デジタルで豊かな社会の実現を目指す東芝デジタルソリューションズグループの
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AIレコメンドによる自律型人材の育成で企業の成長に貢献

東芝デジタルソリューションズには、LMS(Learning Management System:学習管理システム)市場における多くの導入実績があります。「人」を、価値を生み出す企業の「財産」として捉え、社員一人ひとりのスキルやコンピテンシーを最大限に引き出して企業の戦略に結びつける仕組みづくりが重要という考えの基、長年にわたりさまざまな企業を支援してきました。ここでは、これからの企業の持続的な成長に不可欠な自律型人材の育成に向けた、リスキリング・プラットフォーム「Generalist e-University」を紹介します。

※コンピテンシー:ハイパフォーマンスを発揮する人材に共通する行動特性のこと。


VUCAの時代に活躍できる人材を育てる学習環境とは?


世界はいま、不確実で変化が激しく予測が困難な、VUCA(Volatility:変動性、Uncertainty:不確実性、Complexity:複雑性、Ambiguity:曖昧性)の時代といわれています。地球温暖化などに伴う気候変動や自然災害、新型コロナウイルス感染症の拡大、地政学リスクの高まりなど、予測できない事象が次々と起こっています。また、AIやIoT、ブロックチェーンといったデジタル技術の急激な進化に伴い、これまでにない新しいビジネスモデルやサービスが創出され、さらにはコロナ禍をきっかけにリモートワークが普及してフレキシブルな働き方になるなど、私たちの身近な環境でも大きな変化が続いています。これらに加え、持続可能な社会の実現を目指したSDGs(持続可能な開発目標)への取り組みや、最近では多様性と包摂性(インクルージョン)の推進により、多様なバックグラウンドを持つ人々が活躍できる社会を目指す動きが広がるなど、世界中で、人や地球の将来を見据えた活動が進められています。

このような状況の中、企業が持続的に成長していくためには、環境の変化に柔軟かつ素早く対応する必要があります。世界中で次々と現れる新たな事象や技術、活動に伴い、企業に求められる行動が常に変化しているからです。環境の変化に臨機応変に対応しながら、自社が掲げる目標の達成に向けて行動するためにも、適切な投資で人材を柔軟に育成することが、企業にとって重要になっています。そこで最近注目されているのが、「リスキリング」です。これは、技術革新やビジネスモデルの変化に対応するために、新しい知識やスキルを学んだり、学び直したりすることを意味します。リスキリングによって社員が成長し、企業の持続的な成長へとつながることが期待されています。経済産業省や厚生労働省により補助や助成が行われるなど、リスキリングに関するさまざまな取り組みや支援が、国としても進められています。

※参考:「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2024年改訂版」が、2024年6月21日に閣議決定されました。
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/atarashii_sihonsyugi/index.html

国によって取り組みや支援が整えられる一方で、現実には、多くの企業が社員の育成に関する悩みを抱えています。厚生労働省の調査によると、「約8割の事業所で能力開発や人材育成に関する問題があることがうかがえる。」との結果が示され、また問題があると回答した事業所の約半数からは、「指導する人材が不足している」「人材育成を行う時間がない」、さらには「育成を行うための金銭的余裕がない」といった回答が報告されているのが現状です。

※厚生労働省による令和5年度「能力開発基本調査」の結果公表:https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/newpage_00159.html

リスキリングを有効に行うためにも、従来の集合教育による学びに加えて、今後は個人ごとに、将来必要となる、あるいはさらに磨きたい知識やスキルを自由に学べる学習環境を整えることが重要です。学びたいことをいつでも学べる環境を構築することで、社員の自発的な成長が期待できるようにもなります。

世の中の流れや企業の悩みから、さまざまな企業が持続的な成長に向けて人材を育成するために、そして社員一人ひとりが自ら学びたいことを選択して取り組む自律的な人材へと成長するために有効な仕組みとは、どのようなものなのか。東芝デジタルソリューションズが、25年間にわたるLMS(Learning Management System:学習管理システム)市場での経験を基に思案し、たどり着いたのが、リスキリング・プラットフォーム「Generalist e-University」です。


東芝が提供するリスキリング・プラットフォームの3つの視点


当社が考えるリスキリング・プラットフォームは、社員が「自ら学びたいことを選んで、自分で育っていく」ための環境です。多くの教育コンテンツ(教材)を学ぶことができ、またAIによって個人のスキルに応じた教材を提案(レコメンド)するなど、社員一人ひとりの学習を手厚くサポートします。これにより、自律型人材の育成を支援し、企業の成長に貢献します。リスキリング・プラットフォームの実現にあたり意識した主な視点を、3つ紹介します(図1)。

1つ目は、学びの選択肢をいかに増やすか、ということです。当社には、教材を提供するさまざまな企業と、長年にわたり連携してきた実績があります。この強みを生かし、例えば、グラブデザインや日経BP、NewsPicksなどの教材を学べるようにしました。また、マネージメントやコンプライアンス、ビジネススキル、ITスキル、各種技術や技能、語学など、さまざまな分野の内容が学べます。最近は、デジタルトランスフォーメーション(DX)に関する教材が選ばれる傾向が高まっています。教材を提供する企業にとって、このような情報は有用です。学習のトレンド情報などを共有することで教材づくりを支援し、より質の高い教材を学習者に届ける。この循環によって価値を向上し続けることで、教材を「つくる側」と「つかう側」の双方に貢献するデータサービスとなることを目指しています。

