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製造業の企業同士がつながる場を提供し、サプライチェーンの強靭化・高度化に貢献

近年、自然災害や貿易摩擦などをきっかけに世界各地で生産や物流が停滞するといった、サプライチェーンに影響を及ぼす事象が増えています。先行きが不透明で未来の予測が困難な時代において、企業には、強靭(きょうじん)なサプライチェーンの構築と同時に、カーボンニュートラルのような環境へ配慮する取り組みも求められています。このような状況の中、東芝デジタルソリューションズは、デジタル化の推進とデータサービスによる新たな価値の提供に向け、サプライチェーンを構成する企業が互いにつながり、データの可視化や有効活用ができるサプライチェーン・プラットフォーム「Meister SRM ポータル」の提供を始めました。ここでは、Meister SRM ポータルとはどのようなものか、また、それがもたらす効果や今後の発展についてご紹介します。


企業に求められるサプライチェーンの強靭化と透明性


地震や豪雨などによる自然災害の発生や、地政学リスクや貿易摩擦などの高まり、重要な産業インフラや企業を狙ったサイバー攻撃など、さまざまな要因が影響し、サプライチェーンには混乱が生じます。

ここ数年間にわたる新型コロナウイルス感染症の流行は、人手や原材料の不足、物流の停滞などによって、企業活動を継続することの危うさを浮き彫りにしました。例えば、製造業では、完成品を構成する部品が1つでも不足すると、生産がストップします。実際に、半導体が不足し、パソコンや自動車などの製造工場において、一時的な減産や生産の停止を余儀なくされました。

一方で、地球温暖化による環境問題への配慮から、脱炭素に向けた動きが加速しています。2050年までに、二酸化炭素(CO2)をはじめとする温室効果ガス(GHG:Greenhouse Gas)の排出量を全体でゼロにするという、カーボンニュートラルの実現が多くの国で目指され、そこでは自国だけでなく世界全体での実現という観点で検討が進められています。つまり企業には、自社の生産活動における温室効果ガスの排出量に加え、サプライチェーンの上流から下流に至るまでの排出量の削減が求められているのです。さらに、ESG(環境・社会・ガバナンス)投資の高まりからも、カーボンニュートラルへの取り組みに関して、責任のある行動とステークホルダーへの情報開示が、企業にとって重要になってきました。

これらのことから、多くの製造業では、いつ何が起こるかわからない予測が困難なビジネス環境において、直接の取引先である1次サプライヤーだけでなく、その先の2次、3次といったサプライヤーとも連携することによる、サプライチェーン全体の強靭化と透明性の確保への取り組みが喫緊の課題となっています。


自社の課題とノウハウから生まれた戦略調達ソリューション


このような中、東芝デジタルソリューションズは、お客さまそれぞれの課題の解決に向けて、「デジタルエボリューション(DE)」、そして「デジタルトランスフォーメーション(DX)」への取り組みを進めています。

DEは、当社独自の言葉で、プロセス改善やコスト削減など、既存のバリューチェーンをデジタル技術により効率化したり最適化したりすることで、業務の課題を解決するというものです。そして、DEで蓄積したデータや多様なビジネスモデルなどを集約してプラットフォーム化し、企業同士やさまざまなサービスをつなぐことにより新しい価値を創出するのが、当社の考えるサプライチェーンにおけるDXです。

当社は、継続的にDEに注力し、また、今後の事業環境の変化にも柔軟に対応しながら、市場に価値を広められるDXへと、その歩みを進めています。

お客さまのサプライチェーンを支える、DEとDXへの取り組みを紹介します。

DEに位置するのは、当社が、2000年から提供している戦略調達ソリューション「Meister SRM」です。これは、東芝自身の調達業務を高度化するために開発したDEツールを元に生まれたソリューションです。精密機器や自動車の部品、プロセス産業などさまざまな製造業のバイヤー企業と、それらの企業と連携しているサプライヤー企業という、国内外の多くの企業で活用され、高い評価をいただいています。
※Meister SRMの前身のソリューションを含みます

Meister SRMは、バイヤー企業において、サプライヤー企業との間でさまざまなやり取りを行うコミュニケーション基盤としての活用とともに、基盤に蓄積した情報を生かした戦略的な調達活動を支援するソリューションです。部材のコスト構造を意識したコストの適正化を支援する電子見積や、災害発生時の迅速な影響の把握により調達リスクを低減するBCP(事業継続計画)管理などから、機能を選択して活用することができます。

このMeister SRMに蓄積された調達に関するビッグデータに調達品の輸送に関わるデータなどを加えて分析し、サプライチェーン全体の強靭化や高度化、透明性の確保、さらにはカーボンニュートラルのような社会課題の解決に役立つ新しい価値の創出を目指すのが、DXへの取り組みです。


「繋がる・見える・広がる」プラットフォームによるDX


サプライチェーンはこれまで、バイヤー企業である大手の企業がそれぞれサプライヤー企業を管理していました。この上流から下流へたどるツリー構造によるサプライチェーンの管理では、情報のやり取りが、取引を直接行っている企業間で閉じられてしまいます。そのため、例えば、サプライチェーン全体でのCO2排出量を算出するためには、バイヤー企業から1次サプライヤー企業に、1次サプライヤー企業から2次サプライヤー企業にと、n次のサプライヤー企業まで順に調査依頼を行う必要がありました。また、サプライヤー企業にとっても、取引のある複数のバイヤー企業から届く同様の問い合わせに対し、それぞれ回答を行うということが発生していました。

