人事評価にAIを活用するメリットは?
できること・導入方法・事例を解説
人事評価にAIを導入したいものの、「判断をAIに任せて大丈夫か」「従業員から反発されないか」と不安な人事担当者もいるのではないでしょうか。
本記事では、人事評価にAIを活用してできることやメリット、リスクと対策、導入方法、生成AIのプロンプト例、企業の活用事例までわかりやすく解説します。
効率化と、より納得感のある評価運用の両立を目指す方は、ぜひ参考にしてみてください。
人事評価にAIは活用できる?
人事評価には、AIを活用できます。特に、目標設定のレビュー、評価コメントの作成、評価シートの要約、評価データの分析などは、AIによる支援を検討しやすい業務です。
ただし、AIが出力した評価結果をそのまま採用する運用には注意が必要です。
AIは入力された情報をもとに文章を生成・分析しますが、従業員の成果に至る経緯や、記録に残っていない貢献まで正確に把握できるとは限りません。また、学習データや入力データに偏りがあれば、出力結果にも影響する可能性があります。
そのため、AIを評価業務の補助に活用しながら、最終的な評価や昇給・昇格などの処遇については、人が根拠を確認して判断する仕組みを整えることが重要です。
人事評価のAIとは「評価判断」ではなく「評価業務」を支援する仕組み
人事評価におけるAIの主な役割は、従業員の評価ランクや処遇を自動的に決めることではありません。
AIが得意とするのは、評価業務に付随する文章の作成・要約や、データの整理・分析です。
たとえば、従業員が記入した自己評価や360度評価のコメントをAIで要約すれば、評価者が大量の文章を読む負担を軽減できます。評価コメントの下書きを生成したり、評価分布の偏りを確認したりする使い方も可能です。
一方、成果が出た背景や本人の役割、チームへの貢献、本人との対話などを踏まえた最終的な評価は、人が合理的に判断できる運用を整えることが欠かせません。
総務省・経済産業省などが策定し、2026年3月31日に第1.2版が公表された「AI事業者ガイドライン」は、AIの開発・提供・利用における適切なガバナンスやリスクへの対応を示しています。人事評価でも、AIの特性や限界を理解し、利用目的に応じた確認体制を設けることが重要です。
特に、AIの出力を過度に信頼し、人が十分な確認をしなくなる「自動化バイアス」に注意しましょう。
評価点の算出や評価ランクの割り当てをシステムで自動化する場合でも、評価制度との整合性や個別事情を確認できるようにしておく必要があります。
参考:AI事業者ガイドライン (PDF形式)(経済産業省のサイトに遷移します)
人事評価でAIを活用できる主な領域
人事評価にAIを活用できる場面は、評価プロセスによって異なります。
| 評価プロセス | AIが支援できる業務 | 人が担う主な業務 |
|---|---|---|
| 目標設定 | 目標文の整理、曖昧な表現の指摘 | 本人との目標のすり合わせ、目標の最終決定 |
| 自己評価 | 実績の整理、自己評価コメントの下書き | 成果の背景や本人の努力・役割の確認 |
| 評価者による評価 | コメントの要約、表現の改善、評価分布の確認 | 評価基準に沿った判断、個別事情の考慮 |
| フィードバック面談 | コメント案や想定質問の作成 | 面談、本人への説明、育成支援 |
| 最終決定・処遇反映 | 過去評価との差異の抽出、データ整理 | 昇給・昇格などの最終判断 |
たとえば、目標設定ではAIに文章の曖昧さを指摘させ、上司と部下が最終的な目標を決定します。
評価時期には、AIで実績やコメントを整理し、評価者が実際の成果や行動を確認したうえで評価を行います。
このように、AIを活用して情報整理や文章作成を効率化し、人が評価や対話に集中できるようにすることが、効果的な活用方法です。
AIを人事評価に活用してできること
AIは、目標設定や自己評価、評価コメントの作成、面談準備といった人事評価の各プロセスに加え、評価データを活用した人材育成や配置の検討にも利用可能です。
特に生成AIは文章の整理・要約・生成を得意としているため、評価業務と相性のよい領域が多くあります。
ここでは、具体的に何ができるのかを4つの領域に分けて紹介します。