2つ目として、社員が自ら教材を選んで学習するためには、どのような仕組みが効果的なのかを考えました。例えば、学びたい教材を、そのタイトルなどに含まれるキーワードを使って検索する方法では、学習者が求める教材を探し出すことが困難な場合もあります。そこでこの検索を、「プレゼンが上手になりたい」「営業で活躍したい」というような、学習者が苦手に感じたり、より磨き上げたいと考えたりしている分野やスキル、あるいは目指す姿などに関連する曖昧な表現で行っても、適切な教材にたどり着くことを目指しました。そこでは、学習者の年齢や専門といった属性や、さまざまな教材を学んでいくことで蓄積される理解度のような学習の履歴なども用いて、個人に適切な教材をレコメンドしていきます。もちろん、キーワード検索や類似検索による検索も可能です。

3つ目は、社員がそれぞれのタイミングで自由に学習できること、また企業にとって社員が学習した実績を把握しつつ費用面の悩みを解消できる仕組みです。当社では、ポイント制を用いることにしました。企業は、ポイントをチャージ(購入)し、準備したポイントを社員に割り当てる。そして社員は、割り当てられたポイントの範囲で、自由に教材を選んで学べるものです。与えられたポイントをすべて消化し、さらなる学びを希望する社員は、管理者に追加のポイントを要求することも可能です。これによって、社員は決められた範囲内で空き時間やスキマ時間などを用いて自由に学び、企業は柔軟なポイントの運用により費用を制御しながら効果的に社員の育成へつなげることができます。


「Generalist e-University API」による「学びの場」の統合で、学習効率を一変する


前述した3つの視点を基に実現したリスキリング・プラットフォームの全体像を説明します(図2)。「学びの場」として、学習者や学習の管理者が利用するポータルを準備しました。学習者のための教材提案やポイントの管理などが行える場です。パソコンやスマートフォンなどで利用でき、操作性やデザインにも配慮しました。また、当社が長年提供しているeラーニングのソリューション(Generalist/LM)やクラウドサービス(Generalist/LW)により培ってきた経験に基づく多種多様な教材を一元管理する「Content Community Cloud(C3)」、C3にある教材の販売やそれに伴う各種処理を担う「EC(Electronic Commerce)基盤」、そしてAIレコメンドの学習用データとして学習の履歴を蓄積する「LRS(Learning Record Store)」があります。C3とEC基盤は、Web API「Generalist e-University API(以下、e-University API)」を利用して連携しています。

※API:Application Programming Interface

e-University APIの利用により、さまざまなシステムやサービスとの連携も可能です。例えば、リスキリング・プラットフォームにある教育の情報などを既存の企業ポータルに呼び出し、企業ポータルを起点として社員に教育を受講させることもできるようになります。また、e-University APIを用いてGeneralist/LMの機能を活用し、お客さまのオリジナルの画面を作ることも可能です。オリジナルの画面に、Generalist/LMで作成して配信しているお客さま独自の教材や、リスキリング・プラットフォームの教材を統合して表示し、社員に受講させることも可能となります。企業における教育の場を1つにまとめることで、社員の学びやすさと企業の管理のしやすさの向上に貢献します(図3)。


複数のAI技術を組み合わせて実現したAIレコメンド


学習者それぞれに適切な教材をレコメンドする機能は、当社の特長です。東芝グループ独自のAI技術やマイクロソフトの「Azure OpenAI Service」など、複数のAI技術を活用し、実現しています。学習者による自然言語での、目指す姿ややりたいことの入力に対し、その学習者の属性や理解度などを加味した生成AIへ問い合わせるプロンプトの生成や、解決策の生成、適切な教材の選出と提示を、それぞれのAIが分担して行います。

適切な教材の選出にあたっては、東芝グループ独自のレコメンドエンジンを用いました。まず、解決策に関する特徴量を算出してベクトル化(特徴量ベクトルの算出)を行い、次に教材を一元管理しているC3にある教材の中から、解決策の特徴量ベクトルと近似度の高い特徴量ベクトルを持つ教材をピックアップし、レコメンドするというものです。

複数のAIを組み合わせて実現したレコメンドの機能により、例えば、学習者による「コンサルタントになりたい」という入力に対して、「20代の男性」「IT関連技術」などの属性情報や、受講の履歴などを加味して解決策の生成を行い、C3にある教材から解決策に応じた教材を選択し、レコメンドします。こうして、学習者の現状と目指す姿や習得したいスキルに合わせて適切な教材をレコメンドする、AIパーソナライズドラーニングを実現しています。(図4)。


今後も進化するリスキリング・プラットフォームで企業の成長に貢献


さらに現在、学習に関連する学習者のさまざまな履歴の蓄積を基に、学習者が教材のどのような部分で時間を使っていたのか、理解度を深めていたのかといった情報を把握し、レコメンドに活用することを進めています。東芝独自の技術の活用により実現する機能です。この技術を強化してAIレコメンドを進化させ、より高度な学習のアシスタントの実現を目指しています。

また教材については、当社が一元管理するC3に加えて、Udemyをはじめとする世の中に展開されている主要なオンライン学習動画サービスと連携する準備も進めています。C3の教材と同様に、学習者用のポータルで検索できるとともに、レコメンドの対象教材にも含まれるようになります。より充実した教材の中から、いまの自分に合った教材を見つけ出せるようになるでしょう。

東芝デジタルソリューションズは、社員が自ら学びたいことを選んで育っていくための環境づくりを、リスキリング・プラットフォーム「Generalist e-University」で実現し、企業における自律型人材の育成に貢献していきます。これは、世の中にある有効な教材から適切な教材を社員個人のスキルに応じてレコメンドする、AIパーソナライズドラーニングです。社員一人ひとりの満足度を高めながら、効率的な社員全体のスキルアップを支援し、VUCAの時代に生きる企業の持続的な成長に貢献していきます。

  • この記事に掲載の、社名、部署名、役職名などは、2024年12月現在のものです。
  • この記事に記載されている社名および商品名は、それぞれ各社が商標または登録商標として使用している場合があります。

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