そこで当社は、企業同士が互いにつながるネットワーク型のサプライチェーン・プラットフォームを構築しました。サプライチェーンを構成する企業が主体的に参加し、各企業が情報の発信と共有を、サプライチェーンを横断して行える場です。これにより、例えば、災害が発生した場合でも、当事者が情報を発信することで、情報が関係者に速やかに伝わります。また、複数のバイヤー企業から、サプライヤー管理あるいはCO2排出量の調査などを目的に同様の問い合わせが届いていた状況も、共通する情報については、サプライヤー企業が一度共有するだけで済むようになります。もちろん、どの企業にどの情報を共有するのかは、情報を共有する企業がコントロールできることが重要です(図1)。

当社は、この企業がつながる場を、企業活動をサポートする多彩なサービスや蓄積したデータを有効に活用できる、オープンなプラットフォームとして提供し、製造業におけるサプライチェーン全体の強靭化と新たな価値の創出を目指しています。大手の企業による独自のサプライチェーン管理から脱却した、企業が互いに「繋(つな)がる」、さまざまな情報や状況が「見える」、データの活用が「広がる」場です。2022年10月からサービスを開始した、サプライチェーン・プラットフォーム「Meister SRM ポータル」で提供しています(図2)。

Meister SRM ポータルでは、参加した各企業がフラットにつながり、さらにその先の企業へ参加を促すことで、サプライチェーンのネットワークが形成されていきます。また情報の発信と共有を企業が自発的に行えることで、より一層の企業間コミュニケーションを促進するとともに、各企業から集まった情報により、サプライチェーン内の状況が可視化されます。

また、当社はMeister SRM ポータルへの参加企業に対して事業活動を支援するさまざまなサービスの提供を目指し、パートナー企業との連携を進めています。その中から、すでに提供している3つのサービスをご紹介します。

「CO2見える化サービス」
温室効果ガスの排出量を算定して可視化するクラウドサービス「zeroboard」を提供する、株式会社ゼロボードとの提携により実現しました。Meister SRM ポータルに参加する各企業は、このサービスの活用により、CO2の排出量に関して、自社およびサプライチェーン全体での見える化や、他社との比較、他社への開示などが行えるようになります。
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「マッチングサービス」
リンカーズ株式会社との提携によるもので、ものづくり企業の目的に合致したパートナー探しを支援するサービスです。例えば、カーボンニュートラルへの取り組みとしてCO2の排出量が少ない素材を探したり、製品の軽量化やコスト対策のために素材を金属から樹脂へ変更したりしたい場合に、必要な素材や技術、知見を持つ新しいパートナー企業の調査や検討に役立ちます。

「ネット加入型 総合賠償責任保険」
三井住友海上火災保険株式会社との提携により実現しました。Meister SRM ポータル経由で、製造業向けの総合賠償責任保険にインターネット上で加入できるサービスです。製造業の事業活動においては、平時における生産活動の効率性の追求だけでなく、有事の際にも生産能力を維持できる体制作りの重要性が認識されています。いつでもネット上で保険料の見積りから加入手続きまでを完結できることで、従来に比べてシームレスな保険の手配を可能とします。
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現在は、気象情報や災害情報を活用して災害の通知やその影響を自動的に調査するサービスをはじめ、各種パートナー企業と連携したさまざまな事業支援サービスの拡充に取り組んでいるところです。


Meister SRMポータルで広がる循環型の価値創出とエコシステム


Meister SRM ポータル上でさまざまな情報が活発にやり取りされ、情報が蓄積された先には、これらを資産とする有益なサービスの提供も視野に入れています。Meister SRM ポータルに蓄えられたデータを、業務効率化に役立つ分析サービスや、金融や保険といったファイナンスサービスに活用することで、新たな価値を創出していく取り組みです。企業間におけるデータの活用範囲を広げる効果をもたらす、この新しいデータサービスを実現するために、さまざまな企業とのパートナーシップの構築も進めています。

企業間のコミュニケーションによって蓄積されたサプライチェーン全体の生のデータを活用した付加価値のあるサービスの提供と利用が継続されることで、サービスを提供する企業と利用する企業がそれぞれに得られる価値が循環しながら高まっていきます。これにより、Meister SRM ポータルを起点にしたオープンなエコシステムの拡大が期待できます。

さらに将来的には、これらにQX(Quantum Transformation)の取り組みを加えることで、複雑なサプライチェーンネットワーク上の分析やシミュレーションを瞬時に行い、リアルタイムかつより高精度なデータの活用につなげていきたいと考えています。

Meister SRM ポータルというサプライチェーン・プラットフォームの中で、サプライチェーンを構成する企業が互いにつながることで、主体的な情報の発信と共有、サプライチェーン全体の状況の見える化、そして企業活動を支援するサービスの利用、さらにはそこで蓄積されたデータの有効活用ができるようになります。これは、製造業が求めるサプライチェーンの強靭化や高度化、透明性の確保を実現できる場でもあります。

東芝デジタルソリューションズは、今後も製造業の課題やニーズを捉え、パートナー企業と共にサプライチェーンにおけるサービスの開発を続けることで、新しい価値を多くの企業に提供していきます。

  • この記事に掲載の、社名、部署名、役職名などは、2022年11月現在のものです。

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