目標設定や自己評価・振り返りをレビューする
AIは、従業員が作成した目標や自己評価のレビューに活用できます。
たとえば「売上を伸ばす」「業務を効率化する」といった曖昧な目標に対し、期限や達成基準が不足していることを指摘し、より具体的な目標へ改善するための案を提示できます。
また、従業員が箇条書きで記録した実績を整理し、自己評価コメントの下書きを作成することも可能です。
文章作成の負担を軽減できるため、従業員自身が成果や取り組みを整理して伝えやすくなる点がメリットです。
評価コメントやフィードバックの作成を支援する
上司が部下に伝える評価コメントやフィードバックの下書き作成にもAIを活用できます。
本人の自己評価や実績、評価基準などをもとに、「成果」「強み」「改善点」「次期への期待」といった観点で文章を整理できます。
また、AIに「人格を否定する表現を避ける」「事実と評価を分ける」「改善点だけでなく期待する行動も示す」といった共通ルールを指定すれば、そのルールに沿ってコメントをレビューさせることも可能です。
ただし、AIが生成した文章には事実誤認や不自然な表現が含まれる場合があります。そのまま本人へ伝えるのではなく、評価者が事実関係やニュアンスを確認したうえで修正しましょう。
評価シートや360度評価を要約・分析する
AIは、大量の評価シートや360度評価のコメントを整理する際にも役立ちます。
360度評価とは、上司だけでなく、同僚や部下など複数の立場から評価やフィードバックを集める仕組みです。
360度評価では、上司・同僚・部下など複数の人から記述式のコメントが集まるため、内容を確認するだけでも大きな負担になります。
AIを活用すれば、大量のコメントを「よく挙げられている強み」「改善を求められている点」「具体的なエピソード」などに分類・要約できます。
また、人格否定や過度に感情的な言葉など確認が必要な表現の候補を抽出し、人事担当者によるチェックを促すことも可能です。
ただし、AIによる要約では少数意見が抜け落ちたり、文脈を誤って解釈したりする場合があるため、重要な判断に利用する際は必ず元のコメントと照合してください。
評価傾向や人材データを育成・配置に活用する
AIやデータ分析を活用すると、蓄積した評価データを人材育成や配置の検討にも役立てられます。
| 評価プロセス・活用領域 | AIが支援できる主な業務 |
|---|---|
| 目標設定 | 目標文の整理、曖昧な表現の指摘、改善案の提示 |
| 自己評価 | 実績メモの整理、自己評価コメントの下書き作成 |
| 評価者による評価 | コメントの要約・校正、評価分布の分析 |
| フィードバック面談 | コメント案、想定質問、面談の進行案の作成 |
| 人材活用 | 面談記録の要約、スキル情報の整理、配置・育成検討の支援 |
たとえば、部門別・評価者別の評価分布を比較すれば、特定の評価者による評価点だけが高い、あるいは低いといった傾向を発見する材料になります。
また、従業員のスキル、経験、評価履歴、本人のキャリア希望などを組み合わせれば、配置や育成方針を検討する際の参考情報として活用できます。
ただし、評価分布に差があるからといって、直ちに「評価者にバイアスがある」と判断できるわけではありません。職種や目標難易度、メンバー構成などの違いも確認する必要があります。
AIを導入する際は、すべての業務を一度に対象とするのではなく、自社が負担を感じている業務から活用を始めるとよいでしょう。
人事評価にAIを導入する4つのメリット
ここでは、評価業務の負担軽減、評価コメントの品質向上、評価の偏りの発見、そして人材データの活用という4つのメリットを紹介します。
評価業務を効率化できる
人事評価にAIを活用する代表的なメリットは、評価業務の効率化です。
評価時期になると、管理職は通常業務と並行して目標確認、自己評価の読み込み、評価コメントの作成、面談準備などを行わなければなりません。
評価対象者が多い管理職ほど、文章を読み込んだり作成したりする負担が大きくなりやすいでしょう。
AIを活用すれば、次のような作業を支援できます。
- 自己評価や実績記録の要約
- 評価コメントの下書き作成
- 誤字脱字や不自然な表現のチェック
- 面談で確認する事項の整理
