生成AIが製造業にもたらす革新と活用促進の課題(1/4)

イノベーション、経営

2024年11月28日

日進月歩で進化を遂げるAI。最近では特に生成AIの導入が加速しており、様々な領域で変革をもたらす生成AIのパワーは計り知れないものがあると見られている。今回は、Microsoft CopilotやAzure OpenAI Serviceなどを提供する日本マイクロソフトの岡嵜禎氏を招き、本ウェブメディア アドバイザーの福本勲が、生成AIが製造業にもたらす革新と活用を促進するための課題について話を聞いた。

日本マイクロソフト株式会社 執行役員 常務 クラウド&AIソリューション事業本部長 岡嵜 禎氏

生成AIにより訪れる2つの大きな変革

福本:
最初に岡嵜さんの自己紹介と、御社の紹介をお願いします。

岡嵜:
日本マイクロソフトでクラウド&AIソリューション事業を担当している岡嵜です。我々はクラウドベースのソリューションを幅広く展開しています。例えば、WordやExcelなどのOfficeアプリケーションを提供する「Microsoft 365」や、クラウドコンピューティングプラットフォーム「Microsoft Azure」、CRMやERPなどのアプリケーションをカバーする「Dynamics 365」、ローコード/ノーコードツールの「Power Platform」、さらにはセキュリティソリューションなどの幅広いサービスを提供しており、ほかにも「Surface」のようなモバイル端末などを扱っています。

このように多様なソリューションをベースに、お客様の可能性を広げるビジネスを展開しています。最近では、マイクロソフトCEOのサティア・ナディラが掲げているとおり、生成AIをソリューション全体に導入することで、すべての組織や個人が多くのタスクを達成できるようにする、というミッションをさらに加速しようとしています。

福本:
御社は生成AIの分野で、「Microsoft Copilot(以下、Copilot)」から「Azure OpenAI Service」まで、いろいろなサービスに踏み込んでご提供されています。御社の生成AIサービスの特徴をご説明いただけますか。

岡嵜:
マイクロソフトの生成AIには3つの大きな特徴があります。1つ目は、お客様が何かしたい時にすぐに使っていただけるAIソリューションとして提供していることです。皆さんが普段使われているMicrosoft 365のWordやExcel、開発ツールのGitHubなどに生成AIの機能を組み込んで使うことができます。日々蓄積してきたデータをそのまま生成AIで活用できる点が強みです。2つ目の特徴は、多くの企業では自社のビジネスプロセスやアプリケーションのほか、独立系のソフトウェアベンダーのソリューションを使用されていると思うので、そこに生成AIを組み込むための技術スタックとして「Microsoft Copilot Stack」を提供し、お客様自身でCopilotを自社のアプリケーションに組み込めるようにしている点です。3つ目の特徴は、生成AIのセキュリティリスクを気にされるお客様も多いため、安心・安全に活用いただける仕組みを提供していることです。

福本:
製造業における生成AIの活用領域は広く、既にさまざまなPoCやショーケースのほか、実運用での活用が始まった事例も見られます。例えばハノーバーメッセでは、ロボットや機械の制御プログラミング変更を自然言語の指示により行ったり、コンテキストの異なる多様なデータを2次利用しやすくしたりするなど、生成AIのインタラクティブなコミュニケーション能力を生かしたさまざまな適用例が展示されていました。生成AIの現状と将来の主な適用分野、想定される変革内容などについてお聞かせ下さい。

岡嵜:
生成AIの適用によって2つの大きな変革が訪れると思っています。コンピュータのインターフェースは、Windows 95時代にテキスト入力によるCUI(Character User Interface)からアイコンやボタンを操作するGUI (Graphical User Interface)になり、それが今日まで続いていますが、生成AIの出現によって大きく変わろうとしています。自然言語による入力はもちろん、マルチモーダルという形で音声や画像、映像まで入力に使われるようになります。従来はコンピュータを使うためには人が覚える必要があることが多かったのですが、コンピュータ側が人との自然なインタラクションを行えるようになっていく点が大きな変革の一つだと考えています。

二つ目の変革は、やはり推論面ですね。AIが進化し、一部の領域では人を超えることも可能になってきました。最近ではAIが博士レベルの知識で回答を返せるといった話も出てきているので、今後、人と変わらない答えを返したり、さまざまなプログラムや機械と連動できるようになったりなど、大きな変革をもたらすでしょう。製造業での主な適用の方向性としては、まずベーシックなところで、ChatGPTと普通に会話して自社の持つナレッジと組み合わせて支援を受けるといった使い方になります。主な活用領域としては、設計、製造現場、アフターサービスなどがあると思いますが、これまで蓄積されてきたナレッジと生成AIを組み合わせることで、現場のカイゼン活動や先人の知見の活用が可能となります。

福本:
蓄積データの活用については、マルチコンテキストのデータをまとめて再利用しやすくすること、またマルチチャネルの情報をまとめて再利用しやすくするという両方があるという理解でよろしいでしょうか。

岡嵜:
端的にいうと、そこにも適用段階があると考えています。ある部署でしか使っていないベーシックなデータを他のチャネルから横断的に集めたり、異なる領域のデータを組み合わせて広範囲な情報を活用したりするケースもあるでしょう。企業内でどこまで情報を横断的に活用できるか、そのデータは横断的に活用できる形で蓄積されているのかという課題はあるものの、情報を組み合わせて活用することが最初のステップになると思います。


  • この記事に掲載の、社名、部署名、役職名などは、2024年11月現在のものです。

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