準に止まっています。こからも、個人は働き方改革の現状に決して満足していないことが明らかになっています。そして、それは私自身の実感とも重なっています。

企業は長時間残業削減や生産性向上、テレワークが働き方改革だとして、取り組みを進めてきました。しかし、従業員は「利益が出た」「生産性が上がった」「残業が減った」「休みを多く取れた」などに必ずしも満足しているわけではありません。従業員の7割が知的障害者というチョークを作っている日本理化学工業という会社があります。同社の従業員は働くことが幸せにつながるという気持ちで働いています。そして、それがやりがいになって、業績の向上を実現しています。この例からも分かるように人が仕事に求めるのは、何よりもやりがいなのです。

やりがいは人それぞれで、年代、ポジション、私生活、経歴、性格などによって異なります。ですから会社が従業員に選択肢を与えて、個人が自分に最適な働き方を選ぶことができるようにすることが大切です。働き方改革は個人の思いとずれたところで、企業が一方的に実施するのではなく、個人がやりがいを満たす働き方ができるようにすることが求められています。

「働く」の明日を見据えた施策を実施


もうひとつのキーワード「働く」の明日を考える時には、働き手不足の時代に「働く」がどう変わっていくかを見ていくことが重要です。そこではまず非定型業務を中心に、労働時間ではなく、質の高いアウトプットを出せるかどうかが問題になります。匠の技の伝承なども求められます。また人材が流動化し、働き手は企業ではなく、業務の内容で仕事を選ぶようになります。そうすると仕事を定義するものさしである職務定義(ジョブディスクリプション)が必要になります。このような形で今の働き方と大きく変わる「働く」の明日がやってきます。

そんな中、すでに変わり始めていることもたくさんあります。多くの企業が社内ではメールを使わなくなり、チャットツールに置き換わっています。また保守的人材からイノベーション人材が重視され始めています。そのため、副業/兼業可にとどまらず、専門分野を持ってもらうために、専業禁止という企業さえ出てきています。また給与体系を全く変えずに、週休3日制にした企業もあります。その一方で、早い時期にテレワークを導入した外国企業ではコミュニケーション重視の観点からテレワークの禁止や制限に踏み切る動きもあります。

さらに政府は裁量労働制範囲の拡大を方針にしていますが、正反対に社員の過労死をきっかけに裁量労働制を全廃した電機メーカーもあります。加えて年次評価や目標管理は確実に廃止に向かっており、パフォーマンスマネジメントへと移行する動きが進んでいます。その他、人材面では若年層の思考変化を促すためのレンタル移籍やクラウドソーシングの活用も始まっています。学びでは、すき間時間にスマホの動画配信で学ぶマイクロラーニングやその人に合った教材を自動で提供するアダプティブラーニングも普及し始めています。こうしたダイナミックな変化が起きている中で、企業主導の働き方改革が一段落した後には、個人の思いを満たすと共に、「働く」の明日を見据えた個人に響く施策の展開が求められているのです。

働く個人のための機能を提供するGeneralist®/WR


東芝デジタルソリューションズでは人財を科学する総合ソリューション「Generalist」で働き方改革を支援します。Generalistは20年ほど前に人事処遇、報酬制度、勤怠管理からスタート。現在人材育成・キャリアマネジメント、教育(eラーニング)の3本柱でソリューションを提供しています。は導入企業8080社、900万ライセンスと人事・給与領域の国産パッケージではトップクラスで、グループ企業展開やシェアードサービスに多数採用されています。その実績の上に、2018年4月にリリースしたのが働き方改革支援の新ソリューション「Generalist®/WR」です。

企業が取り組む働き方改革を管理するツールはすでに多数存在します。そうした中、これからITが果たすべきことは個人がやりがいを持って働くために何ができるか、個人のためのツールです。そのために、Generalist®/WRは従業員が「欲しい」「楽になる」を原点に、個人の役に立つ機能を提供。従業員の「働く」をサポートし、企業の働き方改革の課題解決を支援します。

Generalist®/WRの機能の1つ目がテレワークの労務負担の軽減です。スマートフォンで勤務開始・中断・終了をワンクリックで行うことができ、それがスケジューラーに登録され、GPS情報も保存されます。労務情報はSNS(Microsoft TEAMS)に連携しているので、上長・メンバーは在宅勤務者の状況の把握ができます。2つ目がメンバーの予定の自動調整。スマートフォンでスケジュールを調整したい人を選択し、空き時間を検索し選んだメンバーの空き時間帯を表示します。スケジュールの登録も可能です。3つ目が休暇の取得を推奨する、より休みやすい仕組みづくり。退勤打刻時、翌日の予定がない場合、あるいは朝の定時時間前、その日の予定がなければ休暇取得をスマートフォンから勧めます。休暇取得の場合はスケジューラーへの登録やSNSへの投稿を自動で行えるので、気軽に休暇がとれます。

仕事の集中度をウェアラブルデバイスでチェック


4つ目が出退勤の打刻のスマートフォンで簡単に行えるようにしたことです。営業のように出先で勤務を開始する場合、出退社時にスマホで打刻、GPSで位置情報も同時に登録し、自宅で勤務を開始すると自動的に在宅勤務モードに切り替わります。5つ目がタスクのスケジューラーへの自動割り付け、6つ目が自身の生産性改善につなげる「自分の働きを知る」 ことです。スケジューラーやOfficeソフトとの連携で、予定が終わったら簡単に実績を入力、スケジュールと予実登録を管理します。そして最終的にはダッシュボードで該当月の予定状況と実績を把握、実績データ統計で働き方を見直すきっかけにします。
8つ目がメガネ型ウェアラブルデバイス「J!NS MEME」との連携による仕事の集中度チェックです。様々な予定と仕事の中で集中度が高い部分を判断、客観的に自分の働き方を分析します。この機能は他のメンバーの働き方も測ることができ、集中度が高い人は表示されるので、忙しい時に割り込まないようにできます。一般に働き方改革の評価は従業員へのアンケートで行いますが、客観的な指標になっていないのが実情です。仕事の集中度チェックで分析することで、集中度が上がっていれば、その取り組みを参考にすることができ、働き方改革に大きく貢献します。

東芝デジタルソリューションズ株式会社
インダストリアルソリューション事業部 HRMソリューション部 HRMソリューション技術担当
主任 萬 大祐

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