- 評価データの集計や傾向分析
たとえば、管理職が評価コメントの下書き作成に費やしていた時間を短縮できれば、その分を評価根拠の確認や部下との面談準備に充てられます。
ただし、AIの出力確認や修正にも時間がかかるため、実際の削減効果は導入後に測定する必要があります。
目標や評価コメントの品質を揃えやすい
評価者によって文章力やコメントの詳しさに差があると、フィードバックの品質にもばらつきが生じます。
AIに「事実を具体的に記載する」「改善点だけでなく今後への期待を示す」といった共通ルールを設定してレビューさせれば、評価コメントの粒度やトーンを一定程度そろえやすくなります。
ただし、文章の形式が整っていても、評価の内容そのものが正しいとは限りません。
評価基準が曖昧な状態では、AIを導入しても評価の公平性は保証されないため、制度や運用ルールの整備と併せて活用しましょう。
評価者ごとのばらつきや偏りを発見しやすい
AIやデータ分析を活用すると、評価者や部署ごとの評価傾向を可視化できます。
人事評価では、同じ評価基準を使用していても、評価者によって基準の解釈や評価点の付け方が異なる場合があります。
評価データを整理・分析すれば、評価会議で確認すべき箇所を把握しやすくなるでしょう。
| 課題 | AI・データ分析による支援 | 期待できる効果 |
|---|---|---|
| 評価者ごとの評価の厳しさの違い | 評価点の分布や平均との差を可視化 | 評価会議で確認すべきポイントを把握しやすい |
| 評価コメントに含まれる不適切な表現 | 人格否定や感情的な表現の候補を抽出 | 評価者による見直しを促せる |
| 前年度からの評価結果の大きな変化 | 過去評価との差異を抽出 | 評価根拠を再確認しやすい |
たとえば、ある部署の高評価者の割合がほかの部署より高い場合、目標難易度や評価基準の運用に違いがないか確認できます。
ただし、評価分布をそろえること自体が、公平な評価につながるわけではありません。
部署ごとの成果や職務内容が異なる以上、評価結果に差が生じることもあります。
AIの分析結果を結論として扱わず、人が評価の妥当性を確認するための材料として活用することが重要です。
人材データを育成・配置にも活用できる
評価データを蓄積・分析すれば、人材育成や配置の検討にも活用できます。
たとえば、次のような情報を一元管理することで、従業員の経験や能力を把握しやすくなります。
- 過去の評価結果や評価コメント
- 保有資格やスキル
- 配属・異動履歴
- 研修の受講履歴
- 本人のキャリア希望
AIによる検索や分析を組み合わせれば、必要な情報を探したり、育成課題を整理したりする作業を効率化できます。
たとえば、新たなプロジェクトのメンバーを検討する際に、必要なスキルや業務経験を条件として人材情報を検索する使い方が考えられるでしょう。
また、従業員の現在のスキルと、希望する職務に必要な能力を整理すれば、今後の研修や経験機会を検討する材料にもなります。
ただし、AIによる適性判断や推薦結果だけで配置を決定するのではなく、本人の希望や業務上の事情も含めて検討しましょう。
評価を昇給・昇格のための手続きだけで終わらせず、人材育成につなげられることも、AIや人材データを活用するメリットです。
人事評価AIの5つのリスクと対策
人事評価にAIを導入する際は、メリットだけでなくリスクも理解しておく必要があります。
| リスク | 具体的な問題 | 主な対策 |
|---|---|---|
| データやAI出力の偏り | 過去の評価に含まれる偏りがAI出力へ反映される可能性がある | データや出力結果を定期的に検証する |
| 判断根拠の不透明化 | なぜその結果になったのか説明できない | AIだけで判断せず、根拠となる事実を確認する |
| AIへの過信 | AIの回答を正解だと思い込みやすい | 人が必ず確認する運用ルールを設ける |
| 個人情報・機密情報の漏えい | 人事データが不適切に外部へ送信される | 利用規約・契約・データ利用条件を確認する |
| 従業員への説明不足 | AIによる監視や自動評価への不安を招く | 利用目的・対象データ・人の関与を説明する |
ここからは、それぞれのリスクと具体的な対策を解説します。
