IIFES2019で見た!SCiB™ SIPシリーズ


2019年11月27日(水)から3日間、東京ビッグサイト(東京都江東区)で、オートメーションと計測の先端技術総合展「IIFES2019」が開催された。同展示会には東芝インフラシステムズをはじめとする東芝グループでブースを設けて出展した。東芝インフラシステムズのコーナーでは産業用リチウムイオン電池「SCiB™」を展示。今回はプロジェクションマッピングを行って分かりやすくSCiB™ SIPシリーズを説明するとともに、新型となる薄型モジュールの開発を発表した。来場者にアンケートをとり、ニーズを確かめ、どのタイプを優先的に進めていくか、今後の開発方針の参考にする予定だという。

今回、東芝ブースは、「変わる 応える ものづくり~止まらない工場を目指して~」をテーマとし、東芝インフラシステムズをはじめ、東芝デジタルソリューションズ、東芝産業機器システム、東芝ITコントロールシステム、東芝ディーエムエス、東芝プラントシステム、東芝情報システム、川俣精機、東芝シュネデール・インバータの9社が参加した。

「ソリューション・サービス」「制御・セキュリティ」「コンポーネント」の3ゾーンにわかれ、モノづくりに貢献する様々な製品・サービスが展示された。

「コンポーネント」ゾーンで展示されたプロダクトの1つが、東芝インフラシステムズの産業用リチウムイオン電池「SCiB™」である。SCiB™は「安全性」「長寿命」「低温性能」「急速充電」「高入出力」「大実効容量」に優れているため、自動車・バス・鉄道などの乗り物、エレベーターなどの産業機器、発電所などのインフラ設備などに活用されている。


SCiB™ SIPシリーズの特長をプロジェクションマッピングで紹介

今回、展示されたSCiB™ SIPシリーズは、鉛蓄電池のように取扱を容易とするためにBMU(バッテリ・マネジメント・ユニット)を内蔵したリチウムイオン電池だ。AGV(無人搬送車)のほか、案内ロボット、小型風力発電や太陽光発電などの分野で適用が進んでいる。だが、この展示会においては、二次電池であるSCiB™ SIPシリーズは異質のプロダクト。来場者の目的は同展示会の見所でも明らかにしているとおり、「未来のMONODZUKURI」を体感すること。AGVは未来のモノづくり技術だが、それに搭載されるリチウムイオン電池は、その周辺技術としては非常に重要ではあるものの、主役ではないからだ。

とはいえ、AGVを活用している現場では、従来の鉛蓄電池に課題を感じている人も多い。そこでそんな人たちの目を引く仕掛けを用意していた。SCiB™ SIPシリーズの説明では、ホームページにも登場している鉛蓄電池搭載AGVレトロ君とSCiB™ SIPシリーズが搭載されたAGVスマイル君を使ったアニメーションをプロジェクションマッピングで投影。しかも単にプロジェクションマッピングを投影するのではなく、来場者がSCiB™ SIPシリーズが持つ3つの強み「急速充電」「長寿命」「小型軽量」と書かれた部分をタッチすると、それを解説するアニメーションがプロジェクションマッピングとして映し出される仕組みとなっているのである。

SCiB™ SIPシリーズの3つの強みの詳細は以下の通りである。

  1. 急速充電:鉛蓄電池は充電に8~10時間もかかるのに対し、SCiB™ SIPシリーズは20分(充電器の選定による)で充電が完了する。
  2. 長寿命:鉛蓄電池では1~3年で買替えが必要なのに対し、SCiB™ SIPシリーズは10年買替えが不要。トータルコストを削減することに加え、メンテナンスフリーを実現している。
  3. 小型軽量:鉛蓄電池の電池重量は38kg。一方のSCiB™ SIPシリーズは8kgと約4分の1の軽さとなっているため、交換作業の負担を大きく削減できる。

Type3電池モジュールの電池制御システムの開発を簡略化する「SSGB」

SCiB™ SIPシリーズは小型ながら大容量とはいえ、さらに大容量が求められるケースも多い。東芝インフラシステムズでは、より大容量を求められる現場向けに、SCiB™ SIPシリーズよりも多くのセルを組み合わせた電池モジュール「SCiB™ Type3電池モジュール」を提供している。

Type3電池モジュールの最大の特長は、モジュールを複数組み合わせることで、小さなシステムから、大きなシステムまでスケーラブルに対応できること。そのため、公共、産業、電力系統、交通システムに至るまで幅広い用途で活用されている。

