ITトレンド デジタルトランスフォーメーションへの取り組み進化を支えるITアーキテクチャ

デジタル化、ビジネス変革を実現するためのアーキテクチャ

注目される経済産業省のDX(デジタルトランスフォーメーション)レポート

2018年に発表された経済産業省の『DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~』※1が注目を浴びています。
このレポートでは、「複雑化・老朽化・ブラックボックス化した既存システムが残存した場合、2025年までに予想されるIT人材の引退やサポート終了等によるリスクの高まり等に伴う経済損失は、2025年以降、最大12兆円/年(現在の約3倍)にのぼる可能性がある。」(DXレポート2.6.2章より引用)と警告しています。
経済産業省がこのようなレポートを出した背景には、ITで急成長する中国や米国に比較して、日本がITを活用できず、今後世界の中で地位が低下していく危機感があるといわれています。
企業ITの複雑化・老朽化の問題(以下レガシーITの問題)は、企業自身の問題ですが、経済産業省も企業のDXへの取り組みを推進するためにさまざまな施策を行うと、セミナーなどで大きくアピールしています。

DXを実現するために必要なITとは

それでは、レガシーITの問題を解決し、DXを実現するために必要なITとは、どんなアーキテクチャでしょうか?
わたしたちはITを「継続的な進化」の視点で考えました。
最先端のデジタル技術を活用し、企業の競争力を高めていくDXは、新しいビジネスモデルで市場破壊(デジタルディスラプション)を起こすために、ライバル企業を寄せつけない圧倒的な競争力を実現する必要があります。これは、企業を成長させる「攻めのIT」と考えることができます。このような革新的なITを、一朝一夕に実現することはどんな企業にもできません。
絶えずライバル企業との競争に打ち勝ち、市場の変化を見極め、他社を寄せつけないスピードで進化できた企業だけが新たな市場の勝者に成りえるのだと考えます。
一方、今までの企業ITは、企業を支える「守りのIT」ととらえることができます。守りのITは企業の業務効率化・コスト削減を実現することが主な目的です。
さらには、企業を取り巻くビジネス環境の変化、組織の変化、法制度や税制の変化に、絶えず追従することが必要となってきます。

攻めのIT・守りのIT ⇒ 経済的な進化

継続的に進化するITアーキテクチャとは

近年の新しいITトレンドとして、クラウドテクノロジーに代表される新しいインフラ技術や、アジャイル開発※2、マイクロサービス※3、DevOps※4、CI/CD(Continuous Integration/Continuous Delivery)※5といった新しい技術や手法が台頭していることがあげられます。
これらのテクノロジーは、オープンソース団体やクラウドベンダーを介して互いに影響し、モダンなITアーキテクチャともいえる流れになってきました。
このようなトレンドは、システム開発における大きなパラダイムシフトを起こしていると考えられます。

モダンなITアーキテクチャ図

従来のシステムは、ハードウェアやOS、ミドルウェア、アプリケーションが複雑に密連携しているので、全てを同時に正しく設計・構築することが求められました。このようなシステムを「一枚岩」のように設計されたシステムということで、「モノリシック」と呼びます。
これに対し、モダンなITアーキテクチャでは、アプリケーションがマイクロサービスという単位に分割・区画整備され、部分改良や拡張が考慮されています。
そのため、システム全体をスケーラブルかつ柔軟に保ち、システムを稼働させながら、継続的に改良し続けることができるようになっています。

レガシーITからモダンITへ

従来のモノリシックなシステムの場合、プログラムや共通ライブラリなどのアプリケーションがハードウェアやミドルウェアと密接に連携して稼働します。このため、部分的なプログラムの改良だけでも、ミドルウェアやハードウェアへの影響調査や、場合によっては再構築作業を必要とする場合がありました。また、高度なスキルが要求されるため、開発要員の確保や、構築の自動化が難しいといった問題がありました。

モノリシックなアプリケーション

次にマイクロサービスを活用したモダンなシステムのアーキテクチャを見ていきます。
マイクロサービスによるアプリケーションは、自律的に稼働できる機能に分割され、コンテナ※6により動作環境が他のアプリケーションと完全に分離され、API(Application Programming Interface)※7によりアプリケーション同士が疎結合にネットワーク経由で呼び出して動作するよう設計されます。この呼び出し処理を制御することで、システム稼働中のアプリケーション入れ替えや、複数アプリケーション起動による負荷分散が容易に実現できるように工夫がされています。
また、コンテナによるプラットフォームは、アプリケーションに依存しない、独立性の高い実行環境が並ぶ構成となっており、これも、柔軟なシステムの実現に役立っています。

マイクロサービスアプリケーション

東芝のITモダナイゼーション技術

それでは、このような技術をどのように取り入れていったら良いでしょうか?
いままで説明した新しい技術は、対象となるシステムが頻繁に改良されてこそ効果を発揮するので、まず保有するIT資産を、システムの改良・改変の度合いから、仕分けすると良いといわれています。そして、頻繁に改良が発生するシステムから段階的にモダンなアーキテクチャに移行する、「段階的モダナイゼーション」の手法を当社は推奨しています。
当社では、これらモダンなシステムに必要な技術をCommonStyle®として体系化し、社内のシステム開発・構築で活用しています。

当社は今後もマイクロサービス、コンテナなどの最新システムアーキテクチャに関する調査・研究や実システムへの適用を通じ、お客さまのDX推進を支援してまいります。

段階的ITモダナイゼーションシナリオ
  • ※1経済産業省『DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~』https://www.meti.go.jp/press/2018/09/20180907010/20180907010.html
  • ※2アジャイル開発:短い反復を繰り返すことで、競争力の高いソフトウェアを短期間に開発するための開発方法論
  • ※3マイクロサービス:サービス志向で設計され、軽量な通信インターフェースを実装し、自律的かつ協調して動作するシンプルなアプリケーション
  • ※4DevOps:開発担当者と運用担当者が、連携・協力してプロセスを進めることで、迅速にソフトウェアのビルド・テスト・デリバリを実現する手法
  • ※5CI/CD(Continuous Integration/Continuous Delivery):継続的インテグレーションと継続的デリバリを実現するためのプロセス自動化技術
  • ※6コンテナ:アプリケーション稼働に必要となるOSコールやライブラリを仮想的なイメージにまとめ、アプリケーションの環境独立性とポータビリティを高めるための技術
  • ※7API(Application Programming Interface):HTTPプロトコルを用いてネットワーク経由で呼び出すアプリケーション間のインターフェース
Solutions Book 2019-2020

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