学習データの偏りを防ぐ
AIを人事評価に活用する際は、学習データや参照データに含まれる偏りに注意が必要です。
過去の人事評価データに偏りが含まれている場合、そのデータをAIに学習させたり、AIが分析時に参照したりすることで、分析結果や出力にも偏りが反映される可能性があります。
たとえば、特定の職種や属性の従業員が過去に低く評価されていた場合、そのデータを参照する仕組みでは、不適切な傾向が出力へ影響することも考えられます。
また、生成AIが評価コメントを作成する場合でも、入力情報が一部の実績に偏っていれば、成果の全体像を反映できないおそれがあるでしょう。
こうしたリスクを抑えるには、次のような対策が有効です。
- 評価に必要なデータが適切に収集されているか確認する
- 過去の評価結果を無条件に正しいデータとして扱わない
- AIの出力に不合理な差が生じていないか検証する
- 職種や役割、目標難易度などの違いを考慮する
- AIの出力が不適切な場合に修正・利用停止できる仕組みを設ける
公平性を検証する目的で、属性別に結果を分析する必要が生じる場合もあります。性別や年齢などの属性情報を扱う場合は、利用目的や必要性、適法性を明確にし、アクセス権限などを適切に管理してください。
判断根拠を明確にする
AIによる評価や分析の根拠が不明確な場合、評価者が従業員に結果を説明できなくなるおそれがあります。
特に、AIが算出した点数だけを根拠に「あなたはこの評価です」と説明する運用は避けるべきです。人事評価でAIを使用する場合は、次の情報を確認できる状態にしておくことが重要です。
- どの評価基準を使用したか
- どの実績や行動記録を参照したか
- AIがどの業務を支援したか
- 評価者がどのような理由で最終判断したか
評価面談では、本人の具体的な成果や行動、事前に定めた評価基準などをもとに、人が自分の言葉で評価理由を説明できる状態にしておく必要があります。
参考:個人情報保護に係る主要課題に関する海外・国内動向調査 (PDF形式)(個人情報保護委員会のサイトに遷移します)
AIの出力を過信せず人が最終判断する
AIは、もっともらしい誤情報を出力することがあります。
また、評価対象者の置かれた状況や人間関係など、入力されていない事情まで正確に判断はできません。
そのため、AIの回答は最終的な評価ではなく、判断を支援するための参考情報として扱うことが重要です。
社内のAI利用ルールには、少なくとも次の方針を盛り込むことをおすすめします。
- AIの出力をそのまま評価結果として採用しない
- 出力内容を元の実績や行動記録と照合する
- AIによる評価案は参考情報として扱う
- 最終的な評価と処遇は、権限を持つ担当者が判断する
- 誤りが判明した場合の訂正方法を定める
必要に応じて、AIの提案を採用・修正・却下した経緯を記録しておくと、説明責任を果たすうえでも役立ちます。
個人情報の取り扱いに注意する
人事評価にAIを活用する際は、従業員の個人情報や社内の機密情報を適切に管理する必要があります。
人事評価では、氏名や所属、評価結果、面談記録、キャリア希望など、従業員に関するさまざまな情報を扱います。これらの情報が外部に漏えいすると、従業員のプライバシーを侵害したり、企業への信頼を損なったりするおそれがあるため、注意が必要です。
特に、外部の生成AIサービスに評価シートや面談記録を入力する場合は注意が必要です。サービスの契約内容や設定によっては、入力した情報が一定期間保存されたり、AIの学習やサービス改善に利用されたりする場合があります。
そのため、AIを導入する際は、以下の項目を確認しましょう。
| 確認項目 | 具体的な対策 |
|---|---|
| 入力情報の制限 | 評価業務に必要な情報だけを入力する |
| 学習利用の有無 | 入力データがAIの学習に利用されるか確認する |
| データの保存・削除 | 保存期間や保存場所、削除方法を確認する |
| アクセス権限 | 評価者や人事担当者など、必要な人だけが閲覧できるようにする |
| 社内ルールの整備 | 利用可能なAIサービスや入力してよい情報を明確にする |
たとえば、AIで評価コメントの下書きを作成する場合、従業員の氏名や社員番号を入力せず、必要な実績や評価基準だけを使用する方法が考えられます。
