ITトレンド コミュニケーションAIによって変わる世界

- AIが持つ力をより良い暮らしと社会に活用するには -

AIが当たり前になる近未来

「人工知能(AI)」という言葉は、聞かない日はないほど、子供から高齢者までの広い世代の人々が知っている言葉になりました。世間には人工知能に関するさまざまな情報があふれ、あたかも人間レベルの知能を持った機械(AIロボットなど)と共存する世界が既に現実化しているかのような錯覚すら覚えてしまいます。ビジネスの現場においても、「AIを活用して業務効率を上げよう」「AIを使って新しい商品を開発しよう」といったAIに対する期待の声を、当たり前のように耳にします。
フィジカル空間(実世界)とサイバー空間が相互に連携した社会(CPS)では、実世界にある多様なデータを収集し、サイバー空間で分析することで新たに生み出される価値を、生活や産業の発展に役立てることを目指しています。CPSは同時に膨大なデータがあふれる複雑な世界を生み出します。これら膨大な情報の整理や取捨選択、複雑な状況判断をAIに担わせたいと考えることは、ごく自然な世の中の流れといえます。
複雑なデータ処理はAIに委ね、自分本来の役割をいかせる業務に集中できれば、労働生産性が飛躍的に高まるばかりか、一人ひとりの自己実現や働きがいを高め、人材難の現代において企業が事業を持続していくための大きな力にもなるでしょう。熟練者の高度な状況把握と判断が求められるような場面でAIを活用できれば、彼らのノウハウを消失させることなく、誰もがいつでもAIで熟練者のノウハウを活用できるようになります。業務経験や能力、国籍などが異なる多様な人員構成の職場においても、常に高度な事業活動を維持し遂行できるのではないか。そんな期待も広がります。
また、物心ついた時からインターネット、スマートフォン、SNSに触れる生活をすごしている「デジタルネイティブ世代」は、10年後には社会の中心的な担い手になります。そこでは、現場や経営の意思決定にすら、AIの出力に疑いを持たないで、当たり前にAIを利用する社会になっていることも想像できます。

5~10年以内に「当たり前になる」といわれている「AIの適用領域」

AIの深化が起こす価値転換

AIの深化・発展がさらに進めば、人とAIの関係はどのようになるのでしょうか。
シンギュラリティーを提唱したレイ・カーツワイル氏は「AIが15年以内に人間の知能レベルに到達し、25年以内(2045年)には人間の知能と知力を上回るようになっている」と予言しています※6。宇宙物理学で有名な故スティーブン・ホーキング博士は、「人類が完全なるAIを開発すれば、それは自ら発展し、加速度的に自身を再設計し始める。完全なるAIの開発は人類の終焉をもたらす可能性がある」と言いました※7。マイクロソフトの創業者であるビル・ゲイツ氏は「人間に対する不可侵ルールなど意味をなさなくなる」と言います※8。世界の多くの有識者が、AIが人智を凌駕し、生存を脅かすと警鐘を鳴らします。
その片鱗は現在のAIでも見ることができます。
まず、「人が介在しない」システムの現実化です。AIの圧倒的な演算能力は、チェスや囲碁の世界王者に勝利し、もはや最強AI同士が対戦する時代です。同様に世界中の金融取引では、人による経験則やノウハウによる取引から、高性能なAI同士による高速並列化された取引が現実になっています。ブロックチェーンのような仕組みが一般化していけば、ますます人が介在する機会は激減していくでしょう。
次に、AI アルゴリズムの発展により、大量の正解データを与えなくても全く新しいルールをAIが「クリエイトする」ことができるようになったことです。従来のAIは、数百万枚の猫の写真を学習し、課題の写真が猫なのか否かを判定しました。現在のAIは、まるで人の子供の学習過程と同様に、数枚の猫の写真を使ってAI自らが猫とそれ以外を見分ける学習モデルをクリエイトできます。少ない正解データから、システムをより良くするモデルを自ら生成し、自ら進化していくシステムの可能性も見えてきます。
最後に「モノが機能化する」ことです。例えば自動運転が高機能化し社会的に一般化すれば、車は「所有し、制御するモノ」から、「移動が必要な時に利用する機能」へと価値が変質します。自動車の製造・販売というフィジカルな事業は、移動サービスというサイバーの事業に大転換し、業界の主要なプレイヤーはサービス業者に変質していくでしょう。
AIを社会システムや業界、事業の中心に据えることを前提に、全体デザインの検討・設計、業務プロセスのゼロベースでの見直しなどを考えていく必要があるのではないでしょうか。

AIの深化・進化において、考えておきたいポイント

AIは人を超えられるか?

しかしながら、現時点では、「AIに任せれば何でも解決してくれる」という期待は、残念ながら現実と大きなギャップがあります。
現在のAIが得意なのは、あくまでも「情報の分類」です。本当に必要なデータが大量にあれば、AIはそのデータを元に解の可能性を多角的に洗い出し、人を超える精度で情報を分類して、最適な判断につながる情報を人に提供できる可能性を秘めています。ところが実際の現場は、AIに十分な分類を行えるところまで学ばせるほどのデータが収集できていない環境にあります。
例えば、営業活動や保守点検、接客や介護・看護といった多くの現場では、業務中や作業中に両手がふさがっているケースがほとんどです。彼らには、その場で起きていることや気づきをタイムリーにモバイル端末などに記録したくても、手を使うことが難しく、その場で記録できないといった「情報入力への障壁」があります。また、文書やマニュアルに書き留められた記録にも、熟練者が判断した背景にある知識や細かなノウハウまでもが盛り込まれているとは限りません。
AIの出力結果に共感できず、素直に受け入れることができない、という感覚になるのではないでしょうか。

AIは人を超えられるか?

人とAIのつながりがもたらす世界

こうした状況を打開するのが、人の発話や行動の状況を理解し、その意図に沿いながら、必要なナレッジをわかりやすく伝えて人々の活動を支援する東芝コミュニケーションA I「RECAIUS」です。
RECAIUSはまず、「現場での情報入力の障壁を下げる」ことに重きを置きます。RECAIUSのAIアプリに向かって自然に会話するように話すだけで、「現場で何が起きているのか」「何に気づいたのか」といった情報を入力できる、音声入出力インターフェースを実現。作業する手を止めることのないハンズフリーかつ自然な話し言葉で、誰でも状況を記録できる仕組みを用意しています。役割の異なる複数の人が働く現場で、従業員同士が、いつ、どのような会話を交わしたのか、その時に何が起きていたのか、といった「人と人」との、「人とシステム」との現場のコミュニケーションを、RECAIUSは記録に残すことができます。
RECAIUSは、音声や映像から、人の発話や行動の意図・状況を理解し、これまで蓄積された知識から人を支援するフィードバックを返し、暮らしや仕事のさまざまな場面で、人々の活動を支援します。
これまで集めることが困難だった良質な生の現場の情報を集めることができるという、AIの能力を存分に活用させるための第一歩を、RECAIUSがお手伝いします。

人とAIのつながりがもたらす世界

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