その一方で、短所もある。スケールに合わせて電池システムを制御する上位装置の別途開発、CAN通信の環境、BMU動作用の電源の用意など、システム構築が必要になることだ。

そんな悩みを解決するため、東芝インフラシステムズが2019年10月から販売を開始したのがBMU自立起動機能付きゲートウェイ「SSGB」である。今回の展示のもう一つの目玉プロダクトである。

SSGBが提供する特長は大きく3つ。第一にType3電池モジュールの電池制御システムを、SCiB™ SIPシリーズ並みに簡略化することだ。第二にSCiB™ SIPシリーズ同様、起動スイッチ1つで、毎日の運転/停止が可能になること。「鉛蓄電池のように簡単に使えるようになる。日々の運用も容易になる」と言う。第三は外部電源が不要になること。搬送車の場合はBMUを動作させるために別途DC12Vの補助電源を搭載する必要があったが、SSGBはType3電池モジュールの電源を利用するため、それが不要になるという。搬送車の重量が軽量化されることで、より効率的な搬送が実現する。

このSSGBのメリットも分かりやすく解説するため、展示ブースでは先のSCiB™ SIPシリーズ同様、Type3電池モジュール搭載のけん引車マッスル君というキャラクターを用いたアニメーションをプロジェクションマッピングで投影するという方法を採用。しかもユニークなのは、SSGBを実際手にし、映し出されたマッスル君に擬似的に搭載してみると、先の3つの特長が紹介されるという仕掛けになっていたのである。

SCiB™ SIPシリーズ、SSGB双方のプロジェクションマッピングの仕掛けは、来場者自身で楽しむこともできるが、1時間に2回、コンパニオンがこの仕掛けを活用して解説することにも使われていた。


小型・軽量化したモデルを参考出展

現行モデルでも十分、小型軽量化が図られており、2017年4月から販売されている「SIP24-23」は非常に好評を博している。だがAGVの分野ではさらなる「スリム化・低背化が求められる傾向がある」と同製品の営業担当者は語る。そのようなニーズに対応するため、東芝インフラシステムズでは、SCiB™ SIPシリーズの小型モデルを3種類参考出展した。

1つ目は現行モデルの22Ahという容量はそのままに、高さを165mmから100mmに大幅に削減した薄型モデルだ。「低床型AGVなどに最適なモジュール」と説明する。2つ目、3つ目は、容量は現行モデルよりも少なくてもよいが、より小型軽量にというニーズを実現したモデル。この2つのモデルにはスズキ株式会社の自動車のアイドリングストップの電池に採用され、「すでに約10年の実績がある」(担当者)という2.9Ahセルを採用している。つまり現行モデル同様、電池としての信頼性はすでに担保されているモデルとなる。双方とも重量は4kgと現行SCiB™ SIPシリーズの半分。最大電流は28A(200秒)。違いは予定している外形寸法。1つは297(W)×132.5(D)×54.2(H)mm、もう一つは233(W)×132.5(D)×69.7(H)mmとなっており、前者がより低背化のニーズに応えたモデルとなっている。この3つのモデルの開発はまだこれからだという。「今回の出展で、お客さまのニーズを伺い、ニーズの高いモノから順に開発に着手していく予定だ」と担当者は力強く語る。

そのため参考出展の横には、気になったモデルにシールを貼ってもらうためのアンケートボードが設置され、熱心に説明を聞いたお客さまがシールを貼る姿も多く見られた。


ニッチなテクノロジーながら来場者の関心を誘った「SCiB™ SIPシリーズ」

リチウムイオン電池は携帯電話やスマートフォン、ノートパソコン用として登場し、今では次世代自動車のキーデバイスとして注目されているとはいえ、非常にニッチなテクノロジーだ。そのテクノロジーのすごさを分かりやすく説明していたため、コンパニオンによる説明時間には、多くの人が集まり、説明に聞き入っていた。もちろん、コンパニオンが説明していない時も、プロジェクションマッピングで遊んでみるというシーンが多く見られたのも印象に残った。

今回、展示会場を訪れたのは初日だったため、参考出展したどのタイプのニーズが高いか傾向はつかめなかったが、今回のアンケートを元に、SCiB™ SIPシリーズの小型モデルの開発が行われる。どのモデルがいつ頃登場するのか、今後も東芝インフラシステムズの動向を見守りたい。

記:中村 仁美(フリーライター)

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