ただし、氏名を削除しても、所属部署や役職、実績などの組み合わせから個人を特定できる場合があるため、情報の取り扱いには十分な注意が必要です。
従業員への説明を徹底する
従業員への説明がないままAIを導入すると、「AIに勤務態度を監視されているのではないか」「AIだけで評価を決められるのではないか」といった不安につながります。
そのため、導入前にAIの利用目的や対象業務、取り扱うデータ、評価者の関与範囲などを明確に説明することが重要です。
たとえば、次のような内容を共有しましょう。
| 説明項目 | 従業員に伝える内容の例 |
|---|---|
| 導入目的 | 評価コメントの作成や情報整理を効率化するため |
| 利用するデータ | 自己評価、実績記録、評価コメントなど |
| AIの役割 | 文章の要約や下書き作成などの業務支援 |
| 人の関与 | 最終的な評価や処遇は人が確認・判断する |
| 情報管理 | データの保存や閲覧権限に関するルール |
| 問い合わせ先 | AIの利用や評価結果について相談できる窓口 |
また、AIを導入した後も、従業員が評価の根拠を確認できる仕組みや、疑問を相談できる窓口を設けるとよいでしょう。
従業員の理解を得るには、AIを導入すること自体を目的にするのではなく、どのような業務を改善し、どのように評価の適切な運用を維持するのかを伝えることが大切です。
人事評価AIの選び方と導入方法
人事評価にAIを導入する際は、AI機能の豊富さだけでサービスを選ばないことが重要です。
評価コメントの作成を効率化したいのか、評価データを分析したいのか、人材育成や配置まで活用したいのかによって、適切なツールは異なります。
ここでは、自社の課題に合ったAIの選び方と、導入を成功させるための進め方を解説します。
自社の課題に合ったAIの活用方法を選ぶ
最初に、「AIによって何を改善したいのか」を明確にしましょう。
たとえば評価コメントの作成負担を減らしたい場合は、文章生成・要約に強い生成AIが向いています。
一方、部署・評価者別の評価分布を確認したい場合は、評価データの可視化や分析に強いシステムが適しています。人材配置や育成にもデータを利用したい場合は、人事評価だけでなくタレントマネジメントまで対応しているサービスを検討するとよいでしょう。
目的が曖昧な状態でAIを導入すると、「機能は豊富だが現場で使われない」という状態になりやすいため、解決したい課題から逆算して選ぶことがポイントです。
機能・連携・セキュリティを比較する
人事評価AIを選ぶ際は、AI機能の充実度だけでなく、既存システムとの連携やセキュリティ対策も比較することが重要です。
まず、機能面では、自社の評価制度や業務フローに対応しているか確認しましょう。
たとえば、目標設定のレビューや評価コメントの作成を効率化したい場合は、生成AIによる文章作成・添削機能が役立ちます。一方、評価者ごとの傾向を把握したい場合は、評価分布の可視化や分析機能が必要です。
また、すでに人事・給与システムを利用している場合は、従業員情報や評価データを連携できるかも確認しましょう。システム間で情報を連携できれば、データの二重入力や転記ミスを減らし、人事情報を一元的に管理しやすくなります。
費用対効果を確認する
AI導入では、サービス利用料だけでなく、初期設定、既存システムとの連携、社内ルールの整備、従業員への研修などにもコストがかかる場合があります。
そのため、導入前に費用対効果を試算しておきましょう。
たとえば「評価者30名が1人あたり年間10時間削減できる」「人事担当者の集計業務を年間50時間削減できる」といった形で、想定される削減時間を洗い出します。削減できる工数に人件費を掛け合わせれば、業務効率化による効果を金額換算できます。
一方、評価の質や従業員の納得感などは金額だけでは測りにくいため、定量指標と定性指標の両方を設定しておきましょう。
一部の業務でPoCを行ってから導入範囲を広げる
最初から人事評価のすべてをAI化するのではなく、小規模なPoCから始める方法もあります。
PoC(Proof of Concept:概念実証)とは、新しい技術や仕組みが実際に活用できるかを検証する取り組みです。
