概要
当社は、電子レシートサービス「スマートレシート®」(*1)に蓄積された購買ビッグデータを活用し、新商品投入時などにおける販売数量を高精度に予測する販売予測AIを開発しました。本技術は、食品・日用品など幅広い消費財分野における商品販売予測への活用が期待できます。
近年、消費者の嗜好の多様化が進み、市場環境の変動も大きくなっています。一方、消費者一人ひとりについて購買行動を予測しようとすると、対象となる人数分だけ予測処理が必要となり計算量が増大してしまうという課題がありました。
本技術は、二つのAIによりビッグデータの処理と予測精度の向上を行います。一つは当社が独自に購買ビッグデータ向けに開発したクラスタリングAI(*2)を用いて購買行動が類似する消費者をグループ化する技術です。ビッグデータをグループ化することで計算量を抑えながらも、多様化する消費者の嗜好を予測に織り込むことが可能となりました。もう一つは生成AIを活用し、嗜好といったあいまいな変数に対して高精度な予測をする技術です。新たに設計した「反応スコア」を用い、生成AIがグループごとに購買予測をすることで、予測精度の向上を実現しました。
さらに、本技術は300万人(*3)を超える会員を持つ「スマートレシート®」の購買ビッグデータ(*4)を活用している点が大きな特長です。消費のトレンドは、気候やイベント、競合商品の動向、消費者マインドなどさまざまな要因によって日々変化します。二つのAIを組み合わせ、長期にわたり「スマートレシート®」に蓄積された購買ビッグデータを活用して予測を継続的に更新することで、計算量を抑えながら従来の予測手法と比べてより新鮮で精度の高い予測を実現します(図)。
「スマートレシート®」の購買ビッグデータを用いた当社の評価実験では、特定ジャンルの商品の販売予測において、従来の予測手法(*5)と比較して、販売数量予測と実販売数量の誤差を約23%低減できることを確認しました(*6)。
本技術の詳細は、2026年6月8日から12日にかけて開催される「人工知能学会全国大会(JSAI2026)」にて発表します。
開発の背景
新商品を市場に投入する際には、市場の反応を事前に予測することが重要です。近年、嗜好の多様化が進み、市場環境の変動が大きくなるにつれ、従来の予測手法では嗜好に基づく購買を反映することができず、予測精度が得られない問題が出てきています。
こうした中、生成AIの販売予測への応用に期待が高まっています。生成AIを用いた販売予測では、過去の購買データを手掛かりに販売数量を予測しますが、全てのデータを一度に処理する手法ではデータ量が膨大となるため、一部のデータのみを抽出して予測せざるをえません。その結果、基にするデータが出現頻度の高いものに偏りやすく、購買行動の細かなパターンまで十分に反映することが難しいという課題がありました。一方、消費者一人ひとりの購買行動を個別に予測する手法では、個々の購買行動を詳細に反映できるものの、対象人数に比例して計算量が膨大になるという課題がありました。
本技術の特長
そこで当社は、購買行動が類似する消費者をグループ化して予測することに着目し、クラスタリングAIと生成AIを組み合わせることで、膨大な計算を伴わずに市場全体の販売数量を予測する技術を開発しました。
本技術では、クラスタリングAIが、「スマートレシート®」の購買ビッグデータを基に購買行動が類似する消費者をクラスタ単位で自動的にグループ化します。そして、生成AIが新商品への購買の度合いを0から100のスコアとして表す反応スコアを各クラスタ単位で算出します。クラスタごとの反応スコアと人数を考慮して集計することで、市場全体の販売数量を算出します。このアプローチにより、購買行動を個別に予測することなく、多様化された消費者の嗜好に基づく購買を反映した予測が可能となります。また、処理をクラスタ単位で行うため、ビッグデータであっても、実用的な計算量に抑えた予測を実現しました。対象期間に応じて予測値を算出することで、期間の長さに応じた販売数量の予測や、長期間にわたる継続的な予測など、柔軟な活用が可能になります。
「スマートレシート®」の購買ビッグデータを用いた評価実験では、従来の予測手法と比較し、特定ジャンルの販売数量予測と実販売数量の誤差を約23%低減できることを確認しました。従来の予測手法は、頻出する購買データから予測を行うため、嗜好に基づく購買を十分に学習できず、予測される販売数量もそのジャンルの平均的な値に近づく傾向がありましたが、本技術は、長期にわたり「スマートレシート®」に蓄積された購買ビッグデータを活用することで、多様化された消費者の嗜好に基づく購買や市場の変化を捉えることができ、より実販売数量に近い予測結果が得られました。
今後の展望
当社は今後、対象とするジャンルや期間を拡大しながら検証を進め、本技術の適用範囲を広げていきます。また、本技術を活用し、当社が提供する購買データ分析サービスにおいても、新たなインサイトの提供を図ります。
- 東芝テック株式会社が開発、運営し、株式会社東芝が運営を支援している電子レシートサービス「スマートレシート®」は、会計時に通常は紙で提供される購入商品の明細レシートを電子化し、電子レシートセンターでデータとして管理、提供するサービスです。お客様の手元に紙のレシートを残さなくてもスマートフォンで購入履歴をいつでも確認することができ、お客様の買い物における利便性の向上につながるとともに、加盟店における紙レシートの発行コスト削減や紙資源の使用量の低減に貢献します。
公式サイト:https://www.smartreceipt.jp/ - 購買ビッグデータから、消費者の購買パターン(購買特性)が共通する商品を同じ商品グループ(クラスタ)に自動で分類する技術。
分析事例:https://www.global.toshiba/jp/news/data-corp/2024/09/20240911.html - 2026年6月時点
- 購買データは「スマートレシート®」の利用者の同意に基づき活用しています。
詳細:https://sr-mobile-apps2.smartreceipt.jp/srsw/signup/terms_to_blank - 全ての購買データを一度に処理して販売数量を予測する手法。生成AIに入力できるデータ量の制限から一部の購買データを抽出して予測。
- 特定ジャンルの580商品について約10万人の1年分の購買ビッグデータを用いて実験を実施。売上予測誤差の累積値を全売上額で割った比率を用い、従来の予測手法と提案手法を比較して算出。
- 「スマートレシート®」は東芝テック株式会社の登録商標です。