たとえば、次のような業務を対象にするとよいでしょう。
- 評価コメントの誤字脱字チェック
- 評価コメントの表現改善
- 目標設定の記載内容のレビュー
- 360度評価コメントの要約
まずは、AIが従業員の処遇を直接決定しない用途から検証し、出力の正確性や業務削減効果を確認します。
PoCでは、次のような指標を設定すると評価しやすくなります。
| 評価指標 | 確認方法 |
|---|---|
| 作業時間 | 導入前後の所要時間を比較する |
| 出力の正確性 | 事実誤認や根拠のない記述の件数を確認する |
| 修正の負担 | AIが生成した文章の修正量や修正時間を確認する |
| 利用者の評価 | 評価者・被評価者にアンケートを行う |
| 情報管理 | データの取り扱いや権限設定に問題がないか確認する |
検証結果をもとに課題を改善し、問題がなければ対象部署や活用範囲を段階的に広げていくことが重要です。
生成AIを人事評価で活用するプロンプト例
生成AIは、指示の出し方によって出力の質が大きく変わります。
人事評価で利用する際は、「何をしてほしいのか」だけでなく、評価基準、守るべき条件、出力形式まで具体的に指定することがポイントです。
なお、外部の生成AIへ入力する場合は、氏名や顧客名などの個人情報・機密情報を削除・マスキングするなど、自社の情報管理ルールに従って適切に処理してください。
目標設定・振り返りを改善するプロンプト例
目標設定では、曖昧な表現を具体化するためのレビュー役として生成AIを活用できます。
たとえば、目標の達成基準や期限、具体的な行動が明確になっているかをレビューさせる使い方です。
以下のプロンプトでは、生成AIが勝手に数値や成果を追加しないように条件を指定しています。
あなたは、人事評価における目標設定を支援するアシスタントです。
以下の目標案を確認し、評価期間終了時に達成度を判断できる内容になっているかレビューしてください。
【目標案】
〇〇〇〇
【評価の観点】
- 目標を達成した状態が具体的に示されているか
- 達成期限が明確になっているか
- 数値などの達成基準が必要な場合、適切に設定されているか
- 本人が取り組む行動が明確になっているか
- 目標の内容と達成基準に矛盾がないか
【出力形式】
- 目標案のわかりにくい点
- 改善するためのポイント
- 元の意味を変えない改善例
- 上司と本人が確認すべき事項
【注意事項】
- 入力されていない成果や数値を推測して追加しないでください。
- 情報が不足している場合は、仮の数値を設定せず「要確認」と記載してください。
- 目標の難易度や達成可能性を、根拠なく判断しないでください。
- 元の目標の意図を変えないでください。
AIから改善案が提示されたら、本人と上司が内容を確認し、必要に応じて修正しましょう。
また、期末の振り返りでは、同じように「目標」「実績」「課題」「次期の取り組み」を入力し、事実と本人の解釈を分けて整理させることもできます。
ただし、AIが整理した内容が実際の取り組みを正しく反映しているか、必ず本人が確認することが重要です。
評価コメント・フィードバックを作成するプロンプト例
評価コメントの作成では、入力された実績や行動だけを使い、事実にない情報を追加させないことが重要です。
また、評価基準に沿った文章を作成するため、評価期間中の事実や本人の自己評価、評価者が決定した評価などを明確に入力しましょう。
以下は、管理職が部下へのフィードバックコメントを作成する際のプロンプト例です。
あなたは、管理職の人事評価コメント作成を支援するアシスタントです。
以下の情報のみを使用して、部下への評価フィードバックの下書きを作成してください。
【評価期間中の事実】
〇〇〇〇
【本人の自己評価】
〇〇〇〇
【会社の評価基準】
〇〇〇〇
【評価者が決定した評価】
〇〇〇〇
【今後期待すること】
〇〇〇〇
【作成条件】
- 入力されていない実績やエピソードを追加しない
- 事実と評価者の判断を区別する
- 人格や性格を否定する表現を使わない
- 他の従業員との比較を行わない
- 具体的な成果や行動を中心に記載する
- 改善点だけでなく、今後期待する行動も示す
- 威圧的な表現を避け、建設的な文章にする
- 評価ランクや評価点を変更・再判定しない
【出力形式】
以下の順番で、300文字程度の評価コメントを作成してください。
- 評価期間中の成果
- 特に評価できる行動や強み
- 今後の改善点
- 次期への期待
入力情報が不足している箇所は推測で補わず、「追加確認が必要」と明記してください。
このように条件を指定すると、入力情報に基づいた評価コメントを作成しやすくなります。
ただし、生成AIが評価コメントを生成する過程で、事実と異なる文章を作成する可能性は残ります。
最終的には評価者が実績や評価基準との整合性を確認し、本人との関係性や実際の状況も考慮して修正しましょう。
評価面談の内容を整理するプロンプト例
評価面談の準備では、生成AIを使って行動記録を評価基準ごとに整理し、確認すべき質問を抽出できます。
たとえば、評価者が記録した業務実績や行動エピソードをもとに、評価の根拠となる事実と追加で確認すべき事項を整理する使い方です。
以下のプロンプトでは、生成AIが評価点を決定せず、面談準備に必要な情報だけを抽出するように指示しています。
あなたは、人事評価面談の準備を支援するアシスタントです。
以下の評価基準と行動記録を確認し、面談で確認すべき事実や質問を整理してください。
【評価基準】
・自律性:指示を待つだけでなく、自ら課題を発見して行動したか
・顧客価値:顧客の課題を理解し、価値提供につながる行動をしたか
・チーム貢献:周囲と協力し、チームの成果に貢献したか
【行動記録】
〇〇〇〇
【出力形式】
評価基準ごとに、以下の4項目を表形式で整理してください。
- 該当する行動記録の記述
- 評価の根拠となり得る具体的な事実
- 情報が不足している点
- 本人に追加で確認すべき質問
【注意事項】
- 入力されていない事実を推測しないでください。
- 根拠となる記述がない場合は「該当記録なし」と記載してください。
- 本人の性格や能力を断定しないでください。
- 評価点や評価ランクは決定しないでください。
- 質問は本人を誘導するものではなく、事実確認に役立つ内容にしてください。
生成AIの出力はあくまで面談準備の材料です。評価の根拠として使用する場合は、必ず元の行動記録と照合してください。
人事評価・人材育成にAIを活用している事例
東洋建設株式会社では、建築施工職員を対象とした「能力評価システム」にAIを活用しています。
職位ごとに設定された能力要件について、組織運営や工事管理などの達成レベルを172項目に分類し、人材管理システムで評価したデータをAIで分析します。
分析結果は「能力評価シート」として従業員へフィードバックされ、自身のスコアや同一職位における偏差値・平均値、スキルの特徴などを把握できる仕組みです。
同社は学習管理システムも導入しており、能力評価データを従業員の成長支援に活用するとともに、将来的には人事データとの連携や個人別ロードマップの作成などへの活用も予定しています。
参考:技術者の能力向上にAIを活用した新システムを導入(東洋建設株式会社のサイトに遷移します)
人事評価へのAI活用に向けたデータ基盤を整えるならGeneralist
人事評価にAIを活用すれば、目標設定のレビューや評価コメントの作成、評価データの分析などを効率化できます。また、蓄積した評価データを人材育成や配置の検討に役立てることも可能です。
ただし、AIの導入だけで評価の公平性が保証されるわけではありません。AIは評価者の判断を支援するツールとして活用し、人が評価根拠を確認できる運用を整えることが重要です。
さらに、AIの活用効果を高めるには、土台となる人事データを正確に管理し、必要な情報を活用できる環境づくりが欠かせません。
そこでおすすめなのが、東芝の人財管理ソリューション「Generalist」です。
Generalistは、人事・給与情報の一元管理を支援するシステムです。自然言語による指示から人材の検索条件を作成できる「人財検索AI機能」を提供しています。AIが自然言語による要望から検索意図を整理し、検索条件案を提示することで、人財情報の検索を支援します。
人事評価へのAI活用に向けて、人事データの管理基盤を整えたい企業は、Generalistの導入を検討してみてはいかがでしょうか。

